巨大市場への近道は香港にあり! 「オニツカタイガー」再生の立役者、尾山基会長CEOにその道のりを聞きました。

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:佐野慎悟

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この夏、アシックスは「オニツカタイガー」ブランドの直営店「オニツカタイガーファッションウォークフラッグシップストア」を、香港におけるファッションシーンの中心地であるコーズウェイベイにオープンしました。日本にある旗艦店と同様“古今東西”をコンセプトに、ヴィンテージ感と未来感、東洋と西洋という異なる要素をミックスさせたこのショップは、中華圏における「オニツカタイガー」ブランド初の旗艦店です。

1949年に日本で創業。その後、世界のランニングシューズ黎明期にトップブランドとして君臨した「オニツカタイガー」は、社名を「アシックス」に変更した77年を機に、一度その役割を終えました。新たに誕生した「アシックス」ブランドは、先進性と革新性を追求しながらスポーツシーンで躍進を続けましたが、着々と力をつけて巨大化した海外ブランドとのマーケティング競争のなかで、ブランドネームの世界的な認知拡大に苦戦したのです。そんな状況のなかで、2002年に世界への突破口を切り開いたのが、自社のヘリテージである「オニツカタイガー」ブランドの復活劇でした。その立役者といえるのが、当時ヨーロッパ法人の社長を務めていた、現「アシックス」会長CEOの尾山基氏。香港旗艦店のオープニングに姿を表した尾山氏に、「オニツカタイガー」再生の軌跡を聞きました。

尾山基●1951年、石川県生まれ。総合商社を経て82年にアシックス入社。マーケティング統括部長、ヨーロッパ法人社長などを歴任したのち、2008年に代表取締役社長に就任。11年、CEOを兼任。17年、代表取締役会長CEOに就任。

「オニツカタイガー復刻の構想は、90年台初頭から常に胸の内にありました。しかし当時革靴を担当していた私が、パフォーマンスシューズのアイコンである“ストライプ”をライフスタイルシューズで扱うことが社内的に難しかったこともあり、実際にそのアイデアを形にするまでに、頭のなかで何度もシミュレーションを繰り返してブラッシュアップしていました」

2000年にヨーロッパへと赴任した尾山氏は、現地でレトロなスニーカーに対する新しい需要の波を体感し、満を辞して「オニツカタイガー」ブランドの復刻を実現させました。尾山氏が綿密に構想したブランディング計画の甲斐もあり、「オニツカタイガー」のスニーカーは、すぐさまヨーロッパやアメリカのファッション感度の高い消費者に受け入れられると同時に、日本やアジアの国々でも大きなブームを巻き起こしたのです。

「今回の香港での出店は、世界におけるブランドの存在感を、さらに強固なものへと導いてくれることでしょう。香港には中国本土はじめ、アジアやヨーロッパから年間約6,000万人の来訪者が集まってきます。中国本土の主要都市と比べても、香港に訪れる人々は文化的により洗練されていて、ファッションに対する意識も高い。アジア全体への情報発信力を考えても、香港という土地のポテンシャルは計り知れません」

かつて世界で猛威を振るった日本の虎を、25年間の眠りから鮮やかに呼び覚ました尾山氏は、東西の文化が交錯する香港を足がかりに、目前に広がる巨大なマーケットを虎視眈々と狙っています。

香港ファッションシーンの中心地、コーズウェイベイの目抜き通りにオープンした「オニツカタイガーファッションウォークフラッグシップストア」。定番のシューズ、ウェア、アクセサリーに加え、「ニッポンメイド」シリーズを常時コーナー展開するアジア唯一の旗艦店です。

オニツカタイガーファッションウォークフラッグシップストア
住所:Shop A&C, G/F Vancouver Mansion, 6 Kingston Street, Causeway Bay
営業時間:11時~22時
不定休
www.onitsukatiger.com/jp/ja-jp