ひと昔前までは、持ち運べる明かりといえば、キャンドルかランタン、懐中電灯くらいであったが、LEDの進化でそれは大きく様変わりした。デザインも機能も豊富な充電式のポータブルランプの登場で、私たちはより思い通りに光を操ることができるようになった。
タッチひとつで明るさを変えられる便利な調光機能とコンパクトでハンディなサイズにより、明るく手元を照らしたり、ダイニングテーブルでキャンドルのようなほのかな光を灯したり、ベッドサイドでくつろぎの光を楽しんだり。一台で多用途に使えるのが魅力だ。充電式でコードに煩わされることなくテラスなどの屋外にも持ち出せるので、日常のさまざまなシーンを豊かに彩ってくれる。スピーカーや防水機能を搭載した製品もあり、ライフスタイルに合わせて選べる個性豊かなポータブルランプを紹介する。
機能美と手仕事が融合した、懐かしくも新しいランタン
スペイン語で“バスケット”という名前をもつ「セスタ」と、ひとまわり小さな「セスティタ」は、1962年にミゲル・ミラが生み出した名作ランプだ。ランタンのような愛らしいフォルム、手に馴染むハンドルは、工芸品のように親しみやすい。カタルーニャのモダンデザインを象徴するデザイナーであるミラは、「時代遅れになるものは、最初からいいものではない」と語る。
曲げ木のハンドル付きフレームに収められた楕円形のシェードは当初から持ち運びを考えられていたものだが、充電式LEDモジュールを内蔵することで、コードやコンセントの煩わしさから開放されたスマートなポータブルランプ、「セスティタ バテリア」に進化した。職人が一つひとつ手間暇かけて仕上げる木製フレームとハンドルは「美しさとは五感で感じるもの、触れたときの心地よさも大切な要素」というミラの美意識を体現している。
重厚な存在感をもつ、金属の塊を削り出して生まれた明かり。
手にした瞬間、金属のなめらかな感触とずっしりとした重さが伝わってくる「ターン」。金属の塊を回転させて削り出す様子から、その名が付けられたという。マテリアルのもつ魅力を引き出したデザインは、ニューヨーク在住のデザイナー、田村奈穂によるものだ。
シェードの天面に触れることで、キャンドルのようなほのかな光、食事を楽しむ光、机上を照らす光、部屋に明るさを足す光と4段階に調整が可能。テーブルライト、デスクライト、ナイトスタンドなど、1台でマルチに活躍する。ペンのように細いボディの下部には握った時に滑り止めになる加工がされているので、持ち運びも手軽にできる。加えてシャワーが直接当たっても問題ないほどの防水仕様なので、バスルームやアウトドアでも気兼ねなく使える。どこへでも一緒に行けるタフで頼もしい「ターン」は、夜をより豊かな時間にしてくれそうだ。
空間を豊かに演出する、本格的なサウンドと光。
ガラスのランタンを思わせるコンパクトなボディに最先端のテクノロジーを秘めた「グラスサウンドスピーカー LSPX-S2」は、初代モデルに改良を加えて登場した第二弾。ポータブルランプであると同時に、迫力のあるサウンドが楽しめる本格的なスピーカーでもある。
ガラス管の内部には、上向きに照射するLEDに多方向に反射するレンズリフレクターを組み合わせ、直接光を抑えて眩しさを軽減しながら広範囲を照らす。32段階調光に加えて、キャンドルの炎のように揺らぐ光を放つ「キャンドルライトモード」も。ランプのシェードにあたる有機ガラス管が高音域を再生するトゥイーター、その付け根部分には中域を再生する小型ウーファー、そして底部には低域のためのパッシブラジエーターを搭載。ハイレゾにも対応したリアルでクリアなサウンドが360度広がる設計で、光と音の両方で空間を演出してくれる。
“ヒュッゲ”な時間をつくる、ミニマムで機能的なランプ
温かさや居心地の良さを意味するデンマーク語の「ヒュッゲ」は、いまや日本でも広く知られる言葉。ノーム・アーキテクツがデザインを手がけるライフスタイルブランド、メニューから発表した「キャリー LED ランプ」は、そんな「ヒュッゲ」からインスピレーションを得たという。
北欧の寒く長い冬では、キャンドルの炎を囲んで過ごす温かなひとときが不可欠だ。オパールガラスのドーム越しに見える光はやわらかく、キャンドルのように心地よい。軽くて持ち運びしやすいのはもちろん、滑らかな曲線を描くハンドルは360度回転して壁掛けランプにしたり、屋外で木の枝に掛けることも想定したものだという。取り外せばさらにシンプルなテーブルランプに。北欧らしくミニマルなデザインのランプは、どんなシーンにも美しく溶け込みながら「ヒュッゲ」な時間をつくってくれる。
ベルの形で温かさと親密さを生む、現代版キャンドル
もともとロンドンデザインミュージアムのレストラン&バー「パラボラ」のためにエドワード・バーバー&ジェイ・オズガビーがデザインしたテーブルランプが「ベルホップ」だ。2018年にフロスから商品化され、この夏さらに新色が加わった。
キノコのようにも見えるランプのデザインソースは、ホテルのフロントなどにあるベル。言われてみると丸みを帯びたシェードがベルに見えてくる。本体の直径は6cmと掴みやすくハンディなサイズ感で、最長24時間の点灯が可能。家の中はもちろん、テラスなどどこへでも持ち運びたくなる。4段階の調光が備わっているものの、光量を最大にしても一切眩しさのない優しい光。テーブルの上にキャンドルを灯したようなほんのりとした明かりは、空間に温かさと親密さを生み出すようだ。