【名作照明に恋して】Vol.03 空間に奥行きと豊かさを与える、アートなフロアランプ5選。

  • 文:佐藤早苗
  • 写真:岡村昌宏(CROSSOVER)
  • スタイリング:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨
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部屋全体を明るくするわけでも、手元を照らしてくれるわけでもない……。必ずしも用をなす照明とは言いがたいフロアランプ。しかしその余韻をもつ光が、空間に豊かさを与えてくれる。

すっとした立ち姿はときに彫刻的であり、オブジェとしての美しさがある。調光によってほんのりと優しい光で周囲を照らし、壁や天井、部屋のコーナーなどに反射させる間接照明となる。一つのシーリングライトで隅々まで均一に室内を照らすのではなく、小さな光のスポットが点在することで空間に奥行きが生まれ、ぐっと雰囲気のあるものになることに気づくはずだ。光、そして美しい佇まいをもつ5つのフロアランプを紹介しよう。


1. シンプルながら多彩な光は、半世紀を経ても色褪せない。

2. 機能的でジオメトリックな佇まいで、照明のいまを代表するフロアランプ

3. グレアフリーを追求して生まれた、美しい光の彫刻。

4. いまなお先進的な、空間にふわりと浮かぶ光のチューブ

5. 黄金の真鍮から溢れる明かりが、光と影のドラマをつくる。

シンプルながら多彩な光は、半世紀を経ても色褪せない。

カラクター「ドーモ フロア ランプ」(W32✕D64.5✕H150.5〜187cm)¥209,000(税込)/カッシーナ・イクスシー青山本店 TEL:03-5474-9001

「ボビーワゴン」で知られるイタリア人デザイナー、ジョエ・コロンボ。可動、可変、多機能に象徴されるように、最新の素材や技術を取り入れ「生活のための機械」をコンセプトに革新的なデザインを多数残した。そのコロンボがデザインした「ドーモ」が、1965年の発表から半世紀以上を経た2018年にデンマークのカラクターから復刻された。

「ドーモ」もまた、よく動く。ポールに沿ってライトの高さを変えられるのはもちろん、シェードは垂直方向に360度、アームは水平方向に360度回転するため、望む方向に光を届けることができる。一見するとミニマルだが、好みやシーンに応じて表情を変え、さまざまな使い方ができるのだ。いま見ても新鮮で現在のインテリアに違和感なく溶け込むデザインは、いかにコロンボが先進的であったかを物語る。

上下に可動するシェードは垂直方向に360度回転、さらにアームが水平方向に360度回転するため、光の方向を自在に操ることができる。ケーブルはポールに緩やかに巻きつけるとスマート。フロアランプのほかに「ドーモ テーブル ランプ」もある。

機能的でジオメトリックな佇まいで、照明のいまを代表するフロアランプ

フロス「キャプテンフリント」(W37.3✕シェードφ21✕台座φ32✕H153.7cm)¥247,500(税込)/日本フロス TEL:03-3582-1468

現在の照明デザインのトレンドを牽引するデザイナー、マイケル・アナスタシアデスが2015年にデザインしたフロアランプ「キャプテンフリント」。そのネーミングは、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの海洋冒険小説『宝島』に登場するフリント船長がオウムを肩に乗せている様子から取ったものだという。

すっと垂直に立つ真鍮のポール、そして円錐形のシェード。幾何学的で美しいデザインはアナスタシアデスならでは。シェードのついた水平アームは45度ずつ回転し、光をバウンドさせて空間を照らす間接照明、対象物に直接光をあてる直接照明のいずれにも使える。調光も10〜100%の間で細かく調整できるので、空間や用途に合った絶妙な光の演出が可能だ。ただそこにあるだけでインテリアとして成立する彫刻的な佇まいに加えて、使いやすさもしっかりと考えられている。光のいまをつくりだすデザイナーの力が遺憾なく発揮された新しき名品だ。

フット調光スイッチは50・100%とオンオフのほか、10〜100%の調整が可能。円錐形のシェードは水平アームを軸に45度ずつ、左に270度、右に45度まで回転する。ゴールドにホワイトマーブルのモデルのほか、色違いでブラックにブラックマーブルも。

グレアフリーを追求して生まれた、美しい光の彫刻。

ルイスポールセン「PH 4½-3½ グラスフロア」(φ33✕H130cm)¥ 210,100(税込)/ルイスポールセン ジャパン TEL:03-3586-5341

生涯に渡り1000種類以上のランプをデザインしたデンマークのデザイナー、ポール・ヘニングセン。ルイスポールセンで製造される3枚シェードの「PHランプ」は、機能的で美しい光を研究し続けた彼のデザインにおける一つの完成形といえる。重なるシェードはランプが発する光のグレアをなくし、かつ無駄なく活かすため、緻密な計算とロジックに基づき導き出された形だ。

シェードに用いられているのは対数螺旋という曲線。その起点に位置する光源からなだらかな光がシェード内に行き渡り、反射する拡散光と合わさりグレアと影をコントロールする仕組みだ。1926年当初のモデルは金属製シェードであったが、その後、光を上方にも届ける乳白ガラスのシェードが登場した。「PH」シリーズのランプからこぼれる温かな光には"人々の暮らしを豊かにしたい”というヘニングセンの思いが込められている。

3枚の乳白色のガラスシェードは内側をフロスト加工し、柔らかな光を生み出す。光源は対数螺旋の起点に位置し、それぞれのシェードが反射する光の角度を計算して生まれたフォルム。3枚シェードの「PH」シリーズは、ペンダントやテーブルランプもあり、サイズやカラーのバリエーションも多彩だ。

いまなお先進的な、空間にふわりと浮かぶ光のチューブ

クラシコン「チューブライト」(φ25✕H104cm)¥161,700(税込)/インターオフィス TEL:03-5771-7631

アイルランドで生まれ、パリで活躍したアイリーン・グレイが1927年に手がけた「チューブライト」。クロームメッキ仕上げのスチールフレームに直管型白熱電球を添えただけの極めてシンプルな構成だ。

蛍光灯が一般化する前の1920年代、建築の世界でフィラメントを使った筒状のライトが流行していたことを受け、「光るチューブだけを使ったフロアランプを設計することにした」とグレイは語っている。ドイツのクラシコンから発売される「チューブライト」の現行品は、光源を白熱灯からLEDに替え、寿命もより長く低エネルギーとなった。もちろんグレイが意図した発光するチューブが浮くように見える様は変わらず、柔らかな光があたりを照らす。ミニマルであり、エレガント。オブジェとしていつまでも眺めていたくなる美しさは、さすがだ。

足元のプッシュボタンスイッチを押してライトをオンにすると、ライトチューブの光を受けてクロームのボディも美しく輝く。

黄金の真鍮から溢れる明かりが、光と影のドラマをつくる。

ニューライトポタリー「ターズ」(φ7✕H17.1cm)¥110,000(税込)/ニューライトポタリー TEL:0742-31-5305

贅沢に真鍮の塊を削り出した重量感のある置型スポットライト「ターズ」。水筒のような小さいサイズながら、手に取ると真鍮のずっしりとした重みとひんやりとした感触が伝わってくる。手がけたのは、ライティングデザイナーの永冨裕幸と奈良千寿による照明ブランド「ニューライトポタリー」。インダストリアルなアプローチとクラフツマンシップを融合させ、素材そのものの質感や美しさを引き出すデザインを得意とする。9WのLEDを内蔵した「ターズ」も、やや先細りした円筒の首に斜めに切り込みを入れただけの極めてシンプルなデザインだ。

切り込みを入れた首が回転し、真上を照らすほか、45度の角度内であれば好みに応じた角度に回転させて照射することができる。輝く真鍮の筒から溢れる光は天井や壁をスポットで照らし、室内はもちろん、家具やオブジェに独特の美しい陰影を与える。そしてランプそのものもまた昼夜を分かたずキラリと輝き、オブジェのように佇む。

真鍮の筒から放たれるまばゆい光は、天井や壁にバウンスして温かく柔らかな間接照明に。底面についた調光スイッチで明るさの調整ができる。カラーはブラックも用意する。