世界遺産・元離宮二条城を望む、贅を尽くした古都の宿「ホテル ザ ミツイ キョウト」

  • 写真:蛭子 真
  • 文:小長谷奈都子

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夕暮れ時のラウンジからの眺め。ホテル中心に位置する1300㎡の中庭に、三井家の時代から受け継がれてきた景石や灯籠を改めて配置。春は満開となる枝垂桜が見どころ。

ここ数年、ホテルのオープンラッシュに沸く京都。だが話題をさらう多くは外資系の高級ホテルだった。そこに新風を吹き込んだのが、「ホテル ザ ミツイ キョウト」だ。三井不動産の最高級ラグジュアリーホテルブランドで、館が立つのは三井家ゆかりの地。1691年に二代目当主が居を構え、財閥解体に至るまでの250年以上にわたり、三井総領家(北家)の中心であり続けた由緒ある場所だ。

世界遺産・元離宮二条城に臨む絶好の立地。正面玄関でまずゲストを迎えるのは威風堂々たる梶井宮門(かじいみやもん)。1703年に建造され、三井家の時代より受け継がれてきた門で、福井の宮大工集団が解体と再生を担った。外観の部材を8割以上も残しながら、現代の技術も取り入れて構造的には進化を遂げている。「継承と新生」をテーマに掲げるこのホテルを象徴する存在だ。

梶井宮門をくぐった先の小径には、三井総領家(北家)の遺構である丹波鞍馬石といった京の銘石、白河石の十三重塔や、地下から天然温泉水を汲み上げる源泉井戸がある。

ラウンジからイタリア料理「フォルニ」へ続く廊下は、伏見稲荷の千本鳥居がモチーフ。光の具合で天井や柱に中庭の水盤が映り、内と外が呼応する。

朝日が差す梶井宮門。形状は本瓦葺・袖塀付き薬医門(やくいもん)。全解体の後、修復や部材の交換を行い、この地で組み立て直した。

古色を帯びた材と白い木口のコントラストが美しい。昔は腐ったり割れたりを防ぐため木口に胡粉を塗った。

屋根瓦は50%以上を再利用。留蓋瓦(とめぶたがわら)には邪気払いに桃モチーフが用いられ、その部分は新たに再現。

修復では1000ピースに解体され、部材一つひとつまで精査。300年の時が育んだ古艶がなんともいえない風情を醸す。

三井家が受け継いできた、梶井宮門がゲストを迎える。

100㎡を超える広さの客室に天然温泉を引いた「オンセンスイート」は2室のみ。室内は桜の木を多用。庭の石垣は二条城の石垣に着想。

地階のサーマルスプリングスパは、ジャグジーを備える。香川県高松市の巨大な庵治石(あじいし)が圧巻。出た後は身体がポカポカ。

館内へ足を踏み入れ、低い天井のロビーを抜ければ、一転、吹き抜けの開放的なラウンジ。窓の向こうに広がる水盤から日本庭園へと続く眺めが、なんともドラマティックだ。庭園を建物が取り囲むレイアウトで、根底には庭と建物が一体となり美しく調和する「庭屋一如(ていおくいちにょ)」の精神がある。たとえば、晴天の日はロビーと中庭を仕切る窓が全開となる。また、天井から吊り下げたアートには水面を思わせる模様が描かれるなど、内部と外部をゆるやかにつなぐ仕掛けが随所に施されている。

2軒のレストランでもまた、四季のうつろいを感じながら特別なひと時を過ごすことができる。ガストロノミー鉄板「都季─TOKI─」で腕をふるうのは、「リッツ パリ」で活躍した浅野哲也シェフ。西京味噌に漬け込んだスモークサーモン、フレンチ風の真鯛の蕪蒸しなど、日仏融合の独創的かつ洗練された世界へと誘われる。

季節の草花が咲く庭の向こうに立つ「四季の間」。施工は数寄屋建築の匠、安井杢工務店。慶事などレストランの別室として利用可。

13年間フランスで研鑽を積み、帰国後は京料理を勉強中の浅野哲也シェフ。「歴史ある土地で、日本のブランドを世界に発信したい」

ハイライトは、敷地内の地下1000mから湧き上がる天然温泉水を活用したサーマルスプリング。水の滴る音がかすかに響く、岩盤に囲まれた仄暗い空間。ぬるめの湯に静かに浸かっていると、地中奥深くにもぐっているように錯覚する。温泉を客室でひとり堪能したいなら、露天風呂付きの「オンセンスイート」がお薦めだ。

他にも多彩な客室が揃う。二条城眼前の部屋はその眺めに気分が高揚するし、中庭に面した部屋では刻々と変化する庭の表情に魅了される。茶室を現代的に解釈した上質な空間を彩る、三井家旧蔵の美術品をモチーフにしたアートの数々にも注目だ。

三井グループの総力を結集して、粋を極め贅を尽くした、日本を代表するラグジュアリーホテル。その物語はいま始まったばかりだ。

「四季の間」の広間。襖絵は現代日本画家の朝倉隆文が庭の四季を題材に描いた。床の室礼は武者小路千家家元後嗣・千宗屋の監修。

「都季─TOKI─」の料理。下はフレンチコース「都季」¥32,890(税・サービス料込)より「鴨胸肉のアピシウス風」、上はフレンチと和の食材や調理法を融合したコース「庭屋一如」¥27,830(税・サービス料込)より「自家製スモークサーモン」。

千宗屋が監修するラウンジ横の茶居(ちゃきょ)では着物のスタッフが立礼式の点前で薄茶を出す。上質なおもてなしはホテルの強み。

堀川通沿いの客室からは二条城がすぐ目の前に。ラグジュアリーな客室のデザインはアンドレ・フー。パブリックスペースも担当。

※Pen2021年2/15号「物語のあるホテルへ。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、掲載している内容から変更になる場合があります。

ホテル ザ ミツイ キョウト

京都府京都市中京区油小路通二条下ル二条油小路町284 
TEL:075-468-3100
全161室 デラックスルーム¥90,321(税・サービス料込)〜、オンセンスイート¥253,000(税・サービス料込)〜  
アクセス:京都駅からクルマで約15分、地下鉄東西線二条城前より徒歩3分、地下鉄烏丸線烏丸御池駅より徒歩10分 
www.hotelthemitsui.com