2016年バレンタイン、キーワードとなった“Bean to Bar”。カカオ豆からチョコレートまでを一貫して製造するBean to Barは、クラフトフードカルチャーのひとつとしてアメリカで一大ブームとなり、いよいよ日本でもチョコレートマニアだけではなく、広く知られるようになりました。
そんなBean to Barブームをますます加熱させそうなのがサンフランシスコ「ダンデライオンチョコレート」の上陸です。2月11日、蔵前にある築60年の倉庫を改装し、1階はファクトリー、2階はカフェという店舗が誕生しました。
「ダンデライオンチョコレート」が生まれたのは2010年のこと。創業者のトッド・マソニスとパートナーのキャメロン・リングは、共同運営していたWEB事業を売却し、「なにか新しいことをやろう!」と、クラフトチョコレートづくりを始めたのです。もちろん、チョコレートのつくり方など知る由もなく、本やインターネットで調べ、試行錯誤を繰り返してのチョコレートつくりだったとか。
彼らがつくるチョコレートは友人や家族に大好評。その後、地元のファーマーズマーケットで販売を開始します。そこで、自分たちのチョコレートのつくり方がほかのメーカーとは随分違う、と気づいたふたりは自動車修理工場を改築し、お客さんがチョコレートの製造工程を見ることができるファクトリーを立ち上げたのです。
チョコレート製法の特徴は、ストイックであり、シンプル
ドミニカ、マダガスカル、ベネズエラなどから届くカカオは現地での選別や発酵、乾燥も大切な過程なので、必ず最初に生産者と顔を合わせて現地でセレクトします。豆がショップに届くと、目視&手作業で厳しく選別。焙煎し、皮をむきます。グラインダーにかけ、ケインシュガーとともに練ること3日! なめらかなペースト状になったカカオをテンパリングし、型に流してかためて出来上がり。インドでハンドメイドされる美しい包装紙で包み、商品となるのです。
「ダンデライオンチョコレート」では、豆の選別から包装するところまで店内での手作業。我々はそれをファクトリーツアー(日本では3月開始予定)で間近に見ることができるのもうれしいところ。これは、何ひとつ隠すことなく、とてもシンプルなチョコレートづくりだからこそできることでしょう。
そして、このチョコレートの原料はまさにカカオとケインシュガーのみ。カカオごとの風味の違いがはっきりと出るBean to Barならではの楽しみを堪能できます。どのカカオのチョコレートも甘さはすっきりとしているので、食べ比べて好みの「カカオ」を探すのもいいでしょう。これらの工程はサンフランシスコでも蔵前でもまったく同じように行われます。
さて、蔵前のショップを手がけたのは加藤匡毅氏率いる空間デザインチーム「PUDDLE」。さまざまな倉庫として使われてきた建物が持つ味わいを残し、シンプルで質実剛健なリノベーションを行いました。頑強な床や梁の力強さと、クラフトマンシップを思わせる繊細なウッド使いが同居する美しい空間です。入り口のすぐ脇にカカオ豆を収納するスケルトンのビーンルームを設けているのも、「ストーリーの始まり」を思わせます。
そして、ここはチョコレートバーを購入するだけではなく、ゆったりと時間を過ごすカフェでもあります。バーと同じ原料を使った贅沢なホットチョコレートやカフェ・モカを飲んでひと休み。オートミールクッキーやチョコレートガナッシュを加えたスモアは、サンフランシスコらしいおやつ(ですが、そこに使われているチョコレートはとても贅沢)。
サンフランシスコのガレージで誕生した手づくりのチョコレート。本当にそのままその味を東京で楽しめるという幸せ。決して大量生産せず、すべてをつまびらかにして楽しくチョコレートをつくるという新しいビジネススタイルでありながら、あたたかみのあるストーリー。それは、日本でも古くからある職人の世界ともよく似ていて、きっと長く愛されるチョコレートファクトリーになるでしょう。(北條芽以)
ダンデライオン・チョコレート
「ファクトリー & カフェ蔵前」
東京都台東区蔵前4-14-6
営:10時~20時(19時30L.O.)
TEL:03-5833-7270
http://www.dandelionchocolate.jp/