夏の海辺、プール、近所で、子どものころから私たちの日常に寄り添うビーサン。世界中で履かれているためかゴム製だからか、発祥の地がここ日本であることはあまり知られていない。伝統の草履(ぞうり)がルーツで、1954年にアメリカ人デザイナーとゴム製品会社「内外ゴム」が初めて試作したサンダルが輸出され、ハワイを中心に世界中に広まったのがビーチサンダル、通称ビーサンなのである。1962年には地球の反対側のブラジルでビーサンブランド「ハワイアナス」が誕生した。彼らが掲げるデザインのルーツも、もちろん日本の草履だ。
当時人気の観光地だったハワイから名付けられたハワイアナスは、現在もビーサンのトップブランドとしてブラジル国内のみならず日本でも名が知られている。その彼らが2020年のいま、機能的なスポーツサンダルに負けじとばかりに本気で挑んだ最新モデルが「トラディ ゾウリ」である。定番の簡易なつくりの「トラディショナル」と、草履をハイブリッドにミックスしたデザインだ。草履の四角の形が取り入れられ、鼻緒もゴムでなくやわらかいファブリック。裏返した底の先端に足袋(たび)を彷彿させる切り込みがあるのも実に洒落ている。
その底部分こそが、トラディ ゾウリの最大の特徴だ。EVA樹脂とゴムの3層レイヤーでつくられ、ダッドスニーカーのようなボリューム感がある。都会的な服装に合わせた街歩きが想定されたもので、薄底の一般的なビーサンとは一線を画すクッション性のある仕上がり。短パンはもちろん、イマどきなワイドパンツと組ませても足元をしっかりと支えてくれる。
ニューエイジな草履として、浴衣や甚平を着るシーンで愛用するのもよさそうだ。人が集まる場が制限される今年は、花火大会や盆踊りといった大イベントの開催は残念ながら少ない。でもせめて日常生活の中で和の気分を味わい、季節の喜びを足元から感じてはいかがだろうか。