春夏秋冬を全開で駆けるオールラウンダー、トヨタ GRヤリスが挑む「公道最速」への戦い。

    Share:

    • Line

    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第125回 TOYOTA GR YARIS RZ “HIGH PERFORMANCE” /トヨタ GRヤリス RZ “ハイパフォーマンス”

    春夏秋冬を全開で駆けるオールラウンダー、トヨタ GRヤリスが挑む「公道最速」への戦い。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    新設された「GR Factory」で製造されるGRヤリス。

    トヨタの豊田章男社長はGRヤリスを「世界で勝つためのクルマ」と位置づけた。未舗装路や雪道も含む「公道最速」を競う世界ラリー選手権(WRC)に参戦するWRカーは、メーカーが市販しているモデルでなければならない。これを「ホモロゲーションモデル」といい、その中身は、エンジンはもちろん駆動方式も変更して参戦することが可能なのね。

    街角を走っている普通のコンパクトカーを、まったくの別のモンスターに変えられる「なんでもアリ」な参戦規定。とはいえ、それもここ25年ぐらいの話で、もともと参戦するクルマは市販されるモデルに近いグループAがWRCのトップカテゴリーだったんだ。

    つまりラリーで勝つなら、ベースとなる市販車が速くなければいけない。これがラリー界の鉄則だった。そしてこのGR ヤリスこそが、国産としてはご無沙汰だった、ラリーで勝つための新型車なんだ。正確に言うと、次のホモロゲーションモデルになるために生まれたクルマといえる。日本名のヴィッツを欧州名のヤリスに変えたのだって、公道最速にフォーカスしたGRヤリスを販売するためだったに違いない。

    そもそもラリーで勝てる3ドアハッチバックはお世辞にだって、この時代に売れる車型とは言えない。だったら号令直下、カワイイ「ViVi」ヴィッツから、「ヤリスぎ」ヤリスへと「ヴァイヴス変えよう」って感じですよ(笑)。

    公道最速である理由とはなにか? グラベル(未舗装路)やアイスといったあらゆる路面を駆け抜けるのに4輪駆動であることと、車型をコンパクトにしつつ、短いホイールベースながらもできるだけ4隅にタイヤを配置すること。その上でアンダーステアを発生させないように設計されたGRヤリスは、ラリーが進化してきた歴史の先端にいるんだな。

    乗れば一発でそれが実感できるのね。直線やカーブでアクセルを踏み込んだ時に、安定を損なわないミニマム構造で、ドライバーの視座を下げすぎず、ある程度の高さで保ち、車体全体を把握させる。それによってセンチメートル単位のシビアなライントレースも可能になる。車体を滑らせず、速度を落とさず、路面を強力にグリップしたまま最短距離でタイムを切り詰める、グリップ走行のためのクルマなんだ。

    走行モードを「トラック」にすると本領発揮。気分は、まるでセバスチャン・オジェですよ(笑)。前人未踏のラリー・モンテカルロ6連覇を成し遂げ、つい先日も7度目の制覇を達成した王者のごとく、モンテカルロよろしくウエットでもアイスでもなんでもござれなオールラウンダー。前後のトルク配分が50:50になり、4輪で食らいつくように路面を捉え、きわどいS字もインのギリギリを安心して攻めることができる。いまどきにしてはちょっと重めのステアリングで、コーナーを脱出する時は常に全開の傑作ホットハッチ。トヨタの「まず素性のいいスポーツカーをつくる」って思いも全開なワケ(笑)

    ドライバーの想像より、ひとつ、ふたつ先を行く速さ。

    このミニマムな車体で全開にできるカタルシスは、新開発された1.6リッターの直列3気筒ターボによるところが大きい。メーターパネルに刻まれたレブリミットは8000回転で、シブい低音を響かせ、一気にピークパワーの6500回転まで駆け上がる。GRヤリスのよくまわるエンジンと3ペダルの醍醐味は、峠において至高の楽しさだし、なにより大事なのは、ドライバーが想像していた速さの「ひとつ、ふたつ先を行く」ってことなんだ。

    楽しいといえば「スポーツモード」で、トルク配分を30:70にできるのね。心持ちオーバーステアリングになり、ドリフト走行も可能とのこと。サイドブレーキがレバー式で、まさに「ドリフトしろ」と言っているようなものなんだけど(笑)、スリップサインを出しながらのスリリングな走行が楽しめるサーキット向けの仕様なのかな。まぁ、GRヤリスでいうとスポーツモードは本道じゃないと思うんだけど、この時代に「スポーツカーをとことん楽しんでほしい」っていう豊田章男社長の愛ですよ、愛(笑)。

    GRヤリスは、ラリーで勝負できる「公道最速のクルマをつくる」という姿勢を日本に再び取り戻したスポーツカーでもある。トヨタはWRC以前の黎明期からラリーに関わっていたし、ランチアとしのぎを削っていたセリカGT-FOURで参戦していた30年前は、まさに黄金期だった。そして無類の強さを誇ったスバルのインプレッサ WRX STIや、三菱のランサーエボリューションといったホモロゲーションモデルは、WRCのイメージそのままに、競技車のベースとして世界的に勇名を馳せていた。ラリーを壮大な実験場として捉え、過酷な環境で真価を発揮する技術を市販車にがっちりフィードバックしていた。

    その強さの秘密は日本のターボ技術と4輪駆動に加え、ラリーで勝てる車型にもあった。日本車のタイトル席巻に業を煮やしたライバルメーカーの提言により、主催者FIA(国際自動車連盟)が大幅な改造を認める「なんでもアリ」のWRカーカテゴリーをつくってから、WRCにおける日本車の凋落は始まった。多くの日本メーカーは撤退すると同時にホモロゲーションモデルの生産をやめ、個人参戦するプライベーターはもうすぐネオクラシックと呼ばれそうな、ひと昔前の車型を大事に乗る時代が続いたんだ。

    コンパクトな3ドアハッチバックが憧れの舞台、WRCを席巻し続けているのを横目で見ながらね。だからこそ2017年のトヨタのWRC復帰、そしてGRヤリスの発売は、ラリー仕様の最新車型を手に入れることが叶わなかった、不毛な時代にもラリーを愛し続けた人たちが報われるんだ。泉谷しげるの「春夏秋冬」じゃないけどね(笑)。

    さて、時を戻そう(笑)。市販車が最先端のラリーを牽引し、その楽しさを教えてくれたグループAのマインドにいま再び立ち返って、日本車の技術力を世界に示そう。世界の草の根ラリーストたちに、最新の競技用ベースモデルを提供しよう。そしてヒール&トゥが身体に染み付いた3ペダルのスポーツカー好きに、峠を攻める楽しさを思い出させよう。そんな想いがたっぷりこもったGRヤリスのハンドルを握ると、「もう1台はコンパクトを」という需要にはGRヤリスで応えたいし(笑)、今年こそは開催されてほしいラリージャパンでヤリスWRCを応援しようって気にもなるんだよね。

    • 3ドアの躍動的なデザイン。あらゆる路面状況に対応するアクティブトルクスプリット4WDシステムを搭載。

    • 競技仕様も満載のコクピット。

    • 溶接の打点打ち増しや特殊構造用接着剤を使用し、強力なボディ剛性を確保。

    • ルーフにはカーボン素材C-SMCを採用。

    • ダウンフォース獲得のために追求されたエアロダイナミズム。

    • トランク容積は174ℓ。後部座席を倒せばタイヤを4本積み込める。

    トヨタ GRヤリス RZ “ハイパフォーマンス”
    ●サイズ(全長×全幅×全高):3995×1805×1455㎜
    ●エンジン形式:直列3気筒インタークーラーターボ
    ●排気量:1618cc
    ●最高出力:272PS/6500rpm
    ●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
    ●車両価格:¥4,560,000(税込)~

    ●問い合わせ先/トヨタ自動車 お客様相談センター
    TEL:0800-700-7700
    https://toyota.jp

    春夏秋冬を全開で駆けるオールラウンダー、トヨタ GRヤリスが挑む「公道最速」への戦い。

      Share:

      • Line

      Hot Keywords