謎の日本人アーティスト高橋尚愛とは誰か? 「奥村雄樹による高橋尚愛」展へ。

    Share:

    イスラエルの高橋尚愛(習作) Study for Hisachika Takahashi in Israel |2016|Scanned and photoshopped cutout book page (from “Rauschenberg in Israel,” published by the Israel
    Museum, Jerusalem, 1975)|16.6 × 22.8 cm
    Photo courtesy of The Israel Museum, Jerusalem; first published in “Rauschenberg in Israel,” 1975
    Courtesy of the artist and MISAKO & ROSEN

    不思議なタイトルの展覧会。内容も一風変わっていて、謎の日本人アーティスト高橋尚愛(Hisachika Takahashi)をめぐる、奥村雄樹による一連のリサーチ、作品の発掘、コラボレーションが展示されています。

    1978年生まれの奥村さんは、ブリュッセルとマーストリヒトを拠点に活動するアーティスト。ある日、アントワープの伝説的な画廊「ワイド・ホワイト・スペース」で行われた日本人アーティストの個展の資料を見つけ、興味を持ちます。1940年生まれの高橋さんは、60年代にミラノでルーチョ・フォンタナ、その後2008年まではニューヨークでロバート・ラウシェンバーグのアシスタントを務めた人物。美術史上重要なアーティストの元で働き、自身も作家活動を行っていました。奥村さんはさまざまなリサーチを経て、本人にたどり着き、高橋さんのリバイバル展示を各国で実現させます。

    今回の展示は、高橋作品と共に、高橋さんからインスパイアされた奥村作品も一緒に構成されています。高橋さんに成り代わって奥村さんがインタビューに答える映像作品や、ラウシェンバーグと共にイスラエルに滞在した時の写真を加工した「イスラエルの高橋尚愛」など、ちょっとシュールでユーモラスな作品です。

    面白いのは、見ているうちに、どちらが高橋さんで奥村さんなのか、だんだんわからなくなってくること。実際、風貌もどことなく似ているような……。探偵小説風に仕立てられた巧みな構成に興味をそそられて会場をめぐるうちに、ふたりのアーティストの境界があいまいになり、混ざり合うような感覚にとらわれます。そして最後の部屋には、両者が融合するコラボレーション作品があらわれます。

    「私」というものから自由になる感覚。その開放感を味わえるショートトリップのような展覧会です。(佐藤千紗)

    高橋尚愛|メモリー・オブ・ノ―メモリー|1973|和紙にカランダッシュのクレヨン|各63.5×97.2㎝|11枚
    Hisachika Takahashi|MEMORY OF NO MEMORY|1973|Caran d`Ache crayon on Japanese rice paper|63.5×97.2㎝each|11 pieces Courtesy of the artist and MISAKO & ROSEN

    高橋尚愛とは誰か:ダニエル・バウマンによるインタビュー|2015|HD ヴィデオ|18 分10 秒 ループ再生
    Who is Hisachika Takahashi: An Interview by Daniel Baumann|2015|HD video|18 minutes 10 seconds looped
    Courtesy of the artist and MISAKO & ROSEN

    Hisachika Takahashi (left) and Yuki Okumura (right)
    Photo credit: ©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

    「奥村雄樹による高橋尚愛」展

    開催期間:~9月4日(日)
    開催場所:銀座メゾンエルメス フォーラム
    東京都中央区銀座5-4-1 8階
    TEL:03-3569-3300
    開場時間:11時~20時(日曜日は19時まで。入場は閉場の30分前まで)
    http://www.maisonhermes.jp/ginza/gallery/archives/54369/