皆川明や田根剛、しりあがり寿らが古美術と共演! 国立新美術館『古典×現代2020』で、エキサイティングな日本のアートを見よ。

  • 文:はろるど
Share:

「刀剣×鴻池朋子」の会場風景。鎌倉時代などの刀剣が並ぶ展示室に、鴻池朋子の『皮緞帳』(2015年)が吊り下がる。動物の皮を縫い合わせた作品で、幅は24mと巨大。まるで刀剣で鋭く切り裂いたかのように、大きく2つに分かれている。写真:上野則宏 

江戸時代以前の伝統的な絵画や陶芸、刀剣は、いまも人々の心を惹きつけるとともに、第一線で活躍するクリエイターに多くのインスピレーションを与えてきた。そうした日本美術や古美術品とクリエイターらがコラボレーションを果たした夢のような展覧会が、国立新美術館で開催中の『古典×現代2020―時空を超える日本のアート』だ。

本展の魅力は、美術に限らず幅広いジャンルで活躍するクリエイターが参加していること。パリを拠点にする建築家の田根剛は、滋賀・西明寺の『日光菩薩立像』と『月光菩薩立像』(ともに鎌倉時代)に「光と祈り」をテーマとしたインスタレーションを展開。暗闇から光を受けて浮かび上がる仏像は、息を飲むほどに厳かだ。「ミナ ペルホネン」を主宰するデザイナーの皆川明は、尾形乾山に着想を得て、自然の模様を用いたテキスタイルと焼きものが響き合う空間を築き上げた。漫画家で美術家としても活躍するしりあがり寿は、葛飾北斎の『冨嶽三十六景』を現代風にパロディ化。遊び心に満ちた愉快な情景にニヤリとさせられる。このほか、円空と同じ一木造で木彫を制作する棚田康司や、刀剣の名品に大作で挑んだ鴻池朋子など美術家の展示もあり、8名の錚々たるクリエイターが、日本美術史上の巨匠と時代を超えて共演している。

一見、クリエイターの表現ばかりに目が向いてしまうが、伊藤若冲の花鳥画や曾我蕭白の屏風をはじめとした古美術品の質の高さも見過ごせない。それもそのはず、日本美術の監修を、1889年に創刊され、日本・東洋美術の研究者が集う世界最古の美術雑誌『國華』の主幹が担当しているのだ。そもそも国立新美術館で古美術品が企画展示されることも初めてであるから、いままでになかった展覧会と言うほかない。

皆川明は「いつの時代も伝統と革新は寄り添いながら、互いの光を融和させ、新たな道筋を照らしている」と語っている。どのクリエイターも伝統に敬意を払いつつ、創意工夫を凝らして新たな作品を生み出していることは明らかだ。日本の古典と現代のエキサイティングな出合いを、いますぐに会場で目の当たりにしてほしい。

しりあがり寿『―葛飾北斎―天地創造from四畳半』2020年 作家蔵 7分のビデオ・インスタレーション。アニメキャラクターの北斎が絵筆を振り回しながら、マジシャンのように草花や魚、妖怪、赤富士などを次々と描いていく。北斎のモチーフが万華鏡のように広がっていく光景が圧巻だ。写真:上野則宏 

「円空×棚田康司」の会場風景。『十一面観音菩薩立像』など10体の円空仏と、棚田による少年や少女を象った彫刻が並ぶ。ともに愛らしい表情が魅惑的だ。棚田が円空に倣って、背面部分の断面を残した人物像を初めて制作したことにも注目。写真:上野則宏 

「仏像×田根剛」の会場風景。『日光菩薩立像』(右)と『月光菩薩立像』(左)のまわりを、小さな光源が点滅を繰り返しながら上下に動く。展示室には西明寺の勤行の『天台声明』が響き、お堂で仏像を前にしているような感覚になる。写真:上野則宏 

「乾山×皆川明」の会場風景。乾山の焼きものが並ぶケースの上を、円筒形のテキスタイルのオブジェが彩る。皆川は、乾山焼の表と裏の異なる意匠にミナ ペルホネンのデザインとの共通性を見出した。写真:上野則宏

『古典×現代2020―時空を超える日本のアート』

開催期間:2020年6月24日(水)~8月24日(月)
開催場所:国立新美術館 企画展示室2E
東京都港区六本木7-22-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火 
入場料:一般¥1,700(税込)
*オンラインでの事前予約制。マスク着用を要請し、入館前の検温、手指消毒液を設置するなど、新型コロナ感染拡大防止のための対策を実施

https://kotengendai.exhibit.jp