ダニエル・クレイグの帰りを待つのはDBX !? アストンマーティン初のSUVに見る、英国車の美学。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第126回 ASTON MARTIN DBX / アストンマーティン DBX

    ダニエル・クレイグの帰りを待つのはDBX !? アストンマーティン初のSUVに見る、英国車の美学。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    英国ウェールズの新工場で生産されるDBX。時速100㎞までの加速は4.5秒。最高速度は時速291㎞を記録する。

    アストンマーティン初のSUVとなるDBX。高速道路を中心に600㎞ほど乗った結論から言うと、これだけ色気のあるSUVは見当たらない、ということに尽きる。色気にも種類があるけれど、スポーツ性能の高さや、知性や寛容性といった大人がこうあるべきという理想のキャラクターをDBXはすべてもっていて、懐の深さを感じさせるのね。

    稀代のリーダーシップを発揮した英国首相、ウィンストン・チャーチルばりの鉄の意志に英国的な慎み深さを重ね合わせれば、アストンマーティンになるって寸法なんだけど(笑)、DBXは「SUVをつくるならこれしかない」という、あまりにもアストンマーティンな1台なんだ。

    「それってジェームス・ボンドでは!?」と決めつけるのはやや性急で(笑)、彼はやっぱりパートナーファーストなスポーツクーペ、DB11かなとも思うわけ(笑)。DB11はアストンマーティンの顔としての華があるし、英国のみならず世界を救うヒーローがさりげなく乗るスポーツクーペで異論なし。でもたとえば、「普段のダニエル・クレイグがDBXに乗るとしたら?」と考えると、とたんにDBXはしっくりくるんだ。うむ。ジェームス・ボンドという大役を演じ終えたダニエル・クレイグを迎える相棒として(公開が延期に次ぐ延期で撮り直しも噂されているけどね)、DBX以上にふさわしいクルマはない。

    アストンマーティンには美学がある。マイアミのラッパーで随一のクルマ好きとして知られるリック・ロスはその美学を自分の生き方に重ね、「アストンマーティン・ミュージック」という名曲をつくったぐらいですよ(笑)。懐の深さと慎み深さ、このふたつの美学が混じり合う濃厚なバランスこそが、アストンマーティンの現在地を更新し続ける。DBXは、SUVという非常に難易度の高い車型に挑戦しつつも、十八番であるスポーツクーペ、DB11の完成度を超えてきたと感じられたんだ。

    まず基本となる走行モードのGTモードが、その名の通りのグランドツアラー。AMG製の4リッターV8エンジンをハミングさせ、路面入力を静かに優しくいなしていく。広くとられた視界に、低速のクルージングでこそ極上の乗り味を発揮するDBXのGTモード。大人の嗜みとしてのGTカー、その真骨頂であり、まさに「アストンマーティン・ミュージック」ですよ。

    強さと慎ましさを備え、大人の色香を纏うSUV

    左車線をゆっくり走りながらも、運転の歓びに身を委ねられる理由。これがなんなのか、不思議で仕方なかったんだけど、乗っているうちに心地よいエギゾーストノートのハミングと、エアサスの洗練されたしつけ方であると結論づけられたんだ。それとDBXのGTモードはアクセルオフでも最近のトレンドのような、ニュートラルギアを随所に入れて惰性でクルマを走らせるようなお大臣モードになることがないのね。

    アクセルを離せば、ちゃんとエンジンブレーキが利くから、右足は適度な緊張感を保ったまま操縦している感覚を残してくれる。お大臣になりたければ、新搭載された前車追従システムであるアダプティブクルーズコントロールを使用すればいいだけの話でね。自ら操縦したまま低速でクルーズするグランドツアラーとしての美学にほれ込むあまり、まったく使用する気にならなかったし、その乗り味こそ「ずっとこのままクルマれたい!」ですよ(笑)。

    さらにスポーツ、スポーツプラスへとドライブモードを変えることによって、DBXはよりハードなドライビングへと変容していく。足元はより固められ、ノーズが軽くなるFRスポーツに近い走りを見せる。ハンドリングはフラットを保ち、カーブでアクセルを入れるとノーズがぐんぐんインに入っていく。この足まわりの味つけや走りっぷりを、あえてSUVで比較するならBMWのX6 Mのスポーツクーペライクな走りに似ているんだけど、エンジンの存在感は目立たないし、決してスパルタンであることを誇ることもないんだ。強く、慎ましく。そんな抑制の美学なんだよね。

    攻め込むと、横方向のGに対しては電動アクティブロールシステムでロールを出さずに踏ん張る。それでいて縦方向のGに対しては比較的寛容で、ストロークの長いサスペンションの特性を見せて、加速時には楽しげにボディをゆらす。クルマの動作に明確なマナーがあり、やんちゃな印象にはならない。これは高級自動車メーカーのSUVとしては、ほぼ最後発のアストンマーティンならでは。英国車の美学と、よく研究された「大人のSUVの走り」を感じさせるんだ。

    だからこそスポーツプラスの攻め込んだ走りにおいても、決してGTモードのクルーズ感を別人と思うことはないんだな。加速やアクセルオフのエンジンブレーキが格段にシャープになるものの、人格乖離はせず、あくまでも同じパーソナリティでドライバーに接してくる。GTモードとまったく同じ地平に、スポーツプラスモードを置く。これこそが、どこを切ってもアストンマーティンと言える、色気の正体にもつながるんだよね。

    それもストイックに抑制された、香り立つような色気でね。そうね。その色気を音楽で表現するなら「イフ・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ステイ」を歌うスライ・ストーンって感じかな。狂おしい、シンコペーションの美学が背筋をぞくぞくさせるような快感を生み出す。運転中はずっと頭の中で鳴っていたし、静かな車内に雨音のようなウインカー音が響くと、さながら英国人の魂そのものに触れている気分だったんだ。

    • メインのヘッドライトとは別に、デイタイムランニングライトを搭載。

    • アルミニウム結合シャシーによる専用シャシー。

    • 車内は業界初のウールフェルトやカーボン、ウッドから組み合わせるオーダーメイド。

    • 視界が広く取られたフロントビューとグラスルーフにより開放感も抜群。

    • エアサスはドライブモードに合わせて5段階の車高調整が可能だ。

    • ダックテールとLEDブレードが印象的なリアビュー。

    アストンマーティン DBX
    ●サイズ(全長×全幅×全高):5039×1998×1680㎜
    ●エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
    ●排気量:3982cc
    ●最高出力:550PS / 6500rpm
    ●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
    ●車両価格:¥22,995,000(税込)~

    ●問い合わせ先/アストンマーティン ジャパン
    TEL:03-5797-7281
    www.astonmartin.com

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