いま、アメリカのファッションシーンを賑わせているデザイナーは、ヴァージル・アブローだけではない。日本でも脚光を浴びる6人のデザイナーを、東海岸と西海岸に分けてピックアップ。彼らに共通するのは、ストリートテイストやラグジュアリー感といった要素をうまく服づくりに落とし込みながら、ファッションアイテムの出自や多様性を尊重する精神だ。時代の空気感を反映した、そのクリエイションに注目してほしい。
歴史ある生地で物語を紡ぐ、現代のストーリーテラー
アンティークやデッドストックの生地で仕立てたウエアと聞くと、アップサイクルやサステイナブルなモノづくりを想像するかもしれない。しかしボーディが目指すのは決してそこではない。歴史ある生地のもつ物語をインスピレーション源としつつ、キルティングやアップリケなど、女性的なクラフトワークで仕上げたユニークなコレクションが特徴だ。生地の希少性から一点モノも多い。
多様な価値観をミックス、マスに届ける先駆的存在。
テルファーのモットーは「It's not for you, it's for everyone」であり、多様な価値観の尊重を発信して きた。ユースカルチャー発信地と有名ブランドの人気アイテムを掛け合わせた“ブッシュウィック・バーキン”の異名をもつバッグは、受注生産制にすることで希望するすべての人に届けている。コンバースやギャップなどマスブランドとも積極的にコラボレーションしてリーチを広げる。
社会へのメッセージを込めた、洗練のストリートウエア
時代の声に敏感なレイモンドが、自身を取り巻く文化や歴史的背景に敬意を表して手がけたのがパイアー・モスだ。卓越した技術の光るテーラリング、洗練されたストリートウエアのシルエット、幾何学的なグラフィックなどが特徴といえる。また、ウエアの随所に込められた大胆な社会的メッセージでも話題を呼び、いまや名実ともにアメリカの新時代を象徴するブランドとなった。
リラックスした空気感も醸す、西海岸のデザイナー
オンとオフを行き交う、 新たなラグジュアリー
ロサンゼルスでフード付きパーカやネルシャツ、スウェット、デニムといったストリートアイテムがある種のステータスとなったのは、フィア オブ ゴッドの台頭によるものだろう。ニュアンスやディテールにこだわり、ノンシャランなようで緻密に計算された着心地のいい服でセレブを魅了し、憧れのブランドへと成長した。オンとオフを緩やかに行き交う、ラグジュアリーラウンジウエアというカテゴリーを確立させた立役者だ。
セレブたちを惹きつける、 独自目線のクリエイション
ルードはラグジュアリーとストリートの絶妙なバランスで、セレブから絶大な人気を誇るブランド。彼らの影響でブランドビジネスは瞬く間に成功し、いまやビラセノー ル自身もセレブの仲間入り。懐かしさを覚えるアメリカンスタイルと、現代のロサンゼルスのカルチャーを融合させたクリエイションは、多様性を肌で感じてきた移民の目線をもつビラセノールだからこそ追求できたといえる。消費者の声にも熱心に耳を傾け、時代とともに進化していく。
ベニスビーチの空気を醸す、ノンシャランな世界観。
2018年にリネッツがドーバー ストリート マーケット ロサンゼルス店のオープン記念スペシャルコレクションをローンチした後、20 年にフルコレクションとして始動したのが、イーアールエルだ。ベニスビーチのレイドバ ックした空気を醸す、全世代に向けたユニセックスブラ ンド。明るくて懐かしいテイストのアイテムが揃う。リネッツ自身が撮り下ろすコレクション写真からも伝わる、気負いのない親密な世界観がいまの時代と共鳴する。
※こちらは2021年2月15日(月)発売のPen「100のキーワードでひも解くアメリカ」特集よりPen編集部が再編集した記事です。
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