約550点もの作品を一挙公開!『MUCHA(ミュシャ) グラフィック・バラエティ』のお気に入りをSNSに投稿しよう

  • 文:はろるど

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フランスの女優サラ・ベルナールをモデルとした『ジスモンダ』(1894年、左)。アメリカツアーのために作られたポスターとともに並んでいる。このポスターでミュシャは一躍有名となると、後の演劇シリーズの6作の全てを制作した。ポスター画家としての鮮烈なデビュー作だ。 photo: Harold

19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォーを代表する画家のアルフォンス・ミュシャ。女性を優美に描いた『ジスモンダ』といったポスターで人気を博しただけでなく、商品パッケージなどの暮らしに身近なデザインの分野でも活躍している。また日本でも多くの作品が愛され、2017年には母国チェコのスラブ民族の苦難な歴史を描いた超大作『スラブ叙事詩』の全20点が国立新美術館で公開されると、会期終盤にかけて長蛇の列ができるなどして大変な話題を集めた。

現在、うらわ美術館で開催中の『MUCHA(ミュシャ) グラフィック・バラエティ』で紹介されているのは、ポスターなどに加え本、雑誌、挿絵といったグラフィック・デザインの仕事だ。「私は芸術のための芸術を創るよりも、大衆のための絵の制作者でありたい。」と語ったミュシャは、この他にもカレンダーや香水瓶のラベル、それに切手などの幅広いジャンルで作品を残している。そして展示の出品数は約550点と膨大。ミュシャの色彩豊かな世界が万華鏡のように会場を彩っている。これほど密度が濃く、バラエティに富んだミュシャ展は、過去になかったかもしれないと驚いてしまうほどだ。

『装飾資料集』全72点と『装飾人物集』の全40点が揃った展示に注目したい。1902年、既にアール・ヌーヴォーの巨匠としての地位を確立していた42歳のミュシャは、デザインに携わる人々のための見本帳として『装飾資料集』を刊行。自然の草花や女性、動物などを様式化したデザインをはじめ、グラスやアクセサリー、家具といった実用品のサンプルをリトグラフに表現している。そして3年後には、女性だけのモチーフを幾何学的なフレームの中に描いた『装飾人物集』を続編として出版した。いずれもミュシャの魅力がぐっと凝縮された、デザインのバイブルとも言って良い傑作だ。

さて今回のミュシャ展は全国で開催された巡回展だが、「本をめぐるアート」を収集方針に掲げるうらわ美術館では、元来の作品に加えて挿絵の習作を展示するなどオリジナルな構成になっている。また会場では「気に入った作品1点」を選んで撮影もOK。#myfav_muchaを付けてSNSにてアップするのも楽しい。展覧会の思い出を持ち帰るべく、ハガキやクリアファイル、それに紅茶缶などのミュシャ・デザインで溢れた展覧会限定のミュージアムショップに立ち寄りながら、『MUCHA(ミュシャ) グラフィック・バラエティ』にてあなたの好きなミュシャを見つけてほしい。


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『装飾資料集』より、1902年、OGATAコレクション。72ページの図版からなる資料集のうちの1枚。続く『装飾人物集』と合わせて全ページを一度に鑑賞できるのが嬉しい。

『リリュストラシオン 1896-1897 クリスマス号』(表紙)1896年 、OGATAコレクション。週刊新聞『リリュストラシオン』の表紙を飾った作品。1843年に創刊された同紙は、版画をはじめとした図版が多く掲載され、当時のブルジョワ層の読者の人気を集めていた。ミュシャはクリスマス号において表紙以外にも挿絵を描いている。

『ランスの香水 ロド』1897年、 OGATAコレクション。「生活をデザインする芸術」であるアール・ヌーヴォーの精神を体現するかのように、ミュシャのデザインは人々に愛され、暮らしの中に溶け込んでいった。

『MUCHA(ミュシャ) グラフィック・バラエティ』

開催期間:2021年4月17日(土)~6月20日(日)
開催場所:うらわ美術館
さいたま市浦和区仲町2-5-1 浦和センチュリーシティ―3階
TEL:048-827-3215
開館時間:10時~17時 ※金、土は20時まで
休館日:月
入場料:一般620円(税込)
https://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum