メルセデスきっての“スムース・オペレーター”!? 新型Eクラスとカブリオレ、その蜜月な関係とは。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第122回 MERCEDES-BENZ E 300 CABRIOLET SPORTS / メルセデス・ベンツ E 300 カブリオレ スポーツ

    メルセデスきっての“スムース・オペレーター”!? 新型Eクラスとカブリオレ、その蜜月な関係とは。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    4年ぶりの大型マイナーチェンジを図った新型Eクラスのカブリオレ。

    メルセデス・ベンツのミドルクラスの本丸とも言える、Eクラスの新型に乗った。4年前にモデルチェンジを行ったW213型初の大型マイナーチェンジであり、エクステリアは一新され、輸入車では初となるARナビを装備し、新しいステアリングに変更された。セダンやステーションワゴンには、1.5Lエンジンに「BSG」と呼ばれるマイルドハイブリッドシステムを搭載したエントリーモデルが設定され、大きな話題になっている。まぁ、Eクラスは4ドアが好きだし、1.5LのE 200にも乗ってみたかったんだけど、今回は2Lのカブリオレを選んだ。

    理由は、仕事を絡めて1500km超を走るために少しでもパワーが欲しかったのと、Eクラスのカブリオレに乗るのは初めてだったからなんだ。結論から言うと、その選択は正しかった(笑)。まず今回のマイナーチェンジで、スタイリングがコントラスト強めのイカつい風貌から、シンプルでエレガントな方向にデザインの舵を切ってきたのね。これが2ドアのカブリオレにしっくりきていた、ということ。その変貌は、黄金時代と言われた1990年代ヒップホップの世界から、R&Bにジャンルフリーな編集という概念をもち込み、よりコンシャスになったフリーソウルムーブメントに舵を切ったという感じ(笑)。

    同じ90年代のムーブメントってわけじゃないけど、W213型のEクラスという軸もぶれてはいない。その変わりようは同じクラブでも、翌日行くとイベントの内容が変わっていた感覚にも似ているかな。そもそも90年代を「古くさい」とは決して思ってほしくなくて(笑)、本質と革新の時代だったんですよ。壮大なミレニアムを迎えるに当たって内省するあたりが、これから変革の大波を迎える自動車業界にも似ているんだな。たとえば、その揺らぎは新しいステアリングの形状にも表れている。

    中心のホーンパッドが小さい真円で、ステアリングシャフトから生え出たようなクラシカル、かつ原点回帰な趣がある。こんな瀟洒なデザインならグリップも細くすればいいようなものだけど、本体はグリップ形状に合わせた力強くスポーティな仕様で、クラシックと機能主義がせめぎ合っているんだ。操作のしやすさもあるけど進化もしていて、高速道路で自動追従している時に、グリップを握っているだけでアラートが作動しないようになったのね。

    これが長距離ドライブでとても重宝したんだ。いままでだと、こまめにステアリングを動かさなければいけなかったのが、触れているだけで機能する。リラックスしてきて、ステアリングの下あたりをつまんでいるぐらいだと反応しないので(笑)、正しい運転ポジションで緊張感を促す意味でもよくできている。

    オープン走行にこだわる、次世代のクーペカブリオレ

    話題のARナビは、フロントから実際の映像を取り込んで、行き先の道路名を拡張現実らしいナビゲートで表示する。ちょうど街中の道が狭くて複雑な奈良に出張に行ってきたんだけど、わかりやすくて重宝したんだ。この辺はいわゆる最新機能で、「レアグルーブを入れてきたね」ぐらいの進化なんだけど(笑)。肝心なのは、新型Eクラスのカブリオレはエクステリアの変更を受けて、その存在自体が「めちゃくちゃコンシャスになった」ってことに尽きる。

    晴れた日はエブリデイ・オープンですよ(笑)。時速80kmぐらいならほとんど風を巻き込まないし、高速道路でも左側を走るならストレスを感じることはない。雪が降るような気温でも、エアスカーフやシートヒーターがしっかり温めてくれる万全の対策。気温に合った服装さえしていれば素晴らしいオープンドライブを味わえるわけ。「より長くオープンにしていられる」というのが、スポーツカーではないカブリオレの生命線だということを、図らずも新型Eクラスに教えられたって感じ。

    静かにソフトトップが開く瞬間は、舞台の幕が上がる瞬間と同じで、エンターテインメントの始まりに胸が高鳴る。風に任せてボートの帆を上げ、ゆったりと波間を走る緩やかなクルーズ感。スポーツカーのカブリオレが一人称だとすると、Eクラスのカブリオレは三人称視点なのね。俯瞰するドライブであり、街や自然と一体になるためのカブリオレなんだ。

    エアサスもエコやコンフォートの設定だと、ゆらりゆらりとクルーズするのにはうってつけ。だけどスポーツやスポーツプラスというように、ドライブモードをスポーティにしていくに従って、車体との一体感を伴った足まわりに変貌していく。このエレガントなオペレーティングも本当にメルセデスらしくて、1980年代のシャーデーの名曲で言うところの「スムース・オペレーター」って感じですよ(笑)。歌詞の通りロサンゼルスからシカゴへ、そして南はキーラーゴ島まで、恋のオペレーティングをスムースに誘うって感じ(笑)。

    そんな長距離こそ実力を発揮するスムース・オペレーターは、パートナーとともに楽しめるカブリオレであることも付け加えておこう。助手席のパートナーは、Eクラス カブリオレの静かでスムースな走りの気持ちよさにうたた寝しちゃうはずだけど(笑)、それは間違いなく幸福の時だよね。陽光降り注ぐ明るい車内で、「もう少し寝かせてあげたい」と、必然的に運転も優しくなるでしょ。あぁ、これって間違いなく愛じゃないですか(笑)。そんなステアリングを握るあなた自身が、「スムース・オペレーター」になるわけだな。あははは!

    これがもうひとつ上のE 450になると、エンジンが「ISG」と呼ばれるハイブリッド付きの3L直列6気筒エンジンになる。2L直列4気筒のE 300に乗っていると、E 450も「さぞかしいいだろうな」と思わされたんだ。Sクラスにも搭載されているエンジンで、よりパワフルに、かつエレガントな出力特性をもったエンジンなのね。特にスポーツモードから上のドライブモードは、よりシャープで洗練された走りを実現しているはずなので、ひとつ上の「スムース・オペレーター」がほしい向きは、発売開始をもう少し待ってもいいかもね。

    • 台形状のダイヤモンドグリルが特徴的なフロントエンド。

    • 新世代のステアリングは直感的な動作でスイッチ操作も可能になった。

    • 一般道限定で使用できるARナビ。

    • エアキャップを装備し、高速道路でも快適なオープン走行を実現。

    • 開閉時の静粛性にこだわったアコースティックソフトトップを採用。

    • 水平基調のデザインによりオーセンティックな印象になったリアエンド。

    メルセデス・ベンツ E 300 カブリオレ スポーツ
    ●サイズ(全長×全幅×全高):4845×1860×1430mm
    ●エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
    ●排気量:1991cc
    ●最高出力:258PS
    ●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
    ●車両価格:¥9,560,000(税込)

    ●問い合わせ先/メルセデスコール
    TEL:0120-190-610
    www.mercedes-benz.co.jp