トランプと合体しネット上のヘイトシンボルに陥落したペペを描いた『フィールズ・グッド・マン』

  • 文:ダースレイダー

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監督はマット・フューリーの友人であり、インディーズのコミックシーンでも活動していたアーサー・ジョーンズ。アニメーションを駆使しながらぺぺの問題に切り込んだ本作で監督デビューを飾り、サンダンス映画祭新人賞を受賞した。 ©2020 Feels Good Man Film LLC

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】

カエルのペペ。アーティスト、マット・フューリーが自分を投影したキャラとして生み出したカエルで、本作はぺぺを巡るドキュメンタリー映画だ。マットのコミック『ボーイズ・クラブ』では若者の他愛の無い日常が描かれる。その中でペペは弟分としていじられながら、楽しく暮らしている。ズボンを足元まで下ろして小便をして、「feels good man」と言う。「いい感じじゃん」といったニュアンスの言葉で、軽妙で、いろんな場面で使える。『ボーイズ・クラブ』における日常はゆるゆるのローファイ・ロックが似合う世界で、微笑ましく「いい感じ」なのだ。

この「いい感じ」がネットの世界に転写されるとすぐさまミームと化した。ぺぺのイメージはさまざまな環境に適合した「いい感じ」として、ネット上で拡散されて行く。作家のマットはこれを「いい感じ」じゃん、と放っておいた。ペペが拡散した先の環境に4 chがある。日本の2ちゃんねるから着想を得たこの匿名掲示板の住民たちは、表の世界では言えないような感情や思想、発想や冗談を吐き出していた。ペペはこの環境に適応し、そこで発散されるさまざまな感情を表すカエルへと“進化”してしまう。

作者マットの存在は忘れ去られ、ぺぺは次々とネットの感情と結合していく。ネットの感情には可愛いものもあるが、悪意、呪詛、ヘイトはもっとあふれている。過激化を重ねながらネット上でドナルド・トランプとも合体したペペを、トランプ本人がツイッターでRTしたことで、ペペはネットと現実をつなぐカエルへと“進化”。白人至上主義者や極右団体の蠢く環境に適応し、ついにはヒラリーの演説中にぴょんと飛び出す。劇中で変化していくマットの表情と佇まいに注目。彼は「いい感じ」を取り戻せるのか?

©2020 Feels Good Man Film LLC

©2020 Feels Good Man Film LLC

『フィールズ・グッド・マン』
監督/アーサー・ジョーンズ
出演/マット・フューリー、ジョン・マイケル・グリアほか
2020年 アメリカ映画 1時間34分 3月12日よりユーロスペースほかにて公開。
https://feelsgoodmanfilm.jp/

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