水彩画の美しい絵本が生き生きと動き出す、『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』。

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    ベルギーの絵本作家、ガブリエル・バンサンが生み出した「アーネストとセレスティーヌ」シリーズ。1981年の第1作刊行からバンサンが亡くなる2000年までに、20作の絵本と2冊のデッサン絵本が出版されました。その世界観を大切にしながら、くまのアーネストとねずみのセレスティーヌが出会う“はじまりの物語”を描いたのが、この『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』。バンサンが鉛筆と水彩画で生み出した優しいタッチの絵が、生き生きと動き出します。

    地上にはくまが、地下にはねずみが住む世界。くまはまるで人間のような文明社会を築いていますが、ねずみのことが大嫌い。汚らしい生き物だと思っています。地下のねずみも、くまが築いた下水路を利用しながら、これまた高度な文明社会を築いています。くまは恐ろしく近寄ってはならない存在ですが、ねずみ社会にとって不可欠な「小ぐまの抜けた歯」を拾い集めるため、夜になると地上へと繰り出しますのです。そんな世界でひょんなことから出会うのが、貧乏だけど音楽が大好きなくまのアーネストと、絵を描くことと物語をつくることが得意なねずみのセレスティーヌ。その出会いは、くま界とねずみ界を巻き込む騒動を巻き起こすことになります。

    「絵本が動き出す」という表現がぴったりなほど、本作のクリエイターたちはバンサンの絵本を理解し、リスペクトしていることを感じます。そして、ねずみ社会の描写の楽しいこと! 下水路がセーヌ河のようにねずみたちの街を流れ、エレベーターもあり、学校と思われる場所では「アナログのねずみ取り」で体力づくりに励む子ねずみたちがいます。建築好き・ミニチュア好きにはたまりません。優しい色合いの世界に、ずっと浸っていたくなることでしょう。

    小さなお子さんがいる方は、絵本を読む立場をいったん離れ、一緒に読んでもらう立場を味わってはいかがでしょうか。大人だけでももちろん楽しめます。毒気のない優しい物語は、きっと心を癒してくれることと思います。鑑賞後の楽しみもあります。この映画の製作秘話をつづった絵日記があるのですが、とても面白いんです。原作への愛、アニメーションへの愛、映画づくりの愛に満ちた絵日記、ぜひご覧になってください。(Pen編集部)

    上段写真:少々粗野だけど優しいアーネスト(右)とセレスティーヌ(左)は、友情を育んでいきます。

    音楽を奏でることと絵を描くこと。創作の悦びを、ふたりは共有しています。

    学校があったり釣りをしている人がいたり、ねずみの世界が楽しいです。

    © 2010 Les Armateurs - Maybe Movies - La Parti - Mélusine Productions - STUDIOCANAL - France 3 Cinéma – RTBF

    『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』

    監督/バンジャマン・レネール、ステファン・オビエ、ヴァンサン・パタール
    2012年 フランス映画 1時間20分 配給/ギャガ・プラス
    8月22日よりシアター・イメージフォーラムほかにて公開。
    http://ernest.gaga.ne.jp