太陽と海、風の力で世界を巡る‟サステイナブル”なスーパーシップ、オデッセイ号が東京にやってきた。

  • 文:並木浩一
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洋上を進む「オデッセイ」号。動力源とするのは太陽、風、海水から取り出した水素と、再生可能なクリーンエネルギーのみ。艇体にメイン・パートナー「BREGUET」の文字が見える。

ついに「レース・フォー・ウォーター・オデッセイ」が、東京へとやってきた。ソーラーエネルギーと海水から取りだす水素、そして風の力。つまり再生可能なクリーンエネルギーだけで海を駆ける、全長120フィートのスーパーシップ。ブレゲがメイン・パートナーとして全面支援する「レース・フォー・ウォーター・オデッセイ」プロジェクトの長期航海で、今回が初めての東京寄港となる。

レース・フォー・ウォーター財団が主催するこのプロジェクトが立ち向かう相手は、放置すれば回復不可能なまでに海を汚染するプラスチックの脅威だ。世界を巡って実地調査を行い、大学・国際機関と協力して研究を推進する。各国の寄港地では政財界のリーダーやメディア、一般市民にむけた啓蒙活動を行う。5年にわたる壮大で価値ある航海に「ブレゲ」は賛同し、筆頭の支援者となった。

デッキの大部分をソーラーパネルで覆う独特の構造。パネルは左右に伸縮可能で、最大で512㎡のエリアに拡大する。

東京・青海に待望の接岸を果たした「オデッセイ」号。マスコミや各界の有力者、一般市民との交流を通して、活動を行う機会だ。

2017年にスタートしたルートはフランス北西部のロリアンから北大西洋を横断、カリブ海を経てパナマ経由でアメリカ大陸を越え、南太平洋からオセアニアをかすめて北太平洋へと北上し、東京に到着。その間の寄港地は30箇所近い。

「オデッセイ号」は、最大で512㎡に拡張可能なソーラーパネルと7.5トンのリチウムイオン電池で、36時間の自力航行が可能、寄港時などに余剰となる太陽光エネルギーは高圧タンクで最大200kg近くを貯蔵できる水素の生成に使われ、これも約6日分の動力に変えることができる。さらに、未来形のセイルともいえる40㎡大のパラグライダー状カイトを上空150mに広げて自動操縦することで、モーターなしでも最高8ノットの速度で“帆走”することもできるのだ。

東京で行われた、マスコミ向けのセッション。“LEARN, SHARE, ACT”と名付けたプログラムの3本柱についての詳細な説明があり、質疑応答が交わされた。

プレゼンテーションの主役はキャプテン。クルーを代表して航海を指揮するだけでなく、プロジェクトの進行を管理する科学者的立場も要求される。

メイン・パートナーであるブレゲは、海との繋がりが強いブランドだ。そもそも創業者のアブラアン=ルイ・ブレゲは、“フランス王国海軍時計師”という、同時代にたった一人だけの栄誉を得た天才時計師である。人の命に直接関わり、国の命運さえも左右したマリン・クロノメーターの製作を唯一命じられた経験と責任感は、この世界的な時計ブランドの貴重な財産だ。その伝統は現在の腕時計コレクション「マリーン」に活かされ、一方でこのレース・フォー・ウォーター・オデッセイの航海への使命感に表れている。

船内で乗組員が着用する腕時計には、「マリーン」の特別バージョンが支給された。キャビン内のオンボード・クロックも「マリーン」のデザインである。正しく深く海に関わってきたブレゲの居場所として、それは至極当然に見える。

船内はくまなくメディアに公開された。アッパーデッキ前方の操舵室はコンパクトな設え。エコでハイテク、クリーンな推進力をここで駆る。

ブレゲ「マリーン」のレース・フォー・ウォーター記念モデル。上から見下ろしたソーラーパネルを広げた艇体を文字盤に映している。

問い合わせ先/ブレゲ ブティック銀座 TEL:03-6254-7211