熱狂と歓声に包まれた、“レジェンド”ゴルチエによる最後のショーをパリから詳細レポート

  • 写真・文:海老原光宏

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パリの劇場シャトレ座で行われたジャンポール・ゴルチエ引退となる「ゴルチエ パリ」2020年春夏コレクションショー。オーケストラも従えるなど豪華に50年の幕を引いた。

ジャンポール・ゴルチエ自身のクリエイションとしては最後となる、オートクチュール「ゴルチエ パリ」2020年春夏コレクションが1月22日(日本時間1月23日)に発表された。パリの劇場シャトレ座を会場に熱狂と尊敬を集めた、ファッションショーとしては異例の1時間10分にもわたる大イベントだった。

今年、ファッション業界でのキャリア50周年を迎えたゴルチエ。節目の年に突然、自身の引退を発表(日本時間 1月19日)。ゴルチエ パリ 春夏ショーを最後に、デザインから身を引いてファッション業界から引退する旨を、ブランドのSNSアカウントにて投稿。ショーの後に50周年記念パーティーを行うことも添えた。

これもあってか、当日の会場にはピエール・エ・ジル、ジャン・バプティスト・モンディーノなどゴルチエのビジュアルを手がけてきたクリエイター、ドリス・ヴァン・ノッテン、イザベル・マランら親交のあるデザイナーをはじめ、多くのゲストが来場。エントランスにはインビテーションをもっていない人々も詰め掛け、どうにかゴルチエの最後を見届けよういう熱気に包まれていた。それは最盛期である80年代のゴルチエを感じさせるものであった。

ショーは過去50年のデザインを組み合わせ、彼のすべてを回顧できる「これぞジャンポール・ゴルチエ!」といった構成。墓地から始まる、まるでティム・バートン作品のような映像が流れ、幕が上がるとゴシックな黒一色のモデルが大勢佇む舞台が出現。ボーイ・ジョージが歌い始めると、モデルが徐々に動き初め、キャットウォークがスタートした。

1991年秋冬オートクチュールと2014年秋冬プレタポルテを組み合わせたようなボディスーツや、ネクタイを繋ぎ合わせキルトとしたメンズルックなど、ファンにはたまらない過去の名作が出てくる。

マリンボーダー、タキシード、男性のスカート、タトゥー、エスニック、デニム、コルセット、コーンブラ、ボーンなどシグネチャーデザインが続々と登場。途中ライブも挟み、さまざまなテイストが章仕立てでプレゼンテーションされる。それはファッションショーというより、ミュージカルや音楽ライブのようなシアトリカルな演出で、いまのゴルチエの興味・関心を感じさせた。

過去のコレクションを組み合わせたようなルックが登場。ファンへのサービスとも受け取れる。

フランスのオールスターが揃った、豪華なモデル陣。

エンディングの挨拶に姿を見せたジャンポール・ゴルチエ。駆けつけた報道陣の撮影班やモデルたちに胴上げをされるなど、パリの至宝デザイナーであることを実感させる。

ショーに登場したモデルは、タネル・ベドロシアンツ、ディータ・ヴォン・ティーズ、ロシー・ドゥ・パルマらゴルチエのミューズ、ココ・ロシャ、エヴァ・ハーツィゴヴァと、フランスで活躍するオールスターをキャスティング。彼らが現れるたび、観客からは歓声が沸き起こった。

最後は冒頭の黒一色と好対照をなすように、色とりどりのドレスルックが集まり、再びボーイ・ジョージが歌い始めエンディングへ。舞台奥の幕も上がり、バックステージを見せ、すべてのスタッフが一丸となってファッションレジェンドの花道を祝す。ゴルチエ本人が挨拶に出ると、観客はスタンディングオベーションで迎えた。そこには悲しみも感傷もなにもない。ただただハッピーに、ファッションレジェンドの50年の軌跡を祝した。重いテーマを秘めつつも常にファッションの楽しさを欠かさないコレクションをつくってきたゴルチエらしいハッピーエンドだ。

エンディングの光景は、プレタポルテ終了となった2015年春夏プレタポルテコレクションを思い出させるものだった。かの時もパリの劇場グランレックスを舞台として、盛大にプレタポルテの幕引きを祝った。もちろん今回と同様にスタンディングオベーション。英ウェブメディア『ザ・ビジネス・オブ・ファッション』のレビューには「Happy Ending」のコピーとともに、満面の笑みのゴルチエがトップ画像に掲載されていた。

この原稿を書いている時点(1月24日)で今後のゴルチエの去就は公開されていない。ブランドとしての「ゴルチエ パリ」と香水は残っていく。50周年でもまだ67歳のゴルチエが、次はなにを見せてくれるのか。もう彼自身がつくる新たな洋服を着ることができない寂しさを感じる一方、これからの活動への期待が高まる。

ゴルチエのミューズのひとり、バーレスクダンサーのディータ・ヴォン・ティーズ。ボンデージをベルトのモチーフとしたコルセットドレスを纏った。

会場となったシャトレ座は、1862年に建てられた劇場だ。2500もの座席数を備えているが、この日はもちろん満席。熱狂と歓声に渦巻いていた。

熱狂と歓声に包まれた、“レジェンド”ゴルチエによる最後のショーをパリから詳細レポート

  • 写真・文:海老原光宏

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