蓮沼執太は青森でどんな音を奏でるのか? 個展『作曲的』が5月30日(土)からはじまります。

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    5/11まで東京で展示されていた作品「フィードバック」。今回のACACでも展示。『知恵の処方』3331 Arts Chiyoda、2015年、 撮影:後藤武浩

    「space」「time」「architecture」——蓮沼執太の個展のサブタイトルには3つの要素があります。彼はそれぞれを、「メロディ」「リズム」「ハーモニー」と、置き換えているそうです。この意味をじっくり考えることはきっと、個展を楽しむ鍵にもなるのだと思います。

    5月30日(土)から、音楽家・蓮沼執太の個展『作曲的』が、国際芸術センター青森(ACAC)ではじまります。新作と過去の作品が再構成され、ギャラリー内と屋外に展開。今月15日から現地入りして制作も佳境でしょうか。ACACを囲む森を蓮沼自身が歩いて録音した音、青森市民が歌う様子、試験管の中のビーズ状の粒の動きが発するかすかな音、水の落下により発せられる音など、いろいろな“作曲”がなされているようです。

    蓮沼執太フィル、蓮沼執太チームというグループの活動で知られる彼ですが、彼にとっての“作曲”とは、いわゆる音楽を作曲することだけではありません。空間を作曲し、音楽を軸に新たな環境・場を生み出していく音楽家です。それゆえさまざまなワークショップも行うし、その場にいる人、もの、こと、すべてを巻き込んでいく即興的な楽しさもあります。大学で環境学を学び、フィールド・レコーディングも取り入れての創作活動がスタートだということを知ると、なるほど、と繋がる気がします。

    周囲を森に囲まれた自然あふれる環境で“森に埋没するように”たたずむ建物は、安藤忠雄によるもの。馬蹄形の展示棟はゆるやかな曲線を描き、ギャラリーのほかに円形の屋外ステージ、水のテラス(ここにももちろん作品を展開)などもあります。この豊かな環境=空間を、蓮沼執太がどのようにコンポジションしていくのか、想像するだけでワクワクします。

    「難しいことは考えずただ楽しんでほしい」と言う人もいますが、蓮沼執太に関しては、それはナンセンス。観察し、考え、自分なりの視点をもつ。彼の“音楽”を体感する時は、そういった行為が一層楽しいものとなります。会場で体感しながらでも、個展の帰り道でも、夜眠りにつく前でも、いろいろ考えてみてください。自由に。そこからさらに、音楽が広がりをみせてくれるはずです。(Pen編集部)

    ACACは安藤忠雄による建築。まわりを森に囲まれた豊かな環境。

    『音的→神戸|soundlike 2』神戸アートビレッジセンター、2013年
    撮影:福永一夫 写真提供:神戸アートビレッジセンター

    『無焦点 unfocussed』NADiff Gallery、2014年

    『作曲:ニューフィル』神奈川芸術劇場(KAAT)ホール、2014年
    撮影=後藤武浩

    言語と空間vol.2 蓮沼執太『作曲的|compositions: space, time and architecture』
    5月30日(土)~6月28日(日)

    国際芸術センター青森 ギャラリーA, Bほか
    青森市合子沢字山崎152-6
    TEL:017-764-5200
    開館時間:10時~18時
    会期中無休
    入場無料
    www.acac-aomori.jp


    【イベント】
    6月13日(土)15時30分~16時30分/無料
    環ROY × 蓮沼執太 × U-zhaan の即興ライブ。

    【ギャラリーツアー】
    6月13日(土) 14時30分 ~15時30分 /無料
    学芸員と一緒に展覧会を鑑賞。

    【楽譜ツアー】
    6月21日(日) 14 時30分 ~15時30分 /無料
    お喋りや文章など色々な方法を試しながら展覧会の楽しみ方を見つけ、特製鑑賞ガイドにまとめます。

    ※イベントは申込不要です。直接会場へお出かけください。