【2019年に飛躍するライジングスター10組】vol.3 新鮮な表現で映画・写真・詩の世界を押し広げる、女性アーティスト4名。

  • 文:柴 那典

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現在進行形で新しい表現が生まれるカルチャーの世界。2018年の活動を糧に、さらなるステップアップが期待されるクリエイターを紹介します。


思春期の少女の空気感を描く、初の長編がヒット
枝 優花/映画監督

●1994年、群馬県生まれ。映画監督・フォトグラファーとして活動。2017年に制作した映画『少女邂逅』をはじめ、キリンジやSTU48、indigo la EndなどのMVや写真を手がけている。

学生時代に制作した『さよならスピカ』『美味しく、腐る。』が松居大悟監督や三浦大輔監督に絶賛された枝優花。その後、クラウドファンディングで資金を集め、2017年に初の長編映画『少女邂逅』を監督しました。
危ういバランスで生きる少女たちを描いた本作は、音楽×映画の祭典「ムージック ラボ2017」で観客賞を受賞するやいなや、18年3月の第42回香港国際映画祭、6月の第21回上海国際映画祭にインディーズ映画としては異例の正式出品。同じく6月から日本全国で公開されると、こちらも異例の再延長を重ね、9週間にわたるロングランを記録。さらに11月にはバルセロナ・アジア映画祭で最優秀監督賞を受賞したばかりです。
2019年新春公開予定の、山戸結希監督プロデュースによるオムニバス映画企画『21世紀の女の子』にも参加する枝。次回作への期待が高まります。

『少女邂逅』監督/枝 優花 出演/保紫萌香、モトーラ世理奈ほか 2017年 日本映画 1時間41分

言葉にできない感情を、スクリーンで表現する。
津野 愛/映画監督

●1987年、神奈川県生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。2014年から是枝裕和監督主宰の制作者集団「分福」にて活動中。高橋優のMV『さくらのうた』などを手がける。

是枝裕和監督のもとでさまざまな映像作品に携わり、津野愛は着実に力を磨いてきた。そして、2018年11月から公開中のオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』内の一編『DATA』で、ついに映画監督デビューを果たしたばかり。本作の総合監修を務める是枝監督が認めた若き映画監督5名のひとりに、津野が選ばれたというわけなのです。
10年後の日本を舞台とした『DATA』は、杉咲花演じる女子高生が亡き母のデジタルデータを手に入れ、生前の母に疑惑を抱くというストーリー。過去のデータによって揺らぐ少女の繊細な感情を、巧みに見せる手法は見事です。映画という形にとらわれず、言葉にできない微妙な感情を映像で表現していきたいと語る津野。次なる作品ではどのような「揺らぎ」を見せるのでしょうか。

『十年 Ten Years Japan』監督/津野 愛ほか 出演/杉咲 花、國村 隼、太賀ほか 2018年 日本映画 1時間39分

あの日写した青春が、大人の目にも焼き付く。
石田真澄 /フォトグラファー

●1998年、埼玉県生まれ。2017年5月に表参道「ロケット」で初個展『GINGER ALE』を開催。18年2月に初作品集『light years ー光年ー』を上梓した。ファッション誌などで活躍。

中高一貫の女子校時代、ポケットにフィルムカメラを入れて、友人たちとの日常を撮影していた石田真澄。在学中に写真家としての才能を見出された彼女は、大学進学後の2017年に開催した個展で自身の存在をより印象づけ、18年2月に初作品集『light years ─光年─』を刊行。いつかは終わってしまう高校生活の煌めく時間を記憶に留めておきたいという、切ない気持ちを込めて撮られたまばゆい写真は、同年代はもちろん、大人も含めた多くの人々の目と心に焼き付きました。
18年1月に発売されたズッカのブランドムックや、7月から公開されている大塚製薬カロリーメイトの広告「部活メイト」のフォトグラファーに起用されるなど、広告や雑誌などにも活動の場を広げている石田。さらなるフィールドでの活躍が最も楽しみな若手フォトグラファーのひとりです。

『light years ―光年―』石田真澄 写真 TISSUE Inc. ¥4,320(税込)

言葉や視覚で打ち出す、彼女の知られざる一面。
白濱イズミ(ラブリ)/アーティスト

●1989年、愛媛県生まれ。2015年に写真詩集『愛は愛に愛で愛を』(宝島社)、18年、『私が私のことを明日少しだけ、好きになれる101のこと』(ミライカナイ)を上梓。

モデルとしてメディアで活躍する一方で、自身の中から生まれる言葉を写真詩集や絵本、エッセイの形で表現し、その瑞々しい感性が女性を中心にさまざまな世代の共感を呼んでいるラブリ。
2018年11月、彼女は東京・神宮前の「360°ギャラリー」で、本名の白濱イズミをアーティスト名義とし、初の個展『言葉の記憶』を開催しました。同展では、曖昧で不確かな記憶や感情が言葉という形になる瞬間を、彼女の朗読に加え、ギャラリーの空間や映像などを活かしたインスタレーションで体感できる場となりました。
18年10月には歌手として『熱サヲ忘レテ』をリリース。形や手法にとらわれず表現の幅を広げていく白濱にとって、今年は大きな変化の年となったに違いありません。19年にはどんな表現が見られるのか、予想もつかないのがまた楽しい。

『言葉の記憶』展 2018年 360°ギャラリーでのインスタレーション


…以上、「小袋成彬、あいみょん、ラブリほか、来年の飛躍に期待が集まるライジングスター10組。」でした。こちらの記事は、2018年Pen12/15号「今年最も輝いた表現者たちの軌跡 クリエイター・アワード2018」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから