世界10カ国から集結したエロティシズムの誘惑。「クラーナハ展‐500年後の誘惑」が開催中!

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    ルカス・クラーナハ(父)《ホロフェルネスの首を持つユディト》
    1520/30年頃 ウィーン美術史美術館 ©KHM―Museumsverband.
    3年間の修復を終えて初来日の作品。あどけなさを残す金髪の美女が澄まして持つのは生首…。ギャップに驚いたときにはすでにその魅力に捕われているのです。

    東京 国立西洋美術館では、国内初のクラーナハの大回顧展が開催されています。
    ルカス・クラーナハ(父、1472-1553)は、ドイツ・ルネサンスを代表する芸術家。神聖ローマ帝国の政治的・文化的中心のひとつであったヴィッテンベルクの宮廷画家として名を馳せます。同時に自身で大型の工房も開設し、大量注文に応じる体制を時代に先駆けて作り上げたビジネスマンであり、蛇をモティーフにした“商標”も作成、ブランド戦略(!)までも成し遂げた革新者でもありました。その革新は、宗教改革に揺れた激動のドイツ社会で、重要な役割を果たしたことにも見られます。マルティン・ルターと深くかかわり、彼らの思想を広く伝えるべく、肖像画やその思想の視覚化にも貢献しました。

    さまざまに先駆的であったクラーナハ、しかし、何よりも彼を知らしめているのは、特異な魅力を放つ裸体のヒロインたち。アルプス以北に初めて裸体画をもたらしたというもうひとつの改革は、美の女神ヴィーナスや聖女ルクレティア、その魅力で男性を破滅に導くユディトやサロメなど、相手の運命を狂わせてしまう美女たちを、清楚でいて妖艶、婀娜っぽくも冷ややか、蠱惑的なのにどこか軽やかに描き出したことでした。成熟と未成熟のあわいが醸し出す独特の妖しい官能に満ちた作品は、当時の人々を熱狂させただけでなく、後世の多くのアーティストたちを魅了し、現代のわたしたちまでも捕えます。

    彼の画業の全貌に迫る展覧会は、ピカソ、マン・レイから川田喜久治や森村泰昌まで、このエロスに魅せられた近現代アーティストの作品も並ぶ、立体的な構成になっています。
    さらに、ドイツ芸術のもうひとつの魅力である版画作品。西洋美術館のコレクションから、いまひとりのドイツ・ルネサンスの体現者であるデューラーの代表作と、多色木版をドイツにもたらしたクラーナハの秀作たちを一緒に堪能できるのもポイントです。

    宗教改革の伝達者でありながら、官能的な裸体画の制作者でもあるクラーナハ自身とその業績がすでにアンヴィヴァレントな存在で興味深いですが、まずは、どこか背徳的な気持ちを起こさせながらも目が離せなくなる、肉感的ではないのにセクシーな、不思議で妖しい裸体の美女たちに誘惑されてください!(坂本裕子)

    ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意(ユスティティア)》1537年 個人蔵
    少女のような華奢な肢体は透明のヴェールに包まれています。「隠す」はずの布がゴージャスなアクセサリーとともに却ってその裸体を妖しく強調します。

    ルカス・クラーナハ(父)《不釣合いなカップル》 1530/1540年頃
    ウィーン美術史美術館  ©KHM―Museumsverband.
    歳の離れたカップルをシニカルな視線で描いた1枚。女性のしたたかさと男性への教訓を語りながらも、憧れと妄想をもかきたてる両義性が印象的です。

    ルカス・クラーナハ(父)《ロトとその娘たち》 1528年  
    ウィーン美術史美術館 ©KHM―Museumsverband.
    神の怒りに滅びたソドムを去ったロトと娘たち。子孫を残すため父を酔わせ誘惑するという聖書のシーンは、しなだれかかる姉妹の妖艶さがアブナイ魅力を…。

    《マルティン・ルター》 1525年 ブリストル市立美術館 © Bristol Museums,Galleries&Archives
    教科書で目にしたこともあるだろうルターの肖像。多くの肖像やイラストを描くことで、宗教改革の普及に協力したクラーナハのもうひとつの革新です。

    「クラーナハ展―500年後の誘惑」

    開催期間:~2017年1月15日(日)
    開催場所:国立西洋美術館
    東京都台東区上野公園7-7
    開館時間:9時30分~17時30分(金曜日は20時まで/最終入館は閉館の30分前まで)
    休館日:月曜
    (ただし、2017年1月2日(月)は開館)、2016年12月28日(水)~2017年1月1日(日)
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    観覧料金:一般¥1,600

    http://www.tbs.co.jp/vienna2016/