坂茂建築と現代アートが融合した隠れ家ホテル、「ししいわハウス」が軽井沢に誕生。

  • 文:立田敦子

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木材がふんだんに使用された「ししいわハウス」館内。写真は国内最大級の木枠ガラスの大扉が印象的な「ライブラリー」。通常のロビーはなく、この場所でチェックインを行う。その名の通り、蔵書を読みくつろぐことも可能。

避暑地、あるいは永住の地として再び注目されている軽井沢。中軽井沢駅から2.5kmほど車で走った、別荘地としても人気のある千ヶ滝エリアに、建築とアートが融合したユニークな隠れ家ホテル「ししいわハウス」がオープンしました。

設計を手がけたのは、プリツカー賞を受賞し日本を代表する建築家のひとりである坂茂(ばんしげる)氏。「このプロジェクトでは、ホテルの美しいロケーションにふさわしい、独自のデザイン工法を生み出したいと思いました。ここにしかない特別な雰囲気を創造すべく、建築デザインからインテリアに至るまで、すべて綿密に計画しました。客室内には開放感あふれるスペースを生み出し、パブリック・エリアからは庭の美しい眺めを楽しみ、屋外へも簡単にアクセスできるようにしています。温もりのある雰囲気で統一感を生み出すために、ホテル主要部の素材には木材を選びました」と語ってくれました。

既存の森の木々に沿うようにデザインされた曲線状の形状が印象的な木造2階建ての建物は、周囲の自然と調和し、ひっそりと佇んでいます。紙管などユニークな素材を開発、使用することで知られる坂氏ですが、これまでのホテル建築には使用されたことのない木造パネル工法を使用するなど、イノベーティブな建築は彼の真骨頂といえるでしょう。

館内には、シンガポールの実業家であるオーナー、フェイ・ホアン氏の所有するアートが飾られています。「具体美術」のパイオニアである吉原治良を始め、ギュンター・フェルク、キム・チャンギョル、杉本博司、元永定正など坂建築に調和するように厳選された11作品の原画が、パブリックスペースのみならず、客室にもさり気なく展示されています。美術館やギャラリーで鑑賞するのとはひと味違うアート体験は、刺激的なリゾート滞在を約束します。

「ライブラリー」と「グランド・ルーム」をつなぐ中庭のウッドデッキ。天候のいい季節にはここでお茶や朝食もとれる。

既存の木々を活かすべく曲線を描いた木造2階建ての建物。よく見ると木製パネルの間にタイルが見えるが、内側は浴室。室内と外壁の素材が揃えられているのも特徴。

設計は、プリツカー賞受賞の国際的建築家である坂茂氏が担当。被災地支援の活動などでも知られるが、紙を建造物に使用するなど素材への飽くなきチャレンジが、このホテルにも活かされている。

「ソーシャル・ホスピタリティ」を具現化した、新しいホテルのスタイル

庭の自然が最も美しく見えるように設計されている客室。ほとんどの部屋がテラス付きで、外界とつながるように計算されている。ひのき風呂があるこの部屋はリピーターも多い。

3〜4部屋からなるクラスターには、それぞれリビングルームとキチネットが設けられている。壁にかかっているのは鷲見康夫の『MAGI 913』

ししいわハウスがユニークな点は、「ソーシャル・ホスピタリティ」の概念を取り入れ、プライベート、セミプライベート、パブリックという3つのフェーズに分けた、コミュニケーションの提案にあります。

10ある客室は、3〜4室ずつ3つのクラスター(集まり、集合)に分かれていて、それぞれにミニキッチン付きのリビングルームを共用しています。そのリビングルームが、全館のパブリック・スペースである「グランド・ルーム」に繋がっているという構造です。

家族や友人たち、あるいはたまたま居合わせた宿泊客と各クラスターのリビングルームの空間をシェアすることによって、新たなるつながりを見いだせるというユニークな提案。実際に滞在すると、通常のホテルにもコテージタイプのヴィラにもない、プライベートを守りながらも親密な空間に、味わったことのない心地よさを感じます。

すべてのゲストのリビング・ダイニングルームとして機能する「グランド・ルーム」。事前に予約すればシェフを呼んで、オリジナルの「ポップアップ・ダイナー」として利用することも可能。

中庭から観た「グランド・ルーム」。温かい季節は扉を開け放して、より開放的な空間に。

こだわりの家具やアメニティが象徴する正しい「洗練」と「豊かさ」。

「ししいわハウスは、都会の喧騒から距離を置いたロケーションで、知的創造の建築空間を提供したいという思いから誕生しました。この隠れ家的ブティック・リゾートは、訪れるゲストがエネルギーを取り戻し、新たなひらめきを生み出せるような場所になることを目指しています」とフェイ・ホアン氏は語ります。
軽井沢に魅せられ、10年以上前からことあるごとに家族で通っていたというホアン氏ですが、軽井沢という極めて洗練されたリゾート地ならではの滞在を堪能できるよう、さまざまな配慮がなされています。
ほとんどの家具だけでなく、アメニティ・カートやライティング・デスク状のペーパーホルダーも坂氏によってデザインされたもの。エコロジーにも意識的で、部屋にはペットボトルのミネラル・ウォーターを置かず、木村硝子製のカラフとグラスが置かれています。
ソープやシャンプーは、世界で初めて節水を呼びかけるために生まれたドイツ発のエコ・コスメ「STOP THE WATER WHILE USING ME!」、リネンやバスローブは世界の高級ホテルで使用されている「Ploh」、ベットマットはシモンズと、こだわりぬいた環境づくりによって、上質な滞在が約束されています。
別荘ともホテルとも違う、新しいスタイルは、今後のリゾートホテルのあり方に一石を投じるでしょう。

吹き抜けの「ライブラリー」には、オーナーのウィスキー・コレクションも。今はなき「軽井沢蒸留所」で作られた幻のウィスキー「軽井沢」なども鎮座している。

バスローブやタオル、リネン類は、世界の高級ホテルなどでも使用されているシンガポール「Ploh」製。

通りから観たファサードは、「ライブラリー」の吹き抜けが印象的。自然の木々に囲まれ季節ごとに違った顔を見せる。

ししいわハウス

住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-646
TEL:080-7691-6020
全10室  1室¥27,216〜(2名様でご利用の場合の1名様料金/税・サービス料込み)
詳細や予約については下記の公式サイトからお問い合わせください。

公式サイト:www.shishiiwahouse.jp


坂茂建築と現代アートが融合した隠れ家ホテル、「ししいわハウス」が軽井沢に誕生。

  • 文:立田敦子

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