わたしたちが当たり前のように「自分」の一部として認識している「身体」。ここには、そんな“個”としての、集団としての、そして国としての、世界としての、時間と空間が刻まれています。そうした感覚を呼び覚ましてくれる現代アートの展覧会が、横浜美術館で開催中です。
その名も「BODY/PLAY/POLITICS」。「身体」というものが生み出すイメージに切り込み、「演じる/遊ぶ」ことで、そこに積み重なり生成されてきた「政治性」という歴史をあらわにし、同時代を生きるアーティストたちとともに考え、対話する空間となっています。
出品作家は、イギリス出身でアフリカにルーツを持ちナイジェリアで育ったという、複雑な民族・歴史的背景を持つインカ・ショニバレMBE、マレーシアで、東南アジアの社会状況をフェミニズムの視点から問い直しているイー・イラン、今年日本でフィーチャーされている映画監督でもあるタイ人のアピチャッポン・ウィーラセタクン、ベトナムで生まれアメリカで学んだ後、自国の古今を、現代のインタラクティブ・メディアを活用して表すウダム・チャン・グエン、沖縄や日本各地で自身の生活圏の人々の小さな生きるエネルギーを撮り続けて2015年に木村伊兵衛賞と日本写真協会新人賞をW受賞した石川竜一、富山に生まれ、地域に根差した歴史を発掘し、時間を超えた物語として現代に提示し続けている田村友一郎の6人。
世界の現代アートシーンを牽引する4名と日本で今注目の若手アーティスト2名という、国内外6人のアーティストの競演は、初出品作品も含めた立体・映像・インスタレーションとして、時に切なく、時にユーモラスに、時に詩的に、そして時にシニカルに、それぞれが捉える「身体」のイメージを通じて、わたしたちの身体にも刻まれているはずの歴史を認識させ、その意味について再考するきっかけを与えます。
その空間は、個の「身体」から集団としての「身体」へと拡がると同時に、日本から世界へとも拡がり、それぞれのあり方を相対的に考えさせる、野心的な構成にもなっています。
また、本展パートナー・プロジェクトとして、来年1月からは、同じく「BODY/PLAY/POLITICS」をテーマに「横浜ダンスコレクション2017」が開催されます。美術作品として表現される「身体」と、ダンスという実際の肉体とその動きによる「身体」、この秋と年明けにかけて共に体感するのもおススメです。
(坂本 裕子)
「BODY/PLAY/POLITICS カラダが語りだす、世界の隠された物語」
会期:~12月14日(水)
開館時間:10時〜18時(10月28日(金)は20時30分まで/最終入館は閉館の30分前まで)
会場:横浜美術館
横浜市西区みなとみらい3-4-1
TEL:045-221-0300
休館日:木曜、11月4日(金) ※11月3日(木・祝)は無料開館
料金:一般¥1500、大・高校生¥1000、中高生¥600、65歳以上¥1400
http://yokohama.art.museum/special/2016/bodyplaypolitics/
※パートナープロジェクト
「横浜ダンスコレクション2017 BODY/PLAY/POLITCS」
会期:2017年1月26日(木)~2月19日(日)
主な会場:赤レンガ倉庫1号館および屋外広場、横浜にぎわい座のげシャーレ
http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/