新球場も誕生! 北海道日本ハムファイターズ率いる栗山監督へ、10の質問。

  • 文:渡辺芳浩
  • 画像提供:H.N.F.

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JR北広島駅からほど近い総合運動公園を利用。32ヘクタールの敷地は新球場の他、イベント施設ができキャンプやBBQ、スケートが楽しめる予定。北広島市は札幌と新千歳空港のほぼ中間に位置。札幌から通勤圏内で農業や畜産加工が盛ん。人口5万8000人、新千歳空港からクルマで約30分。

北海道日本ハムファイターズが誕生したのは2004年。道民にとって念願のプロ野球球団誘致とあって、以降、人気は不動だ。そしていま、新たな希望が姿を現し始めた。新球場の建設だ。専用球場での野球観戦という側面にとどまらず、地域振興をも含めた壮大なボールパーク構想が進行している。ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(FSE)の前沢賢取締役事業統轄本部長は語った。

「最近、スポーツ観戦の概念が変わってきていると感じています。もちろんプロ野球もそうですが、球場は野球に興味のある人だけのものではない。副次的な目的、たとえばキャンプやイベントなどを楽しむ場として、広義に捉える必要があると思います」

前沢さんがイメージするのは、北海道らしさが感じられるボールパークだ。目指すのは、本来、スポーツがもっている醍醐味、つまり自然の中で最高のプレーを間近で体感させること。単なる球場という枠を越え、人々や地域とのつながりを生み出すという「北海道ボールパーク構想」だ。アメリカでは球場の新設・移転の際、企業誘致や都市整備も含めて周辺地域を再開発するのがトレンドである。

観客の興奮度はマックスに、極秘スペックを大公開!

「エスコンフィールド HOKKAIDO」は、収容人数約3万5000人、座席数約3万人、建築面積約5万㎡、地上6階・地下2階建て、1枚屋根スライド式(2枚屋根/1枚固定)。球場を平面図で見てみると、一塁側のバックヤードが大きく取られており、座席数も多い。日本の球場は左右対称が基本だが、新球場はあえて非対称の斬新なデザインを選んだ。個性を出すメジャー流の発想だ。

計画地は北広島市。第一弾として、23年春に新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」がオープンする。国内の球場にはない新機能が盛り込まれるが、注目は、天然芝と全天候型を実現する開閉式屋根だ。FSE・事業統轄本部の小川太郎さんは、「天然芝の実現は設計の最も重要なポイントのひとつ。ここからスタートして、屋根の設計やガラスの壁といった構造を実現させていきました」と話す。国内外13の設計グループによるコンペを実施。設計プランは外と中をシームレスにつなぐことも重視し、周りの緑との調和も確保された。

新球場に続き、ライブエンターテインメントやアクティビティの施設が建設予定。「共同創造空間」をコンセプトに、パートナー、ファン、地元民が一体となって、地域を盛り上げていくベースとなるという。早く、新球場で白球の快音を耳にしたい。

屋根は2枚構造で、上部の1枚のみがスライドすることで開閉させる。開閉にかかる時間は約25分。冬の積雪にも対応、切妻だが落下防止の工夫がされ、雪をゆっくりと樋(とい)部分で受け、融かす。選手のパフォーマンスを最大限に引き出すため、グランドは天然芝に。品種など独自の研究が行われ、開業後は専任のグランドキーパーによる管理で、厳しい冬も育成を保つ。

球場の内外をゆるやかにつなげるためボーダレスな構造に。外にも試合の臨場感が伝わるのはうれしい。場内にはクラフトビールを醸造するブルワリーの設置も検討されている。

巨大な壁がそそり立って威圧感を与えてしまうことを避けるため、外部にたくさんの箱が飛び出して見えるデザインを採用。ヒューマンスケールを考慮した、心地いい空間演出だ。

上質なサービスも提供され、野球を観戦しながら料理もしっかり楽しむことができる。

北海道産の食材をふんだんに使ったグルメを味わえるレストランなどがラウンジに。

北海道の自慢のひとつ、温泉やサウナを球場内に設置するという大胆なアイデアが、このエリアで構想されている。フードホールやホテルといった施設も予定されている。

グランドレベルを周囲の地盤レベルよりも低く掘り、フィールドレベルを地下2階にした。ぐるりと回遊できるコンコースのどこからでも、フィールドを見ることができる。

1塁側と3塁側の各スタンド上に設置されるスクリーンの大きさは、なんと世界最大級。最新鋭の映像と音響による演出とがあいまって、球場全体が盛り上がること間違いなし。選手の登場から興奮度はマックス!

ボールパークの未来予想図。

新球場の完成は、あくまでも壮大な構想の始まり。豊かな自然を活かしたさまざまな計画が明らかになるにつれ、期待が膨らむ。

32ヘクタールの敷地では、2023年の新球場開業に続き、飲食・宿泊・体験型アクティビティなど斬新なプロジェクトが進行。

球場の南側に広がる沢エリアを中心に、マーケットなどが計画されている。湖畔にあるレストランでは、北海道ならではの食を堪能できる。

グランピングはオールシーズンで楽しめる。夏はBBQや焚火を囲んで夜まで語らう。

冬はスノーパークでのアクティビティを。四季を通じて北海道の自然を満喫。

27年開業予定の新駅から球場までの通りは、憩いの場。芝生に寝転がって音楽を聴いたり、カフェで食事をしたり、サイクリングやスポーツを楽しめる。試合がない日も賑やかになりそうだ。

札幌市中心部からはシャトルバスも運行し、モビリティターミナルが移動の基点に。ボールパーク内では、電動カート、シェアサイクルといった移動手段も用意される予定。

栗山監督へ、10の質問。

栗山英樹(くりやま・ひでき)●1961年、東京都出身。創価高校から東京学芸大学へ進み、ドラフト外で84年にヤクルト入団。89年にはゴールデングラブ賞を獲得。2012年に北海道日本ハムファイターズ監督に就任、その年にリーグ優勝。16年には日本一を果たす。2002年、栗山町に「栗の樹ファーム」を完成させ少年野球の振興に努め、現在は生活拠点としている。

就任早々から実績を残し、北海道民から熱烈な支持を得ている栗山監督。新球場での選手の起用や、監督自身が楽しみにしていることを訊いた。

Q1. 最初に新球場プロジェクトを聞いた時の印象・感想は?

最初は本当に実現できるのかと思うくらいの壮大な計画だと思いました。でも、これまでにない新しいコンセプトや設計で、ファイターズらしいチャレンジになっていますね。

Q2. 監督や選手からの要望はありましたか?

とにかく既存の球場設計や常識にとらわれない発想で取り組んでほしいと、ただそれだけでした。

Q3. 新球場のデザインについての感想は?

プロジェクトと向き合っている前沢さん(ファイターズ スポーツ&エンターテイメント・取締役)や三谷さん(同取締役)らしいアプローチで、その斬新さに心を打ち抜かれました。

Q4. 実戦での野球スタイルや戦術は変わりますか?

形状が変わり天然芝になることで、当然チームづくりや戦術も変わってきます。いずれにしても、全天候型そして天然芝という環境にいかに適応できるかがカギになります。

Q5. 新球場でお客さんとはどのようなつながりが生まれますか?

選手との距離も近くなりますし、野球の見方だけでなく見せ方もこれまでとはがらっと変わります。お客さんには新球場を一緒に育ててほしいと思っています。

Q6. 新球場でお客さんにどんな楽しみ方をしてほしいですか? どんな提案をしますか?

私も大リーグでいくつかの球場を見てきましたが、それに近いかたちになると思いますよ。いろんな観戦スタイルが可能になるので、みなさんにもそれぞれの楽しみ方を見つけてほしいですね。

Q7. 監督や選手にとってうれしい点はなんですか?

世界一のボールパークが北海道にできることは誇らしいことですし、そこで野球ができることはなにより幸せなことです。

Q8. ボールパークのエンターテインメントで楽しみたい施設やイベントはなんですか?

自然を活かした仕掛けが楽しみです。グランピングもできると聞いていますし、北海道の球場でしか体験できないことにチャレンジしたいですね。

Q9. プロ野球全体にとって、どのような効果がありますか?

自前で球場をもつ球団や、建て替える動きが出てくると思います。結果として、ファンのみなさんに野球を喜んでもらうことにつながるんじゃないでしょうか。

Q10. 北海道の少年少女野球や未来にとって、どんな役割が期待できますか?

ファイターズに入って新球場でプレーしたいと思う少年少女が増えることで、野球のレベルアップにつながってほしいですね。プレーするだけでなく、見ることを楽しみにしてくれる子どもたちが増えれば、こんなにうれしいことはないです。