東京車日記いっそこのままクルマれたい!
第129回 1970 Jaguar E Type Roadster Series 2 / ジャガー Eタイプ ロードスター シリーズ2
気分はグレッチのギターをかき鳴らすロックスター⁉ Eタイプ シリーズ2で、 60 年代ロンドンを夢見たい

ジャガーEタイプ。そのシリーズ2は1968年にデビュー。ヘッドライトカバーがないのが特徴だ。
「ジャガーEタイプ」デビューした日は、ビートルズがエド・サリバンショーに出演した日に似ている。それまで保守的だった英国が「生まれ変わった」ことを印象づけた日だからだ。
1961年のEタイプのデビューは、ビートルズと細身のスーツ、ツイッギーとミニスカートといった、英国のユースカルチャーが世界を席巻する「スウィンギング・シックスティーズ」の幕開けを予感させていた。Eタイプは、ビートルズのジョージ・ハリスンをはじめ、サックスプレイヤーのジョン・コルトレーンやブリジット・バルドーといった、時の著名人に愛されたんだ。
この個体は、70年製のいわゆるシリーズ2と呼ばれるモデルにあたるのね。これもまた、実際に走るクルマとは思えないほど美しい(笑)。主戦場だった北米市場の安全基準に合わせてデザインの変更が入っているものの、シリーズ2はシリーズ1の面影を色濃く残している。
生産から50年が過ぎた現在の眼で見ると、シリーズ2はスウィンギング・シックスティーズの熱狂を継承しながらも、70年代における2シータースポーツの先駆け的なデザインなのが、よくわかるのね。代名詞となった4・2ℓ直列6気筒エンジンを縦置きで格納しているロングノーズに、モダンで宇宙船のような流麗なスタイリング。ホイールハウスの内側にぐっと入ったワイヤーホイールのコントラストが、華奢で洗練されたイメージを醸しだす。
シリーズ1より全体の意匠はシンプルになり、クラシックなたたずまいのなかにも、工業製品としての息吹が感じられる。ロボットデザインにおける鉄人28号からマジンガーZへの進化じゃないけど(笑)。この時代に生まれる機能美が全体のスタイリングを引き締めているのね。スウィンギング・シックスティーズの文化でいうとメタルパーツを大型化したベスパのようで、モッズっぽいクルマになっている(笑)。
愛でるクラシックカーより、使いこなすクラシックカーへ。
実際に走り始めると低回転のトルクがしっかりあるので、ほぼアイドリングだけでシフトアップできるでしょ。キャブ車独特の濃密なアイドリング音を、オープンにして全身に浴びれば、気分はカーナビーストリートにいるよう。まさにスウィンギング・ロンドンですよ。ナローなボディに細いタイヤでの走りは、長身痩躯を揺らしグレッチのギターをかき鳴らす、デビューしたてのピート・タウンゼント感があるね(笑)。
実用的と言われるシリーズ2なので東京を走るなら、英国製のハリントン・ジャケットにロジャー・マッギンがつけていたようなスクエアサングラスで、ネオモッズって感じはどうだろう? シリーズ2のモッズ感を現代風に解釈し、それでいてしっかり60年代のロンドンの熱狂にコミットできるスタイルになっているはず。
このクルマ、パーツもほぼフルオリジナルで、コンディションも良好だから、手元にオリジナルパーツを残しつつ、実用的な新しいパーツでリビルトして、がんがん走らせる手もなくはない。愛でるクラシックカーより、使いこなすクラシックカーへ。バックヤードにガレージありきの英国魂、全開でいきたい1台だね。
ラウンドしたテールのデザインと相性抜群のラップアラウンドのリアクロームバンパー。
シートにヘッドレストが取り付けられ、安全性が高められた機能的なインテリア。
英国らしいライムグリーンのカラーリングに映えるトランクのレタリング。
戦後のヨーロッパ車を多数ラインアップする、ヴィンテージ湘南のガレージ。このクルマも販売中。
サイズ(全長×全幅×全高):4445×1657×1222㎜
エンジン:直列6気筒DOHC
排気量:4235cc
最高出力:246PS/5400rpm
駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
車両価格:応相談