「いのち」の大切さが響く、いわさきちひろと長島有里枝の特別展。

  • 文:はろるど
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いわさきちひろ『箱に入った少女』(『あかちゃんのくるひ』至光社より)1969年 赤ちゃんが生まれ、姉になった幼い主人公の揺れ動く心を、淡い色彩で描いた作品。長島有里枝は約40年前にちひろが描いたこの絵本と出合いました。

いわさきちひろの生誕100周年に当たる2018年。「Life」をテーマにちひろとコラボレートする企画展が開催されてきました。去る11月から『作家で、母で つくる そだてる 長島有里枝』がスタート。生誕100年記念「Life展」プロジェクトのフィナーレを飾ります。

家族や友人などを被写体としてきた写真家、長島有里枝。いわさきちひろとは家事や子育てなど、女性が仕事を続ける上での困難となりうる経験を乗り越え、アーティストであり続けているという共通点がありました。長島はちひろの「わたしは無意識だったけれど、制約のないイラストを頼まれるとその中にいつも自分の子どもを描いていました」という言葉に励まされたそうです。
展覧会は4つの展示室で構成。展示室1・2は各々の作品を個展形式で見せ、それぞれの日記から抜き出された言葉も紹介しています。長島の展示室は、これまで発表を控えていた息子の写真を中心に構成されました。展示室3は、長島の選んだちひろの素描と、長島が『家庭について/about home』(2016年)から選んだ写真を並べて公開。ふたりの作家が見た家庭の光景が響き合います。展示室4は、第二次世界大戦中に日本の女性が制作した「千人針」をテーマとした長島のインスタレーションとともに、ちひろがベトナム戦争のゲリラ兵士の母と、帰りを待つ子を描いた『母さんはおるす』の絵を展示。千人針を縫う女性の顔と手元をとらえたポラロイド写真が展示され、平和の大切さがひしひしと伝わります。

「絵はフィクションで、写真はノンフィクションと思われがちだが、セレクトや構成でストーリーを生むという意味で写真もフィクション」と語る長島。長島とちひろの、時代や表現方法を超えた対話を通して、この展覧会は私たちに語りかけてきます。「いのち」の重みを感じながら、静かに味わいたい展覧会です。

長島有里枝『from the series “5 comes after 6 “』2014年 ©︎Yurie Nagashima 長島が息子との日々を写した写真。

いわさきちひろ『はだかんぼ』(『おふろでちゃぷちゃぷ』童心社より)1970年 児童文学作家の松谷みよ子が文章を手がけ、ちひろが絵を描いた「松谷みよ子 あかちゃんの本」シリーズの作品。なにげない動作が長島の『from the series “5 comes after 6 “』と重なります。

長島有里枝『千人針プロジェクト』の展示風景。戦中に千人針に参加した女性へのインタビューを収めた映像も上映(映像:所要1時間24分)。「戦争はダメ」との言葉が胸に響きます。photo: Keizo KIOKU

『いわさきちひろ生誕100年「Life展」 作家で、母で つくる そだてる 長島有里枝』

開催期間:2018年11月3日(土・祝)~2019年1月31日(木)
開催場所:ちひろ美術館・東京
東京都練馬区下石神井4-7-2
TEL:03-3995-0612
開館時間:10時~17時 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(祝休日は開館、翌平日休館)、2018年12月28日~2019年1月1日
入場料:一般¥800(税込)
https://chihiro.jp/tokyo/
https://100.chihiro.jp/exhibitions/life/180