即位祝賀パレードで注目が集まる、トヨタのフラッグシップモデル「センチュリー」とはどんなクルマか?

  • 文:鈴木真人
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トヨタの最高級車、センチュリー。神威(かむい)エターナルブラック仕様。

「いつかはクラウン」という有名なフレーズがある。それでうっかり、トヨタの最高級車はクラウンだと思ってしまいがちだが、間違いだ。レクサスLSでもない。トヨタがつくる高級車ではあるが、別ブランドである。トヨタのフラッグシップモデルは、半世紀以上前からセンチュリーと決まっている。

11月10日に延期された即位祝賀パレードで天皇皇后両陛下が乗車するのがセンチュリーのオープンカーだ。もちろん、特別仕様である。そもそも市販モデルにオープン仕様はない。約8000万円で内閣府が購入したという。とてもクルマとは思えない価格だが、市販モデルでも2000万円近いからこれでもお得なプライスなのかもしれない。

初めて登場したのは1967年。65年デビューの日産プレジデントに対抗する意味合いがあった。トヨタの始祖である豊田佐吉翁が誕生してから100年ということで、センチュリーの名が与えられた。初めてモデルチェンジしたのは97年。30年の長きにわたってつくり続けられたわけで、日本車としては最長寿記録になる。

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後部座席には細かく調整ができるパワーシートと収納式のオットマンが装備されている。

七宝文様を配置したフロントグリル。

3代目となる現行モデルは2018年6月に登場。今回のパレードで使われるクルマもこれがベースになっている。初代は3リッターV8、2代目は5リッターV12エンジンを搭載していたが、時代の流れに合わせてセンチュリーもハイブリッド車になった。最高出力381ps、最大トルク510Nmの5リッターV8エンジンに、224psの電動モーターとニッケル水素バッテリーを組み合わせている。先代レクサスLS600hのものとほぼ同じだ。

エネルギーユニットは燃費とパワーを両立させたモダンなシステムにアップデートされたが、変わらないのはエクステリアデザインだ。全長4980mm、全幅1890mmだった初代から5335mm、1930mmへとサイズは拡大したが、プロポーションはほぼ同じ。立派なグリルを持ち、凹凸の少ない端正なボディラインが重厚な美しさを感じさせる。キャビン後部の両側にあるCピラーが太いのは、このクルマは後部座席が最重要だということを示している。

センチュリーは、純然たるショーファーカーなのだ。原則として、オーナーは運転しない。後部座席に座り、快適な移動を楽しむ。ロールスロイスやベントレーですらドライバーズカーとして使われることが多くなっているのに、センチュリーはほぼ100%運転手付きで乗られている。



神威エターナルブラックには、7層の塗装に漆塗りの水研ぎ技法が3度も施されている。

本杢のドアハンドル。

おもてなしのクルマだから、内外装の設えに妥協はない。ボディには7層の塗装に漆塗り技法の水研ぎを3度施して、奥深い艶と鏡のような輝きを追求した。今回のオープンカーは、神威(かむい)と名付けられたエターナルブラックに塗られている。インテリアには正目材の本杢が使われていて、和の雰囲気を醸し出す。

和テイストを強調していることには意味がある。VIPの乗り物であるというだけでなく、特別な役割が求められているのだ。御料車、つまり天皇と皇族が乗車するための特別なクルマとしての用途が期待されている。かつてはロールスロイスやキャデラックなどが使われていたが、1967年に採用されたのが日産プリンスロイヤルだった。このクルマの老朽化が進み、2006年から代わって採用されているのが、センチュリーをベースに仕立てられたセンチュリーロイヤルなのだ。

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平成のパレードはロールス・ロイス・コーニッシュIIIだったが、今回センチュリーのオープンカーが使われるのは自然な流れだった。最新の技術を惜しみなく使い、匠の技で贅を尽くした唯一無二のモデルなのだ。日本のプライドが込められた勇姿は、即位祝賀パレードに華を添えるだろう。