奈良時代の初めに国家平安と国民の繁栄を祈願して創建された「春日大社」。約20年に一度行われる建替・修繕の「式年造替」が2016年に60回目を迎え、それを機に神殿に伝来され、大切に保管されてきた「古神宝」の数々が、上野の東京国立博物館・平成館で公開されています。めったに拝観することが叶わない貴重な春日大社の名品が一堂に会し、国宝、重要文化財も100点以上という空前の規模での展覧会です。
四殿からなる春日大社の本殿は、武甕槌命(たけみかづちのみこと)が常陸国(現在の茨城県)から鹿に乗って御蓋山(みかさやま)山頂に降臨したことに始まります。その後、経津主命(ふつぬしのみこと)、天児屋根命(あめのこやねのみこと)、比売神(ひめかみ)を迎え、768年に現在の形となりました。
以後、藤原家の帰依を中心に貴族たちに支えられ、鎌倉以降には武家たちの信仰を集め、現在に至るまで多くの祈りが捧げられています。なんと今も年間で2000回以上の神事を催行しているのだとか。
展覧会の会場は6章に分けられています。「神鹿の杜」では、春日大社のアイコンともいえる神鹿が造形化された姿を見ます。神聖ながら愛らしい姿は、神々を身近に感じさせてもくれます。
「平安の正倉院」では、その名の由来である平安貴族たちの美意識が反映された美しい奉納品を堪能します。国宝の《金地螺鈿毛抜形太刀》は必見! 日本美術の技術の高さとセンスに驚嘆です。
「春日信仰をめぐる美的世界」では、神仏習合の思想を背景にした信仰のかたちを確認します。多数描かれた曼荼羅図や縁起絵巻、さまざまな工夫を凝らした舎利厨子などが楽しめます。日本絵巻史上最高峰といわれる鎌倉期の《春日権現験記絵》(展示場所は1章)もお見逃しなく。
「奉納された武具」では歴史上の偉人たちがその神性にあやかることを祈り、贅と技を凝らして奉納した武具が紹介されます。国宝の鎧や刀剣の数々は、圧巻の迫力です。
「神々に捧げる芸能」「春日大社の式年造替」では、現在にも脈々と継承される祭りと造替の姿を、古今の祭祀具で体感します。平安時代から伝えられる舞楽の面や衣装から、このたびの造替で奉納から「撤下」され、目に触れることが叶った「御間塀(おあいべい)」(各社殿をつなぐ塀)に描かれた絵画も初披露されます。
1000年を超える信仰のかたちとその伝承の物語を、社の奥深くに秘蔵され、大切に守られてきた日本美術の多様な美に観る、貴重な機会。めでたい初春の展覧会として「詣」でてみるのはいかが? (坂本 裕子)
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「特別展 春日大社 千年の至宝」
開催期間:~3月12日(日)
開催場所:東京国立博物館 平成館
東京都台東区上野公園13-9
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日: 月曜日
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
入館料:¥1,600