粘土ではなくチョコレートでつくる!? 奇才ショコラティエの彫刻の世界へ。

  • 写真:江森康之
  • 文:Pen編集部

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パトリック・ロジェの彫刻展『TRAVELS TREVEL(LER)』会場にて。作品『ライクアバージン』の隣に立つロジェ。

21_21デザインサイトで開催中の彫刻展『TRAVELS TREVEL(LER)』が話題です。宙に一筆書きしたような人の姿、金属の卵のような形状で表された顔……生命力あふれる作品の創造主は、パトリック・ロジェ。M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)を30歳という若さで授与され、日本でも大人気のショコラティエ、その人です。驚くべきことに、チョコレートで造形をつくり、それを鋳造するという手法で彫刻作品をつくっています。「チョコレートをつくることと彫刻をつくることに、私は違いを感じない」と話すロジェ。造形への興味は、ジャン=ポール・ゴルチエやセルジュ・ゲンズブールらから特別なスイーツの依頼を受けた頃に始まったと振り返ります。縁あってオーギュスト・ロダンの『地獄の門』の鋳造所を案内されたロジェ。31歳の時、チョコレートのコンクールに出品した大型作品を保存するため、ブロンズでの鋳造を思いついたのだそうです。実は、その2~3年前から彫刻作品の購入もしていたと聞くと、彼が自ら彫刻をつくるようになったのは自然な流れに思われます。

それにしても、その作品世界の豊かさには脱帽します。人物像『旅する男』や、女性の身体を表したと語る『ライクアバージン』から感じられる動き。初期作品の『エイ』にして既に確かな存在感を放ち、偶然にできたという小品も各々が造形的な魅力をもっています。これらのアートがチョコレートの仕事をする一方で精力的に生み出されてきたことに驚愕するほかありません。「ロダンは粘土や石膏と闘ったけれど、私はチョコレートでつくる」とにこやかに答えてくれたロジェ。ショコラティエであり彫刻家である奇才のクリエイションを見られる貴重な展覧会。この機会を逃す手はありません!

『旅する男』。宙に一筆書きしたような軽やかさに驚きます。キュレーションと展示デザインはパリを拠点とする建築家リナ・ゴットメが担当しました。窓辺に並べられた作品も多彩で一つひとつに見入ってしまいます。

『法王と側近』。さまざまに読み取れる顔。ロジェは、付けたり削ったりさまざまな技法を用いていて作品は一様ではありません。

『エイ』。彫刻を始めた最初期の作品のひとつ。

『ネコ』。気に入っている作品のひとつと話すロジェ。「ピカソの犬に似てると言った友人もいたよ」

パトリック・ロジェ『TRAVELS TRAVEL(LER)』展
開催期間:2018年6月2日(土)~7月2日(月)
開催場所:21_21デザインサイト ギャラリー3
東京都港区赤坂9-7-6
TEL:  03-5777-8600(ハローダイヤル)
開場時間:10時〜19時 
休館日:火
入場無料
www.2121designsight.jp/gallery3/travels_traveller