映画分析サイトの秘密のパスワードを教えてくれました。 ──平川克美が明かす、大滝詠一の知られざるエピソード

  • 文:澤田真幸
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平川克美●実業家、文筆家。1950年、東京都生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、株式会社アーバン・トランスレーションを起業。その後、株式会社ラジオカフェを創業。2014年に隣町珈琲を設立し店主に。著書に『21世紀の楕円幻想論』(ミシマ社)。

平川克美が初めて大滝詠一と会ったのは2008年。自身が運営する「ラジオデイズ」という音声配信サイトの対談番組でだった。

「友人の内田樹、石川茂樹と私の3人で大滝さんを囲んで話を聞くという企画があったんです。ふたりは熱心な大滝フリークでしたが、その時、私は大滝さんについてほとんど知りませんでした。ただ、なにを聞いても間髪を入れずに答えが返ってくるその引き出しの多さに驚いて、この人にもっと話を聞いてみたいと思ったんです」

対談番組は年1回、5年間続いた。座談があるたびに大滝は、平川にちょっとした謎を仕掛けてきたという。

「なんということのない街の風景写真を見せてくれたり、映画のDVDを渡してくれたり。最後にはそれが全部つながっていることがわかるのですが、その時はよくわからなくて、毎回見当違いの感想を述べていました。なにかテストされているといった感じですかね。私は恐らくいつも不合格だったんじゃないかなと思います」


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成瀬巳喜男の代表作『秋立ちぬ』(1960年)。大滝は日本映画の研究に没頭し、特に成瀬作品と小津安二郎作品は徹底的に掘り下げ、ロケ地の緯度や経度、詳細なカメラアングルの特定などを行っていた。「私も大滝さんに倣って、小津の戦前の映画のロケ地探索を始めることになるのですが、その時の文章を大滝さんが読んでくれていて、何度かメールをいただきました」 ©Courtesy Everett Collection/amanaimages

しかし、大滝が密かに取り組んでいた成瀬巳喜男の『銀座化粧』と『秋立ちぬ』の分析が掲載してあるホームページのパスワードを教えてくれた頃から、その関係性は変化していった。

「この時にメールをいただきまして、パスワードを教えるのは10番目だと書いてあって、とても光栄に思ったものです。それで、その分析を読んでひっくり返りました。ものすごく精緻な分析で、大滝さんの才能は音楽の中だけに収まらないんだなと思いました。本当に興味があることはすべて調べ上げるので、『なんでこれほどまで徹底的に調べるんですか?』とお聞きしたら、『CIAに遅れをとっちゃいけないから(笑)』と仰っていて。『ああ、そうか、大滝さんはひとりCIAをやっているんだな』と妙に納得しました」


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