伝説の映画『クラッシュ』の4K無修正版公開に合わせて見たい、鬼才クローネンバーグ監督のおすすめ作品3選。

  • 文:細谷美香

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©️1996 ALLIANCE COMMUNICATIONS CORPORATION, IN TRUST

デヴィッド・クローネンバーグ監督がJ.G.バラードの小説を映画化した『クラッシュ』(1996年)。交通事故に快感を覚える者たちの危険な愛と欲望を描いた伝説の作品が、1月29日より『クラッシュ 4K無修正版』として劇場公開される。

ホラーを中心にフェティッシュを極めた“異形の傑作”を生み出してきた鬼才、クローネンバーグ。公開にあわせて、クローネンバーグ・ビギナーにもおすすめの3作品を紹介したい。




①ハエ男と融合してしまう天才科学者を描く『ザ・フライ』(1986年)

②人間に潜む「暴力性」を描く『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005)

③塚本晋也にも影響を与えた初期の名作『ヴィデオドローム』(1985年)

『クラッシュ 4K無修正版』
監督/デヴィッド・クローネンバーグ
出演/ジェームズ・スペイダー、ホリー・ハンター
1996年 カナダ・アメリカ合作映画 1時間40分
1月29日(金)よりシネマート新宿ほかにて公開中。
http://crash4k.com/

①ハエ男と融合してしまう天才科学者を描いた『ザ・フライ』(1986年)

©️Capital Pictures/amanaimages

50年代に製作された映画『ハエ男の恐怖』をリメイクし、ヒットを記録した作品。自身の身体を使って物質転送の実験をしていた天才科学者のセスが、機械に紛れ込んでいたハエと融合してしまうという物語が描かれる。背中に黒くて固い毛が生え、歯は抜け落ちて爪が剥がれていき、次第にハエ男になっていく。そのプロセスには、クローネンバーグが得意とするボディ・ホラーの生々しい魅力が存分に詰まっている。

ストーリーの軸となっているのは、セスが出会った女性記者との関係。残酷な生態観察のような映像が続くなか、セスの子どもを妊娠した彼女の葛藤も描かれ、哀しい愛の物語としてもやるせない余韻を残す。まさにクローネンバーグのビギナーには最適な1本だ。

『ザ・フライ』
監督/デヴィッド・クローネンバーグ
出演/ ジェフ・ゴールドブラム、ジーナ・デイヴィス
1986年 アメリカ映画 1時間35分
Amazonプライムビデオにて配信中。

②人間に潜む「暴力性」を描いた『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005年)

©️New Line/Everett Collection/amanaimages

同名のグラフィックノベルを映画化したサスペンス。田舎町でバーを営むトムは妻と子どもと幸せな日々を送っていたが、襲ってきた強盗を射殺してしまう。その日以来、トムの過去と正体が暴かれることになり……。変態的な欲望を持つ人物を描くことが多いクローネンバーグだが、この映画の主人公は平凡で家庭的な幸せを求める男。

そんな人間のなかに実は潜んでいた暴力性を、家族の物語とともにじっくりと描き出している。『イースタン・プロミス』『危険なメソッド』でも組んでいる相思相愛の俳優、ヴィゴ・モーテンセンのアクションも鮮やか。グロテスクな描写は控えめに、ひとりの男の肉体と衝動を通してバイオレンスの本質に切り込んだ作品だ。

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
監督/デヴィッド・クローネンバーグ
出演/ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロ
2005年 カナダ・アメリカ合作映画 1時間36分
U-NEXTにて配信中。

③塚本晋也にも影響を与えた初期の名作『ヴィデオドローム』(1985年)

©️Capital Pictures/amanaimages

主人公は刺激的な映像を探し求めているケーブル局の社長。「ヴィデオドローム」というスナッフビデオ(実際の殺人の様子を映したビデオ)と出合った彼は、恋人とともにその暴力的な映像の虜になっていく。テレビの画面が生き物のように膨らんだり、腹部の裂け目にビデオテープや拳銃が挿入されたりと、グロテスクで魅惑的なクローネンバーグの世界に触れるのに最適な1本。

無機物と身体が融合していく映像に引き込まれ、気持ち悪さを感じながらも一瞬も目が離せなくなる。塚本晋也監督が「『鉄男』の父親のような存在」と語るなど、クリエイターたちにも影響を与えた、クローネンバーグ初期の名作。観る者を幻夢に引きずり込むような不可解なストーリーにも中毒性があり、80年代を代表するカルトムービーとなっている。

『ヴィデオドローム』
監督/デヴィッド・クローネンバーグ
出演/ジェームズ・ウッズ、デボラ・ハリー
1985年 カナダ映画 1時間29分
U-NEXTにて配信中。

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