京都・東山に誕生したレストラン「ルーラ」が、町家を舞台に世界へと発信するカルチャーとは?

  • 写真:内藤貞保
  • 文:小長谷奈都子

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料理10品とドリンクペアリング5種のコースより。「天然スズキ、白アスパラガスとキャビア」は、新鮮なスズキの半身をキルンの熾火(おきび)で、皮はパリッと香ばしく、身はふっくら焼き上げ、白アスパラガスの塩漬けのソースと、キルンで焼いた丹波黒枝豆を添えたもの。写真右手はペアリングの日本酒、島根・王録酒造のにごり酒「渓」。木の器は北海道の木工作家、内田悠の作品。※コース価格は¥21,240(税、サ込)。2019年10月1日より、現在のコースに食前酒と食後酒が加わったペアリングコースに価格改定予定。

いま京都で最も話題のレストランといえば、間違いなく2019年7月9日にオープンしたばかりの「ルーラ」です。オーナーは、シェフのジェイカブ・キア、ゼネラルマネージャーの宮下拓己、ミクソロジストの堺部雄介の3名。世界各地を渡り歩き、それぞれキャリアを積んできた彼らが、ニュージーランドのレストランで出会い、京都から世界に挑戦したいと、この店を立ち上げました。

「京都を選んだ理由は、大原など旬の食材を身近に感じられる環境と、伝統工芸の職人さんが多く、カルチャーを発信する際にウソがなく伝えられる場所だと思ったからです」と宮下は語ります。店舗は、築130年ほどの町家をリノベーションした一軒家。梁や柱はそのままに、町家の雰囲気を残しながら、モダンであたたかみのある空間に仕上げています。

店の核となる料理は、アメリカと日本にルーツをもち、コペンハーゲンの「ノーマ」でも研鑽を積んだキアがつくり上げる独創的なもの。大原の旬の野菜やその日港に揚がった新鮮な魚介類など、すべて自分たちで産地を訪れて厳選した素材を、キルン(窯)とピザ窯という2種の薪火を使い分けて調理し、発酵や燻製などで風味や奥行きを添えています。それぞれの皿は驚くほど手間暇をかけられており、緻密に計算されていながら、自由で伸びやか。素材の旨みや味わいをダイレクトに感じられます。汲み上げ湯葉に発酵トマトの冷製スープを合わせたり、キルンで丸焼きした賀茂茄子にヨーグルトとコリアンダーのソースが添えられたりと、京都定番の素材への独自のアプローチも新鮮です。

左から、ゼネラルマネジャーの宮下、シェフのキア、ミクソロジストの堺部。宮下と堺部は28歳、キアは37歳という若いオーナー陣。「各分野のプロフェッショナルが集まっているのがルーラの強み」と話します。店名は、「LURRA」はバスク語で地球の意、「°」は地球の周りを回る月を表し、世界に唯一のルーラの座標を示しているそう。

オープンキッチンを囲むL字カウンターに12席。カウンターや家具は、京都・北白川でオリジナル家具や北欧家具を扱う「アリア」にオーダー。奥の庭には、3人のオーナーに因んで3種の紅葉が植えられています。

イチゴや清水白桃の塩漬け、ローズヒップのピクルスなど、 2階の発酵室&セラーにずらりと並ぶ発酵食品の数々は、ルーラの料理に奥行きを添える重要なアイテムです。

ノーマで研鑽を積んだシェフによる、 薪火を使った独創的な料理。

定番メニューの一品。季節ごとに具材を変えながら締めに登場する「焼きおにぎり茶漬け」。キルンで1日燻した穴子を佃煮にし、木の芽を忍ばせてあります。穴子の頭や骨から取った出汁に、カツオをたっぷり加えた旨みたっぷりの出汁が、穴子の薫香や木の芽の香りと溶け合って美味。アルコールのペアリングは、木の芽と相性がいいホップ感が特徴の京都醸造のクラフトビール「一意専心」。漆の器は輪島塗の老舗・輪島キリモトの8代目の作。

コースは前菜3品と、ドリンクペアリングがつく5品、デザート2品の計10皿。ペアリングを担当するのは堺部と、東京の「マルタ」からドリンクプロデューサーとして迎えた外山博之。アルコールはワインや日本酒、ジン、ビールなどをラインナップ。ノンアルコールもリンゴをシャンパン酵母で発酵させたシャンパンのようなジュースや、柚子を発酵させて日本茶やアップルミント、コリアンダーを合わせたカクテルなど、料理や食材に寄り添うように一杯一杯完成されているのが特徴です。

揺らめく炎に薪の爆ぜる音、窯から漂ってくる食材の芳しい香り、スタッフたちの流れるようなコンビネーションと和気藹々としたムード……。五感を刺激し、ライブ感たっぷりに過ぎてゆく約3時間は、新しい食体験への誘いです。「ブームでなく、カルチャーをつくる」「ここでの体験を通して、日本や京都の伝統や文化、季節を感じてほしい」。明確なコンセプトのもと始動したプロジェクトは、早くも訪れる人々を魅了しているようです。

ガスは使わず、火はケルンとピザ窯のみという原始的な調理法で、旬の素材の味わいを最大限に引き出します。ケルンには桜の薪、ピザ窯にはナラの薪と使い分けているそうです。

食後のデザートは「irori(イロリ)」と呼ばれるセンの木のテーブルで。ゲスト同士の交流や時間の共有もまた、カルチャーの発信地としてルーラが大切にする要素のひとつです。

器やカトラリーなどはすべて日本の手仕事の品。愛知・常滑焼の大澤哲哉、京都・川端七条の「鹿角刀」など、友人アーティストや偶然の出合い、SNSでの発見など、さまざまな縁で集まってきたものばかりです。

ルーラ
LURRA°
京都市東山区石泉院町396
TEL:050-3196-1433
営業時間:17時30分〜23時30分
(17時30分からと20時30分からの一斉スタートのみ)
定休日:日、月
www.lurrakyoto.com

※HPより要予約

京都・東山に誕生したレストラン「ルーラ」が、町家を舞台に世界へと発信するカルチャーとは?

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