修善寺温泉の旅館主人と、日本画家たちによる知られざる温かな交流。

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    安田靫彦《鴨川夜情》昭和9(1934)年頃 伊豆市所蔵

    夏目漱石に川端康成、数多くの文豪たちが愛した地としても名高い、伊豆・修善寺。同じ頃、この地に、温泉旅館を舞台に、日本画家たちの美しい物語が繰り広げられたことをご存知でしょうか。

    明治末~大正時代、修善寺の温泉旅館には、数多くの若き画家達が療養や制作を目的に訪れたといいます。文化財の宿としていまも残る新井旅館、その三代目主人・相原寛太郎(沐芳/もくほう)は、そんな日本画家たちと美術を通じて交流を深めていきました。

    のちに、日本画の巨匠となる、安田靫彦(ゆきひこ)、横山大観、今村紫紅(しこう)、川端龍子(りゅうし)らも、この地でいくつもの作品を残した日本画家です。この度、静岡市美術館にて開催される伊豆市所蔵近代日本画コレクション展では、新しい日本画を模索した若々しく清々しい筆遣いの作品、福地山修禅寺を舞台にした空海にまつわる作品、安田靫彦がデザインしたという新井旅館の美しい風呂場を描いた川端龍子の作品など、伊豆市コレクションの約80点と書簡資料などから、これまで知られていなかった修善寺と日本画家たちの関係が、明らかになる展覧会です。穏やかに流れるように描かれたその作品からは、修善寺温泉の旅館主人をパトロンに、若き日本画家たちとの温かな交流が伺えるようです。(須賀美季)

    横山大観《松竹遊禽》大正元(1912)年頃 伊豆市所蔵

    (右から)小杉未醒《程ヶ谷》 横山大観《藤澤街道》 下村観山《馬入川》 
    今村紫紅《早川残雪》 いずれも《東海道》四幅対のうち 大正4(1915)年 
    伊豆市所蔵

    合作《修善寺風物扇面散》(右隻)明治末年頃

    『伊豆市所蔵近代日本画コレクション展
    大観・靫彦(ゆきひこ)・龍子(りゅうし)らと修善寺』


    開催期間:6月7日(火)~7月10日(日)
    開催場所:静岡市美術館
    TEL: 054-273-1515
    開館時間:10時~19時(入場は18時30分まで)
    休館日:月
    観覧料:一般¥1,000
    www.shizubi.jp


    関連イベント
    「講演会 修善寺と安田靫彦」
    6 月 12 日(日)14時~15時30分
    会場:静岡市美術館多目的室
    参加料:無料
    定員:70名
    申込締切:5月27日(金)


    「学芸員のギャラリートーク/この一点をとことん語る」
    6 月 18 日(土)、25 日(土)14時~(40分程度)
    参加料:無料(要観覧券)
    申込不要

    「しずびチビッこプログラム」
    小さな子ども達のためのアート体験プログラム。
    6 月 11 日(土)10時30分~12時/14時~15時30分
    対象:2 歳以上の未就学児、各10名
    会場:静岡市美術館ワークショップ室
    参加料:子ども 1 人につき¥500(保護者は要観覧券)
    申込締切:5月27日(金)