原宿でリーズナブルに味わう、 ミシュラン星付きシェフのフランス・アルザス料理。

  • 写真:中庭愉生
  • 文:岡野孝次

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写真:中庭愉生 文:岡野孝次

原宿でリーズナブルに味わう、 ミシュラン星付きシェフのフランス・アルザス料理。

ラ・コレール
原宿
アルザス地方のピッツア、タルト・フランベ専門店
ミシュラン星付きレストラン「オルグイユ」のシェフ、加瀬史也シェフがオープン
アラカルトが¥440、ワインもグラス¥660から

「タスマニア・スモークサーモンと有明の生海苔のタルトフランベ」¥1,375(税込)。注文後に焼く生地には、アルザス流のオリーブオイルではなく、加瀬シェフ流にバターを加え、リッチな味わいに。フロマージュブランとタマネギは、表面を炙って風味づけする。スモークサーモンの塩味でワインが進むこと請け合い。タルトフランベの基本形、ベーコンがのった「沖縄やんばるベーコンと玉葱のタルトフランベ」¥990(税込)も人気。

「外食の選択肢が少ない」との声も多かった原宿駅北東エリアに、2020年9月に開業したのが、食の商業施設「JINGUMAE COMICHI(ジングウマエコミチ)」だ。居酒屋やフレンチなどバラエティに富んだ全18軒、人気店や実力派シェフのプロデュース店も入るなど話題に事欠かないが、なかでも注目を集めるのが「ラ・コレール」。都内でも数少ないタルト・フランベ(フランス・アルザス地方のピッツア)の専門店で、ミシュラン星付きレストラン「オルグイユ」の加瀬史也シェフが手がけている。

修行でフランス・シャンパーニュ地方に滞在していた際、頻繁にアルザスに足を運び、タルト・フランベに慣れ親しんだという加瀬シェフ。「生地がクリスピーなので、小麦だけでなく、チーズや具材のベーコン、タマネギの風味もしっかり味わえます。気軽につまめるので、ワインのお供に最適なんです」。アルザスの気安い軽食を通して、フランスの食文化を再発見してほしいとも話す。料理はアラカルトが¥440(税込)から、ワインもグラス¥660(税込)からとカジュアルな価格帯。店内もカウンターメインで、入りやすい雰囲気だ。

リーズナブルでも、味づくりには加瀬シェフの緻密な計算が垣間見える。現地のタルト・フランベは生地にすべての具材をのせて一気に焼くが、加瀬シェフ流では、まず生地だけを焼き、そこにフロマージュブラン(フレッシュチーズ)を塗り、具材は炙って香ばしく仕上げる。「タスマニア・スモークサーモンと有明の生海苔のタルトフランベ」の海の幸のみずみずしい味わいは、それぞれの食材が適切な温度で加熱されているからこそ、生まれるものだ。同様に、「ベッコフ(アルザス風の蒸し煮料理)」の肉、野菜の力強い滋味も、最適な火入れの方法だからこそ実現する味わい。親しみやすい郷土料理を通して、フランス料理の“いま”を体感したい。

「国産豚頰肉と鹿児島赤土ジャガイモとベッコフ(アルザス風の蒸し煮料理)」¥1,100(税込)。現地ではすべての材料を同時に煮るが、加瀬シェフはまず真空調理で豚頰肉を下ごしらえして、次に豚肉から出ただしを、野菜と一緒に陶器鍋に入れて、オーブンで蒸し煮にする。素材の味わいが力強く、それだけでワインのアテになるが、マスタードを加えて食べても美味。

「オルグイユ」はシャンパン中心のワインリストだが、「ラ・コレール」では、白ならすっきりした味わいのロワール産シュナンブラン(右・¥770税込)、赤なら凝縮感のあるチリ産カルメネール(左・¥660税込)など、フランスからニューワールドまで幅広いラインアップ。

木のカウンターと座り心地のいい皮張りチェアが並ぶ店内。加瀬シェフはフランスでの修行後、北品川の三ツ星レストラン「カンテサンス」での経験を経て、2016年に外苑前にレストラン「オルグイユ」を開業。「オルグイユ」が休業の日は、「ラ・コレール」の厨房に立つ。

2020年9月開業の「ジングウマエコミチ」は原宿駅から徒歩3分の立地。1階、2階に合計18軒の飲食店が入る。“コミチ”の名付け通り、カウンター主体の店が多く回遊性を重視したレイアウトで、はしご酒が楽しい。