これまで数多くの話題作を世に送り出してきたNetflixのオリジナル作品。そんななか、昨年最も大きな話題を呼んだ作品のひとつが『Lupin/ルパン』だ。

フランス人小説家のモーリス・ルブランによる伝説的な文学作品を元にしたドラマであることは言うまでもないが、ここ日本でも『ルパン三世』を始め、同作を題材にした映画やドラマ、また模倣作も多く、その名を知る人も多かったことから、公開前より大きな関心が寄せられた。公開後もその勢いはとどまることを知らず、フランスの作品としては初のランキングトップ10にも名を連ねるなど異常な人気を博した。

その魅力は、主人公であるペテン師のアサン・ディオプを演じるオマール・シーがもつ圧倒的なカリスマ性はもちろんのこと、Netflixでの成功の鍵とも言われる犯罪や復讐劇を想起させる卓越したストーリー、またタイムレスなテーマでもある家族愛や完璧なまでの伏線の回収など、無数に存在する。

しかし、シリーズ2の公開を終えた時点で、スニーカーフリークたちの間で密かにこれまでとは異なる視点で評判を呼んでいることをご存知だろうか？ 劇中では主人公アサンのアルセーヌ・ルパンさながらの変装も大きな見どころの一つであるのだが、その足元にはスニーカーフリークであるなら決して無視することのできない「エア・ジョーダンシ」リーズのスニーカーが映っているのだ。

本稿では、主人公アサン・ディオプが劇中の各シーン着用しているエア・ジョーダンのモデルを独自に調べ、その偏愛ぶりを解き明かしていこうと思う。

まずは、パート1のシリーズ最終話（第5話）で、敵対する大富豪ペレグリーニが雇った謎の殺し屋に尾行されるシーンでの一コマ。パリの雑多な街中を逃げ回るアサンの足もとには、イエローとブラックの配色が印象的な、エア・ジョーダン1の「Mid Yellow Toe」が確認できる。お馴染みのハンチングに、バブアーのオイルドジャケットを羽織ったトラッドなスタイルに合わせるあたりも渋い。

海外限定での発売だったため、ここ日本では手に入りづらいレアモデルとして知られる。また、通称“ウータンカラー”とも呼ばれる人気配色であることからも、ファン垂涎な一足である。

続いてパート2のシリーズ第8話で、学生時代からの親友であり、ビジネスパートナーとしてもアサンのサポートを行う宝石商のベンジャミン・フェレルと、ペレグリーニを追い詰める策を相談しながら連れ立って歩くシーン。

ここでは「Jordan 1 Retro High Shattered Backboard 3.0」を着用。シャッタード・バックボードという名は、1985年にイタリアで行われたNBAのエキシビションマッチで、普段と異なる鮮やかなオレンジ色のユニフォームに身を包んだブルズ時代のマイケル・ジョーダンが、強烈なダンクシュートでバックボードを粉砕したエピソードから名付けられた。

そんな逸話を知ってか知らずか現在も根強い人気を誇り、中古市場でも価格高騰を続ける名作モデルだけに、気負わず颯爽と履きこなすアサン・ディオプの足もとには、スニーカーフリークも羨望の眼差しを送らざるを得ない。

そしてパート２のシリーズ第9話。ペレグリーニの娘であるジュリエットと別れ、危機の迫る親友ベンジャミン・フェレルのもとへと向かうシーン。ここではエア・ジョーダン1のミッドカットシリーズ「MID SE "BLACK/RED/WHITE"」を着用。こちらは2018年に発売され即完売となった、人気セレクトショップ「UNION」とのコラボレーションモデルをオマージュした類似モデルとして知られる。

エア・ジョーダンシリーズに限らず、エア・フォース１の後継モデルである「エア・フォース１タイプ」も愛用しているアサン。同モデルは、ヒールのベルクロストラップと連動したシュータンのストリングが、足全体をホールドする進化系エアフォース1としても知られ、主張が控えめなスウッシュの大きな特徴だ。スニーカーフリークであるなら当然目に留まる逸品を華麗に履きこなすあたり、アサン・ディオプ自身も相当のスニーカーフリークと言えるはず。

さらに今回掲載した写真以外にも、いくつかのエア・ジョーダンモデルの着用が確認できる。例えばマイケル・ジョーダンの伝説的なスピーチを記念して制作された、ユニバーシティブルーとジムレッドの配色が印象的な「Retro High Fearless UNC Chicago」や、ヴァージル・アブローガデザイナーを務める〈OFF-WHITE〉との共作モデルとして一大ブームを巻き起こした「CHICAGO」モデルも登場している。

作品を純粋に楽しむのはもちろんのこと、こうしたスニーカーにフォーカスを当てて楽しめるのも本作『Lupin/ルパン』の大きな魅力であるはずだ。すでに来年度にパート３の公開も決まっているので、ぜひ主人公アサン・ディオプの足もとにも注目してみて欲しい。