世界が認めた劇画を観よ! 映画「TATSUMI マンガに革命を起こした男」。

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    日本が世界に誇るカルチャーに「マンガ」があります。ところで、マンガ家・辰巳ヨシヒロを知っていますか? 辰巳はマンガ界におけるカンヌ国際映画祭と言われる、フランスの「2005年アングレーム国際漫画祭」で特別賞を受賞、2006年度『TIME』誌ベストコミックスで2位を獲得するなど、世界で数多くの賞を受賞。フランス語圏のマンガ、バンド・デシネにも多大な影響を与え、その地位を確立しています。

    ところが、本国である日本ではまったくその名が浸透していない理由には、彼が「劇画」を手がけたことがあげられるでしょう。いまではすっかり、性や暴力といったタブーをも描く“青年漫画”として認知されている劇画ですが、その生みの親は辰巳ヨシヒロだったのです。もともとは、彼の作品が子どもには社会的過ぎて受け入れられなかったゆえに、より“劇”(ストーリー)のあるものを描くジャンルを開拓したいという考えから生まれたものです。

    昨今の現実逃避した「マンガ」のファンタジーを好む人には、正直合わないでしょう。そしていわゆるお色気や任侠ものの劇画を想像してきた人にも、期待はずれかと思います。この映画で観ることができるのは、劇画の原点です。そこに描かれているのは、敗戦直後の日本。誰もが幸せを願っているのに願いを叶えるすべもなく、鬱屈とした閉塞感だけが人々を包み込む時代。夢をみるほどに夢も心もやぶれてゆく時代。ほんの数十年前のわれわれの先達が抱いていた、痛みや闇、そのものです。それでも彼らは、夢をみて、力強く生き続けています。その力強さが、スクリーンからいままで感じたことのない気力や迫力といったものを放出しているのです。

    闇から目をそむけてしまうのは仕方のないことなのですが、その結果、彼の作品の価値を見出したのが海外のメディアであり、本作を世に送り出したのがシンガポールの監督エリック・クーというのは、よくある話ですが、少し残念な気がします。(Pen編集部)

    2011年製作。同年の東京国際映画祭に出品され、「アジアの風」部門のアジア映画賞を受賞したものの、日本公開は難航。3年の月日を経てやっとの一般公開となる。いまこそ、日本の劇画の価値を考え直す時なのかもしれない。

    『TATSUMI マンガに革命を起こした男』
    監督:エリック・クー
    原作:辰巳ヨシヒロ
    2011年 シンガポール映画 1時間36分
    配給:スターサンズ
    12月20日(土)から角川シネマほか全国で順次ロードショー
    http://tatsumi-movie.jp/news/