いま地球のためになにができるか、人気ファッションブランドの最新サステイナブル事情。<後編>

  • 写真:青木和也
  • 文:行方 淳

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いまファッションに求められる、サステイナビリティ。人気のブランドは、どのようにアイテムに落とし込んでいるのか。最新事情を追った。


ユニクロ──加工工程の水の使用量を、最大99%削減。

右の色落ちしたジーンズはレーザー加工の技術も取り入れている。洗いもオゾン式の洗濯機を使用するなど大幅に水の使用を削減した。各¥4,389(税込)/ともにユニクロ(ユニクロ TEL:0120-170-296)

ユニクロがLAに設立した開発施設、ジーンズイノベーションセンター。ここではデザインなどの研究開発に加え環境負荷軽減への取り組みも積極的だ。ジーンズづくりはその加工工程において多くの水を必要とするが、特殊な機器を駆使することでそれを解消。以前に比べ水量を最大99%程度削減に成功した。だからといってジーンズの品質に悪い影響はなく、むしろ完成度は上がっているほど。ユニクロがまたジーンズの世界にイノベーションを起こしている。


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ジーンズに関するすべての情報が集まるLAに設立された、ジーンズイノベーションセンター。最新の機器を揃え、デザインだけでなくその生産の仕組みづくりそのものの開発にも取り組んでいる。

ワッコワッコ──日々、廃棄されるエアバッグを再利用。

あえてAIRBAGをロゴプリント。ハット¥15,400(税込)/キジマタカユキ×ワッコワッコ リビジョン、バッグ¥8,800(税込)/ワッコワッコ リビジョン(ともにスティーブン アラン トーキョー TEL:03-5428-4747)

2016年に誕生した新進気鋭のバッグブランド「ワッコワッコ」。そのエコラインとして誕生したのが、「ワッコワッコ リビジョン」だ。本来廃棄される“端切れ”にフォーカスし有効活用することが基本コンセプトだが、今回は日々大量に焼却処分されるエアバッグに着目。軽量で丈夫な優れた素材であるそれをさまざまなプロダクトへと落とし込んでいる。命を守るはずだった素材が環境を破壊しては本末転倒。視点を変えることで完成した有意義なプロダクトだ。


強度の高さを有効活用。ハンティングスツール¥30,800(税込)/フィルザビル×ワッコワッコ リビジョン フォー スティーブン アラン(スティーブン アラン トーキョー)

ルーマー──廃棄されていた余剰品素材を、徹底活用。

横糸を浮かせた生地組織を使うことで柄がすっきり見えるよう工夫した座布団¥17,600(税込)、リネンとシルクをブレンドすることで違いを演出したラグ¥24,200(税込)/ともにルーマー(アルファ PR TEL:03-5413-3546)

低速で織り上げることで空気を含みながらテンションを保つ、歴史あるションヘル織機を使用。ふっくらした仕上がりになるのはそのためだ。一つひとつ、熟練した職人により織り上げられている。

生地を生産する過程で余る糸や布は通常であれば廃棄されてしまうが、それを集め、再構築して新たな価値をつくり出すのがルーマーの“リプロダクトコレクション”だ。余ったものとはいえ、もともと上質な素材を使っているため、そのグレードは申し分なし。しかもションヘル織機を用い、手織りに近い手法で織り上げられるため、仕上がりに特別感もある。いままで捨てられることが当たり前だったことのほうが信じられないほど、クオリティは高い。


ヴェジャ──農業生態系にも、寄与したものづくりを。

コットンからレザーまでラインアップが豊富。上から¥20,900、¥20,900、¥14,300、¥22,000、¥22,000(すべて税込)/すべてヴェジャ(シードコーポレーション TEL:03-6709-9662)

キャンバスにはオーガニックコットンを使用。ソールはアマゾンの天然ゴムが原料に使われ、ナイロンはペットボトルからの再生素材。すべてのコレクションにおいて、サステイナブルでアグロエコロジカル(農業生態系)な取り組みを追求するシューズブランドがヴェジャだ。こういった環境に対する真摯な取り組みは、目的ではなくあくまで手段。その上でデザイン性にも優れ機能性も担保した、本質的な価値を備えたプロダクトを追求し続けている。

ポロ ラルフ ローレン──1億7000万本のペットボトルをリサイクル

100%リサイクル可能。カラバリは全部で15色。各¥18,700(税込)/すべてポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン TEL:0120-3274-20)

リサイクルされたペットボトルからつくられる “アースポロ” 。このポロシャツを1枚つくるのに使用されるペットボトルは約12本。深刻な環境負荷となっているペットボトルの廃棄問題に少しでも役立つようにと、立ち上げられたプロジェクトだ。ちなみにポロ ラルフ ローレンは2025年までにこの取り組みを通じて1億7000万本のペットボトルをリサイクルすることを約束。シーズンを追うごとにカラーバリエーションも増え、買う楽しみも増している。


右袖のポロのロゴは、最初の「O(オー)」の部分が地球のマークになっている。地球環境に配慮したアイテムである証し。

グリーンのポロシャツを除いて、ポニーのロゴはすべてグリーン。エコサステイナブルを意識したデザイン。

テクスト──ジャングルの恩恵を受けた、コットンを使用。

繊維が短く切れやすいため、職人がつきっきりで織っている。ラフな見た目に反し、手触りはやわらか。ジャケット¥79,200(税込)/テクスト(パーキング TEL:03-6412-8217)

国土の約60%をジャングルが占めるペルー。そこで採れる独自の素材が、アマゾンジャングルコットンだ。繊維長は短いがやわらかく、コットンボールは大きく、油分をたっぷり含む。病気や害虫に強く他の作物と混作されるため、化学薬品を一切使用しないで育てられるのが特徴だ。自然な色みを活かして、染色を施さずに仕上げられており、総じて環境負荷が低い。栽培時に水を大量に使用する綿だけに、自然栽培による貢献度は高い。


ジャングルコットンが採れるアマゾンの源流域。

油分が多いのが特徴のアマゾンジャングルコットンを生地にしたのは、日本で100年以上の歴史をもつ工場だ。

クラス──リサイクルが難しいナイロンを再利用。

デニムジャケットは、紡績し直した糸をスペインから輸入し、ションヘル織機で織り上げたセルビッチデニムを使用。染め直しをしていないのも特徴だ。ナイロンジャケットは紡績工場から回収された製造廃棄物をナイロン繊維に再生したものを使用。左¥40,700(税込)、右¥59,400(税込)/ともにクラス(ウィリー TEL:03-5458-7200)

数年前から環境問題に寄与したものづくりを展開する同ブランド。今季もリサイクル素材を使ったデニムジャケットと再生ナイロンを使用したジャケットが登場した。デニムに使われているのは、古着や市場からあふれたデニムを粉砕し紡績し直した糸。過剰供給に対するアンチテーゼ的なアプローチがユニークだ。再生ナイロンは、ポリエステルよりリサイクルが難しいナイロンを2種類使用。大気と土壌の汚染軽減に大きく寄与している。


ベータ ポスト──所有するだけでなく、思考を促すプロダクト

左:大島紬の技術を活かしてつくられたバッグ。右:使用後のレジ袋を細くカットして編んだポーチ。左¥42,900(税込)、右¥19,800(税込)/ともにベータ ポスト(ベータ TEL:03-5942-4395)

「beta : 試用、実験的な」。「post : (1)掲示する、(2)次の」。このふたつのワードをつなぎ合わせたベータ ポストは、プロダクトを通して「観る人の思考を促すこと」がコンセプト。今季は、奄美大島の職人と共同で開発した「ゴミと伝統工芸品」を合わせたプロダクトを発表。回収したレジ袋に、国指定伝統的工芸品である「本場大島紬」の技術を応用した新素材を開発、製品へと落とし込んでいる。捨てられるものと守られるもの。その哲学的な対比が面白い。

ビニールを裂いてひも状にし、縦糸にシルクを織り込み生地を再生。もとの柄が透けて残るのも面白い。

こちらの記事は、2020年 03月15日号 Pen「TOKYO STYLE 2020」特集からの抜粋です