この春のファッションは、心を晴れやかにするブルーのアイテムからはじめよう!
色が人の心に与える効果を応用して、街中では様々なシーンで色が使われている。例えば日本の工事現場での注意標識は、ブラックとイエローのバイカラーだ。もっとも目立つ配色とされており、注意を喚起するのに最適な組み合わせである。ビリヤードやルーレットなど勝負の場で使われるシートの色はグリーンが基本だ。アツくなりがちな感情を鎮めるため、落ち着かせる色が採用されている。ファッションにおいて色でよく知られるのは、「不景気の時代には黒が流行る」というセオリー。上昇ムードでないときは、ダークなベーシックカラーを好む人が増えるという話だ。
さて、いま現在の社会を見回してみよう。悲しいことに行動が抑制され、人同士の接触も制限された重い空気が蔓延している。その一方で一人ひとりのマインドがポジティブなのは大きな救いだ。部屋の内装を明るくカラフルにしたり、おいしい食事を取り寄せて気持ちを前に向けている。その中で、着るものにも変化の兆しが表れてきた。2021年春夏向けアイテムにポップで笑顔になれる色柄が多く登場してきたのだ。中でも注目されるのが、自然界や民族調のものである。アウトドアへの憧れや手仕事の温もりを感じさせ、気持ちを高揚させてくれる。周囲の空気も軽くなるから、今年はぜひ積極的に着ていきたい。
ファッション連載「着る/知る」では今季、様々な色柄に着目するつもりだ。まず第1弾の今回は、暖かい季節を先取りする爽やかなブルー系のアイテム。男性にはお馴染みのブルーも今季はさらにバリエーションが豊富で、その中からグラフィカルなデザインのアイテムを選んだ。ブランドはトーガ ビリリース、オーラリー、そしてビルケンシュトック。美しさと味わい深さを兼ね備える3者のセンスには目をみはるものがある。
世界的モードブランドのトーガのメンズ版であるトーガ ビリリースからセレクトしたのは、ドレスシャツとワークジャケットをミックスしたハイブリッドなアウター。気取らず親しみやすく、毎日の服装を上品にする着回し自在な優れモノである。フロントとポケットは便利なスナップボタン開閉で、各部位はリベット補強されている。歴史的なワークウエアへのリスペクトに男ゴコロがくすぐられる一着だ。
この服に斜めがけしたのは、トーガとポーターがコラボした流行のミニバッグ。スマホやカードケースを持ち歩くのに最適なサイズで、キャッシュレス時代の日常使いバッグはこれくらいの大きさで事足りる。ストラップもパーツもインディアンジュエリーのような個性派で、古着をこよなく愛するトーガならではのオリジナリティあふれるデザインだ。
モダンベーシックなオーラリーの今季コレクションの中で、一際目を引くのがこのデニムのセットアップ。色を抜くことで白くする古典的なブリーチ手法を使い、風が吹きつけたような美しいグラフィックを描いた。これほど洗練されたアート系のブリーチデニムは、まず他にないだろう。オーセンティックなシャツとパンツだが、縫製はワークウエア調のトリプルステッチ。素材は春夏向けに薄手になっている。
定番サンダルのビルケンシュトックからも、今季らしいブルーのモデルが新登場。ソールがスポーツタイプでアッパーがベルクロストラップの新時代モデル「タタコア」はライトブルー、記事冒頭写真に掲載した定番の「ミラノ」はよりディープな色合いだ。ともにインソールが同ブランドの標準的なブラウンからブラックに変更され、より都会が似合うデザインになっている。ソックス姿でもクールに履ける、スタイリッシュな表情が秀逸だ。
十年一日のごとく同じ服装を続けると、知らず知らずのうちにマンネリ化してしまうことがある。人から見られる印象のみならず、自身の気分が高揚しなくなるのだ。今こそ爽やかな服を新調して、春の季節を迎えてはいかがだろうか。