リモートワークの推奨で自宅作業の時間が増える昨今、仕事を快適にしてくれるデスクランプに注目したい。不快なまぶしさ(グレア)のない目に優しい光はもちろん、場所に応じて最適な調光ができるなど、機能とデザインにこだわった5つのデスクランプを紹介する。LEDの普及で照明は省電力かつスマートに進化している。その革命はデスクランプも例外ではない。光源の進化でアップデートした名作から、多機能な最新照明まで。その選択肢はいずれも魅力的だ。
1. 一枚のスチール板から生まれる、彫刻的なフォルムと優しい光。
3. 永遠のスタンダード、自由自在に光を操るアーキテクトライト
一枚のスチール板から生まれる、彫刻的なフォルムと優しい光。
1930年、ジャン・プルーヴェはフランス北部のナンシーに新設される学生寮のために機能的な家具シリーズをデザインする。そこで「スタンダード」などとともに生まれたデスク用テーブルランプが「ランプ ド ビューロ」だ。スチール板の曲面が光を柔らかく反射し、机上を優しく照らす。
金属工芸家としてキャリアをスタートし、金属の扱いを徹底的に学ぶとともにアルミなどの新素材の使用にも積極的だったプルーヴェ。そうした経験を伴う彼のデザインは、機能を追求し工業生産されたものであってもどこか人間的な温もりを感じさせる。このランプにも普遍的な美しさが宿っているのを感じないだろうか。長く生産が途絶えたが2019年より本格的に復刻され、プルーヴェが選んだオリジナルの色調に基づいたディープブラック、ジャパニーズレッド、ミントの3色を展開する。アナログな雰囲気が漂うランプの優しい光で思わず学生気分に立ち返り、ノートにペンを走らせたくなる。
バウハウスの流れを汲む、機能美を備えた名作照明。
バウハウスで金属工房の主任を務めたクリスチャン・デルは、銀細工職人であり、デザイナーであった人物だ。彼がカイザー社のためにデザインした「6631 Luxus テーブルランプ」は、1936年の発表とともに同社の「カイザー・イデル」シリーズを代表するモデルとなる。
ベースとアームの接点、シェードの付け根の2か所が可動し、角度がスムーズに変わる機構を採用した。また硬質な素材ながら、曲線美をもつ大きなシェードで温かさや柔らかさを感じさせる。機能性と造形美を両立させるのは、銀製品を製造し、宝飾店も営んだデルの技量によるものだ。その質の高さでドイツのデザインを象徴する存在になったが、長らく生産は途絶えてしまった。それから半世紀以上を経て、当時のデザインや機能性をそのままに復刻したのがフリッツ・ハンセンだ。機能的で美しい照明はいま、再び世界中を明るく照らしだす。
永遠のスタンダード、自由自在に光を操るアーキテクトライト
1972年の発表以来、美しいフォルムと抜群の機能性で愛され続けるデスクランプの名品「ティツィオ」をデザインしたのはリチャード・サッパーだ。光源にケーブル不要のローボルトハロゲンランプを採用して、ベースとシェードの間をコードレスに。さらに2つのアーム下部に重りをつけ、シーソーのようにバランスをとるアームの構造で90〜180度まで滑らかに動き、止めたいところでぴたりと止まる。画期的な発想で自在に光を操る操作性を実現し、デスクランプの歴史における革命児となった。
現在はハロゲンランプに加え、低消費電力で調光可能なLEDモデルも登場。従来のハロゲンモデルは高温の光源部に触れないようハンドルが付いていたが、放熱の少ないLEDモデルはハンドルがなくなってすっきりとしたデザインに進化した。技術とともに進化する、真の名作照明だ。
ヤコブセンへのオマージュとともに、巧みに進化したデスクランプ
ネンドの佐藤オオキが手がけた「NJP テーブル」は、現在のワークスペースのあり方を考えたデスクライト。アルネ・ヤコブセンによるルイスポールセンのロングセラー「AJ テーブル」ライトをデザインのモチーフとする。直感的に使いこなすことができるシンプルな照明は、オフィスでも自宅でも活躍の場を選ばない。
佐藤はLEDを用いながら、過度に薄さやコンパクトさを追求せず、AJシリーズに範をとったシェードに優れた機能をこめた。上部に煙突のような穴をもつシェードは放熱の役目を果たしながら、デスクへの直接光とともに、室内に柔らかい間接光を放つ。またシェードの内側をマットホワイトに塗装し、グレアのない快適な光をつくりだしている。さらにはクリック感が心地よいボタン式スイッチをシェードに付け、50%・100%のシンプルな2段階の調光を行えるようにした。工夫はシェードのみならず、新たに開発したスプリングでスムーズなアームの動きも叶えた。名作をなぞりながら、時代に合わせてアップデートした懐かしくも新しいデスクライトだ。
最新のテクノロジーが可能にする、インテリジェントな照明。
新しい形状と技術で生活家電の既成概念を覆すダイソンは、照明においても独自路線を突き進む。「ライトサイクル デスクライト」は、正直どこから何を紹介していいかわからなくなるほど多機能で高機能だ。特筆すべきは、現在地の自然光をトラッキングし、時刻に応じて外の光に呼応した適切な光を作る点にある。そのためにダイソンは、日時とGPSに基づく独自のアルゴリズムを開発し、世界中のあらゆる場所における自然光の色温度と明るさを計算したという。
さらにスマートフォンのアプリを使って、シーンに応じた多彩なモードを選ぶことができる。温かみのある色の光で読書にも十分な明るさを保った「リラックスモード」、高輝度かつ自然光に非常に近い色の光で手元を鮮明に照らす「作業モード」、十分な明るさと周囲の自然光の色温度に合わせて調節された「学習モード」、集中力が必要な作業のために、より明るく、寒色の光を20分間集中的に照らす「ブーストモード」などから選べ、カスタムも可能だ。明るさや色温度の細かな調節など、本当にほしい光を実現する唯一無二のデスクライトである。