爽やかな秋晴れという常套句がこれほどふさわしい天気は、1年のうちに数日しかないでしょう。2018年10月13日、長野県白馬村は素晴らしい青空に恵まれました。ヨーロッパの景色のように感じるのは、北アルプスの山並みを望んでいることともうひとつ、新旧様々なランドローバー車が500台近くも集まったからです。
「ランドローバー」というモデルが初めて世間の目にふれたのは、1948年4月30日のアムステルダム・モーターショーでした。本国イギリスをはじめ、世界中で70周年記念イベントが開かれましたが、この秋、日本でも白馬村のスキー場で“70歳のお誕生会”が開かれたのです。1台でも存在感が大きいランドローバー車ですから、500台も集まる光景は壮観です。
ここで、ランドローバーの歴史について簡単に振り返りたいと思います。1948年にデビューしたランドローバーは、その後、「ディフェンダー」と名前を変えて2016年まで生産されました。
1970年には、よりラグジュアリーな「レンジローバー」が登場します。そして1989年には少し手頃な価格の「ディスカバリー」が加わり、ランドローバーのファン層を広げました。
つまり、ディフェンダー、レンジローバー、ディスカバリーという3つのラインで、ランドローバーというブランドは構成されているのです。
会場を見渡したところ、3つのラインはどれかに偏るということはなく、うまい具合にバラけていると感じました。意外だったのは、予想よりも古い個体が多かったこと。確認できた中では68年型のランドローバー・シリーズⅡAが最も古いモデルで、ほかにも“クラシック・レンジ”と呼ばれる初代レンジローバーもちらほらと見かけました。
ちょっと古いモデルにしろ最新モデルにしろ、車両は手入れが行き届いていて、オーナーの方が大事に乗っていることが伝わってきます。
60年代のモデルも、元気にオフロードを走行します。
以前のランドローバーの広告には、「“Go Anywhere”Veichele」というフレーズが使われていました。SUVという言葉が生まれるはるか昔から、どこにでも行けることをウリにしていたのです。そして70年間、一貫して四輪駆動車をつくり続けてきた、世にも珍しいSUV専業メーカーなのです。
そんな背景をもつブランドですから、ちょっと古いモデルでも飾って眺めるだけではオーナーたちは満足できません。普段は走ることができない、スキー場の未舗装路を走るゲレンデ試乗では、前出の68年型シリーズⅡAが元気に隊列を引っ張っていました。
ほかにも、インストラクターがドライブするランドローバー車の助手席で未舗装路のハイスピード走行を体験するオフロード・タクシーや、高さ5m、最大傾斜43度の急坂を体験するツインテラポッドなど、内に秘めたポテンシャルを体感する、エクスペリエンス系のプログラムが目白押しです。
イベントの掉尾を飾ったのが、460台が参加したパレード走行。ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長が乗るオレンジ色の「レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル」が先導し、新旧のランドローバー車が白馬村を走ります。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもので、夕陽を受けたランドローバー車が長い影を落とす時間帯になってしまいました。オーナーのみなさんの誇らしげな笑顔、そして手入れの行き届いた車両を見ながら、参加車両の多くが80周年イベントにも姿を見せるだろうと確信しました。