コロナの時代に、デザインができること。マスクディスペンサーのデザインを無償配布。

  • 写真:藤井浩司(TOREAL)
  • イラスト:岡田成生
  • CG:PRODUCT DESIGN CENTER
  • 文:猪飼尚司
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マスクディスペンサー。幸せや平和の象徴でもある鳥をモチーフに鈴木がデザインしたマスクディスペンサーは、羽の部分を外すとマスクが取り出せる仕組み。鈴木が主宰するプロダクトデザインセンターのホームページでは図面を無料でダウンロードすることが可能。3Dプリンターがあれば、誰でもこのプロダクトを簡単に製作できる。

2021年4月15日発売の最新号Pen第一特集は「コロナの時代に、デザインができること」。特集ではプロダクトデザインセンターを主宰する鈴木啓太が困難を乗り越えるためのデザインを提案。発売に合わせて、自身がデザインしたマスクディスペンサーの3Dプリンター用のデザインを無償で配布する。

鈴木啓太(すずき・けいた) ●デザイナー。1982年、愛知県生まれ。多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業。2012年、プロダクトデザインセンターを設立。15〜17年、グッドデザイン賞の審査委員を最年少で担当。おもな作品に「富士山グラス」「DYK調理器具」「相模鉄道12000系車両」など。

「人の暮らしがよりよい状態になるように、課題をひとつずつ探究し、ていねいにプロセスを組み立て、解決していくのがデザインの本質的な役割。健康、暮らし、経済、コミュニケーションなど、あらゆる側面で早急に改善すべき課題が山積みの中で、いまこそより広義にデザインの意義を考える機会だと思っています」

このように語る鈴木啓太は、日用品から列車まで幅広い領域を手がけるデザイナー。日々の暮らしにおける小さな気付きが枝分かれしていき、公共の仕組みから個人的なアイテムに至るまで、デザインのアイデアは無限に広がっていく。

接触を避ける横断歩道。横断歩道の線の幅、色の濃度、形状を再検討すれば、人々が一定の距離を保ちながら、わかりやすく安全に移動できる。

いま提案するのは、前向きなスタンダード


ソーシャル・ディスタンスが重要視される中で鈴木が思いついたのは、都市におけるエスカレーターや横断歩道の構造と仕組み。人との距離をとらなければいけない条件を前提に、アイデアを発展させていけば、混雑する場所でスムーズな動線を確保する画期的な手段が生まれる可能性がある。

また、アウトドアの過ごし方を豊かにするために、鈴木は公園のベンチに注目した。ここで提案するのは、好きな場所にベンチを運んで楽しむ海外の事例を参考に考えたものだ。

一方で、個人の暮らしのシーンを、より便利で心地よいものにするためのアイデアも欠かすことはできない。この1年で多くの人の新習慣となったマスクやテイクアウトのフードサービスについては「単に機能を追求するのではなく、暮らしの中で楽しめるものであるべきだ」と提言する。さらに、国産材のストランドボードに落ち葉や樹皮を閉じ込めた仕上げ用建材は、ステイホームの空間を彩りのあるものにしたいという思いから生まれた。

「コロナ禍で私たちはいままでにはなかった制限を受け、特別な行動や習慣を強いられています。この貴重な体験を可能な限りプラスに転じ、状況が収束し、落ち着きを取り戻した時には前にも増してもっと豊かな環境にしていきたい。それこそが、私たちが目指すべき、前向きなニュースタンダードだと信じています」

ストランドボード。近年、構造用合板の代用品として活用されているストランドボード。鈴木は素材の制作プロセスにおいて、身近な場所で手に入る落ち葉や樹皮などをあえて混入させ、新しい内装材の可能性を追求。ボードは素材本来の香りがする。

問い合わせ先/ プロダクトデザインセンター

https://productdesigncenter.jp