2020年5月、ロックダウン状態が既に1カ月半以上続くアメリカでは、美術館やアートギャラリーが扉を閉じ、コンテンツが続々とオンラインでの公開に移行している。とはいえデジタルプラットフォームの運営が困難なところも多く、「ロサンゼルス・タイムズ」紙では、現状が続けば3割以上の美術館やギャラリーが閉鎖したまま再開不能だと予測する。
「ギャラリープラットフォームLA」は、この緊急事態に対応すべく急遽、発足したオンライン共同ギャラリー。ギャラリスト、ジェフリー・ダイチの提案に賛同した大小さまざまな規模のギャラリー60軒が参加する。「ブラム&ポー」などを筆頭に数万人のフォロワーをもつ著名ギャラリーと、地域の小さなギャラリーとが新設の展示プラットフォームをシェアすることで、高いクオリティのもとで作品を紹介し、アート販売の機会を生み、また規模を問わずギャラリーを団結させていくことが狙いだ。ギャラリーのローンチは5月中旬を予定している。
このプラットフォームへの参加を最近、発表したギャラリー「ガゴシアン」は、同時に独自のサイトで「ドナルド・ジャッド」展を開催中だ。MoMA(ニューヨーク近代美術館)の「ジャッド」回顧展と並行して開催が予定されていたが、現在はオンラインで閲覧できる。サイトで見られる、合板を使った大型のインスタレーション作品(1980年)は、光と影がなす空間のダイナミズムが印象的で、ジャッドのキャリア中期における傑作。公開は実に39年ぶりだ。
このジャッドの作品に、今回のパンデミックのイメージが重なったのは偶然かもしれない。ニューヨークやロサンゼルスで新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が発表され、街がゴーストタウンのようにひっそりし始めた3月中旬。生活必需品や食料品の買い占めにより、営業を許可されている店からも商品が消えた。“からっぽの棚”現象は何日も続き、世界一の経済大国の消費者に、精神的にも大きな打撃を与えた。ジャッドがキュレーターや美術館に作品を縛られることを嫌い、作品が独り立ちすることを望んだのは有名だ。いまこの作品が再び公開されたのはアイロニーなのだろうか。