誰もが教科書で目にしたことがある、世界で一番有名な壁画が、いまから2万年ほど前、フランス南西部の渓谷にあるラスコー洞窟に描かれた彩色画でしょう。その躍動感溢れる動物たちを描いたのは、後期旧石器時代に暮らしていたクロマニョン人。600頭とも言われる動物の壁画の色彩の豊かさや、特徴的な技法の素晴らしさは、考古学的価値だけでなく、美術的にも優れ、1979年には世界遺産にも登録されています。
洞窟は、現在、経年劣化を防ぐため非公開となっていますが、そんな先史時代の人々の創造性や、洞窟内部の世界を体験できる特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」が国立科学博物館で開催されています。
この展覧会では、フランス政府公認のもとに作られた、1ミリ以下の精度で再現したレプリカを中心に、日本独自のコンテンツを加え、謎に包まれたラスコー洞窟の全貌を紹介。ダイナミックに描かれた数々のウマ、バイソン、シカ、人間を通して、2万年前に始まった芸術の起源をも遡ることができます。
注目は、やはり実物大で再現された2メートルの巨大な「黒い牝ウシ」の壁画。教科書でお馴染みの、洞窟内で最も存在感がある絵です! またクロマニョン人が洞窟の奥深くで壁画を描くために使用した国宝級ともいえる最古の石製のランプや、世界初公開になる、当時使われた画材や道具も、興味深い展示物でしょう。
またラスコー洞窟の遺物以外にも、フランスのラ・マドレーヌ岩陰遺跡で発見された美しい毛並みを毛づくろいするバイソンの彫刻や、イタリアのグリマルディ洞窟遺跡のヴィーナス像など、一見の価値がある旧石器時代の遺物が一堂に会します。
果たしてクロマニョン人とは、何者だったのでしょうか。そして彼らの精神性とは? 最新科学の知見と、3次元レーザースキャンなどの最新技術によって検証された先史時代の文化に、この展覧会で触れてみるのはいかがでしょうか。きっと、2万年の時代を超えた壮大な人類の物語に、感動できるはずです。(幕田けいた)
特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」
開催期間:~平成29年2月19日(日)
開催場所:国立科学博物館
東京都台東区上野公園7‒20
開催時間:9時~17時(金曜日は20時まで)
※入館は各閉館時刻の30分前まで。
※土曜日開館時間は、以下のとおりです。
特別展「世界遺産 ラスコー展」のみ9時~17時まで(入場は16時30分まで) その他常設展示等は9時~20時まで(入館は19時30分まで)
休館日:毎週月曜日、12月28日(水)〜1月1日(日)、1月10日(火) ※ただし、12月26日(月)、1月2日(月)、1月9日(月)、2月13日(月)は開館。
入場料:一般・大学生¥1,600ほか
11/23(水・祝)には、日本館2階講堂で、「世界遺産 ラスコー展」監修の国立科学博物館 海部陽介・人類史研究グループ長と、東京大学教授・日本旧石器学会会長の佐藤宏之先生(先史考古学)による記念講演会「クロマニョン人の時代の日本列島」が催されます。
時間:13時~14時30分(開場12時30分)
定員:100名
参加費:無料
※当日先着順。当日10時より整理券を配布いたします。 ※ただし、受付時に「世界遺産 ラスコー展」入場券(半券可)の提示が必要です。 ※複数名で参加する場合は参加者全員の入場券の掲示が必要です。 ※前日までにすでに「世界遺産 ラスコー展」を鑑賞している場合は、当日、常設展入場券を購入の上、特別展の半券の持参が必要です。