【プロが薦めるいま読むべき3冊】トラベルジャーナリスト・寺田直子が選んだ〈旅〉の本

  • 写真:岡村昌宏(crossover) 文:吉田けい

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右:『ぱらのま』Kashmir 著 白泉社 2017年 ¥913 寺田いわく『ブラタモリ』と『孤独のグルメ』を足して2で割ったようなコミック。一見ぼんやりとした“残念なお姉さん”が、大人の経験値と知識を発揮しつつ、ひとり気ままな鉄道小旅行を楽しむ。
中:『極夜行』角幡唯介 著 文藝春秋 2018年 ¥1,925 大学時代から、未知の空間を求めて世界中を旅してきたという著者。太陽が姿を見せない“極夜”で数カ月を過ごすため、GPSを持たず、相棒の犬を1匹連れて、北極を訪れる。4年にわたるプロジェクトの集大成。
左:『バウルを探して<完全版>』川内有緒 著 三輪舎 2020年 ¥2,530 「魂の歌い手」と呼ばれるベンガルの行者バウル。何百年もの間、師弟相伝のみで受け継がれた、歌の謎と本質に迫るノンフィクション。旅に同行した写真家、故・中川彰氏の写真を約100ページにわたって収録。

旅には必ず文庫を数冊持っていき、荷物を軽くするため読み終わったページから破って捨てていくという寺田直子。コロナ感染拡大の影響により、旅行に出かけづらいいまこそ、彼女が読んでほしいと思う作品を聞いた。

「まずは『ぱらのま』。主人公のお姉さんの旅の進め方が私と似てるんですよ。あてもなく出かけて、途中で目的が見えてくる。目的ができると、なんだか勝った気になるんです(笑)。ひとりで旅をすると、より深く自分の世界に入れるし、大人の経験値があれば、海外や秘境まで行かなくても、電車で行ける範囲の場所で楽しめてしまう。そしてなにより、こういうマイクロツーリズム的視点をもつことは、この状況下ではとても重要な気がしています」

続いては『極夜行』。GPSを持たずに北極を行く“脱システム”な旅は、この現代社会への強烈な問いだ。

「便利だが、本当にそれでいいのか、と。旅にしてもビジネスにしても、これまでの方法を変えていくべき局面にあると改めて思っています。そのため、止めようもなくあふれ出る本能のまま冒険に挑むノンフィクションは、本当に面白い。旅の根底には、いつもクエスト(探求)があります。著者も常になにかを探し求めていて、読者はこの本を読むことで追体験して、その経験がまた新たな旅につながるんです」

そして最後の一冊は『バウルを探して』。2013年に出版されてから2度出版社を変え、3回目にしてついに完全版として世に送り出された本である。

「3回目の出版なんて、本自体もまさに旅を重ねてきたかのよう。バウルという言葉に出合ったことから、中川彰さんとダッカへ赴く。紆余曲折の末、ここまで深いものにたどり着いたのが、ジャーナリストとしてうらやましいと思います。タイトルにも“探して”とありますが、なにかを探し求めて、誰かと触れ合っていく中で、そのなにかを見つけていくことこそ旅の本質ではないでしょうか。そういった意味で、究極の旅のあり方を見せてくれる一冊なんです」

最近は「旅養分が足りていない」と寺田。気兼ねなく出かけられる日に備え、この3冊を読んで養分を吸収しながら旅の本質を考えたい。


Pen2020年11/1号「心に響く本」特集よりPen編集部が再編集した記事です。

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寺田直子●旅歴30年、訪れた国は90カ国を超える。雑誌や旅行サイトなどで紀行文や旅情報などを執筆。日本の観光活性化にも尽力。著書に『フランスの美しい村を歩く』(東海教育研究所)など。

Pen2020年11/1号「心に響く本」特集よりPen編集部が再編集した記事です。

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