そうめんの定番「揖保乃糸」の最高ランクとは?

  • 写真:長谷川 潤
  • 編集&文:小松めぐみ

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細い麺を氷水に浮かべれば、涼感たっぷり。好みのつゆと薬味を用意し、三神特有の上質な小麦の風味をお楽しみあれ。600g¥3,240(税込)

兵庫県龍野の揖保川(いぼがわ)流域で室町時代につくられるようになった手延べそうめんは、江戸時代に産地化が進み、明治時代に「揖保乃糸」として商標登録された。その特徴は、11の工程を経てつくり上げる伝統製法。麺生地を縄状により合わせ、延ばす際にもよりをかけることでなめらかな舌触りとコシ、歯切れのよい食感が生まれ、ゆで延びしにくくなるという。

そんな揖保乃糸は、国内シェアの約4割を占めるほどポピュラーだ。だが、赤帯(上級品)・黒帯(特級品)・紫帯(よりつむぎ)といった商品ランクがあることはあまり知られていない。なぜならスーパーなどで見かける揖保乃糸は、ほとんどが「上級品」。上級品は全生産量の約80%を占める主力商品だ。

上質な小麦の風味と細さを誇る、揖保乃糸の傑作

上質な原料小麦粉を使った三神は手延べそうめん揖保乃糸の最高級品。特別な日に味わいたい逸品だ。

上級品とそれ以外のそうめんの製造量に大きな差があるのは、組合によって決められた製造期間が種類ごとに異なるため。そうめんをより細く延ばすためには、温度と湿度が低く安定した気候条件と、高い技術が必要なため、「特級品」や「三神(さんしん)」の生産者は約420軒の中から組合が選抜指定している。特に三神は、数軒の生産者しかつくることができず、製造量はごくわずかだ。三神の細さは、上級品の細さが径0.7〜0.9㎜程度であるのに対し、径0.55~0.6㎜なのである。

組合によると、ランクは製造期間や細さ、原料の小麦によって決められている。熟練の職人がつくる三神には上質な小麦が使われるだけに、味わいは格別。なかでも熟成を経て風味を増した「古(ひね)もの」は、ひと口味わうと小麦の旨味がしっかりと感じられる。そうめんにはこんなに味があったのかと、きっと感動するはずだ。

1束50g当たりは約550本。組合が選抜指定した数軒の製造者しかつくることができない。

揖保乃糸にはさまざまな種類があり、帯の色を変えて違いが示されている。左上から時計回りに、「特級」「上級」「播州小麦」「縒つむぎ」。写真提供: 兵庫県手延素麵協同組合

喜多村

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※Pen2020年8/15号「夏の麺喰い。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。