ようやく会えたランドローバーのオーバーランダー。新型ディフェンダーで、ユニオンジャックに再び恋をする。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第118回 LAND ROVER DEFENDER 110 / ランドローバー ディフェンダー 110

    ようやく会えたランドローバーのオーバーランダー。新型ディフェンダーで、ユニオンジャックに再び恋をする。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    ランドローバー史上最も堅牢なアルミ製モノコックボディを採用した新型ディフェンダー。

    ランドローバーのオリジナルモデルであるディフェンダーが、新型となって復活した。先代までのディフェンダーって、増えすぎたメルセデス・ベンツのGクラスへのアンチテーゼとして需要があったのかな(笑)。都内で並行輸入車もたまに見かけたけど、街乗りには窮屈なオフローダーなので、最近ではめっきり見かけなくなった印象がある。その特性はスタイリングも含めて、昔気質のオフローダー。泥濘地に分け入るためのマッドクローラーにして、やっぱり生粋の英国車でもあった。

    狭くてタイトな運転席に革張りのシート。佇まいにクラシカルな品があって、日本でも正規販売していればちゃんと一定の台数は売れていたと思う。個人的には北海道のラリーで林道パトロールをしていたディフェンダー 90のオーナーだったり、営林署の職人、4駆のカスタムショップのオーナーといったアウトドアのプロが、さりげなくディフェンダーで現れたりすると大いに頷かされていたんだ。

    もともとディフェンダーは車名としてランドローバーを名乗っていて、メーカーの代名詞でもある。その歴史は第二次世界大戦時に使用されていた軍用ジープまで遡り、90や110といった車名はホイールベースの長さに由来している。2007年モデルまではリアのシートが対面型のモデルもあったぐらいだ。一度生産をやめた理由は、安全基準と排ガス規制に適合できなくなったからというごもっともな理由とは別に、メルセデス・ベンツのGクラスやジープのラングラーといったライバル社のクロスカントリービークルが市場を席巻。こうした動きに対抗するために、一気に競争力を上げなくてはならなくなったからなんだ。

    「いつまでもグラストンベリーのぬかるみと格闘しているわけにはいかない」ってこともないだろうけど(笑)、英国を出て新工場をスロバキアに設立し、新設計の完全フルリニューアルで新登場した。そして日本にも初上陸の運びとなったわけ。

    まず実車を見た瞬間に、高さを伴ったそのボリューム感に圧倒されるよね。そりゃあ、昨年のラグビーワールドカップ決勝でともに登場した「リーチマイケル選手が普通の体格に見えたはずだわ」みたいな(笑)。レトロフューチャーな佇まいにして、オフロードタイヤを履き、オプションのシュノーケルやルーフキャリアを装備。前後の短いオーバーハングの仕様には、ハードコアなオフロードを踏破するギラついた自信がみなぎっている。デザイナーであるジェリー・マクガバンの卓越したプロダクトデザインに、乾杯するしかないわけ。

    素晴らしいのはフロントウィンドウをフラットにしたり、むき出しのドアヒンジを使わなくとも、クロスカントリービークルのタフネスさを表現できると証明した点。というか、明確に「やめだ、やめ。先に行こう」って促しているのね(笑)。これはGクラスやラングラーといったライバルへのポジション取りではなく、現在のディスカバリーやレンジローバースポーツといった優秀な兄弟モデルの血統から、タフネスさを結晶化させた新車種を生み出すという意思の表れなんだよね。

    この作業で慧眼さを裏付けるのは、エッジネスとタフネスは手と手を携えて、ランドローバーにとっても未体験の新デザインをつくり出すと確信していた点にある。最先端の意匠を施されたギアは、機能も飛び抜けていると感じられる。その逆もありで、機能が飛び抜けていれば、それ自体が最先端になりえる。簡単に言うと、アウトドアブランドとエッジィなファッションブランドのコラボみたいなことだけどね(笑)。

    モダンに再構築された、最新の英国流オフローダー

    これがひとつの社内、ひとりのデザイナーの中で完結する。そしてたったひとつのモデルが、ブランドのイメージをリブートさせる。直近で言えば日産の新型フェアレディZであり、ランドローバーにとってのそれがディフェンダーであることはいたって必然的に見える。でもよくよく考えると、会社全体の今後を決めかねない重大な決断なんだよね。さらにこれは初めてではなくて、かつてエッジネスとスポーツ性能が、彼ら自身にとっても未体験のスポーツSUVとなった大ヒット作、レンジローバー イヴォークをつくり上げているわけですよ。その奇跡を「また起こした」と考えたらいいかもね。

    その結果、新生ディフェンダーは2020年代における、ランドローバーのタフネスさを表現した一台になった。ところどころオマージュはあるけどセンチメンタルではなくて、先代ディフェンダーになかった居住性や快適性を手に入れ、オフロードの走破性も大幅にアップした。一方でラダーフレームにこだわった、クラシカルな佇まいのディフェンダーも見たかった気はするけどね(笑)。でも新型のシートに収まって、広くて開放的な室内空間からクルマを走らせてみると、デザインの遺産以外はすべての面において秀でたところがなく、かつ高額になるだろう先代ディフェンダーの進化版は「選ばない」と確信したんだ。

    新型のディフェンダーは静粛性が高く、挙動の鋭さはなくても2.2トンのボディを現代の交通の流れに乗せ、その流れを先導することもできる。今回は街乗りや高速道路、ワインディングと1000kmぐらい試乗したんだけど、最初こそパワーに物足りなさを感じたものの、効きのよいブレーキのおかげで思いのほか走りも楽しめた。そもそもランドローバーやレンジローバーの車種は(イヴォークを除いて)、オフロード性能が高すぎるゆえに、舗装路だと独特の収まりの悪さを感じるのね。オフロードタイヤを履いたディフェンダーにも同じことが言えて、それが「ランドローバーらしい味がある」と感じられたんだ。

    新型ディフェンダーには、この“ランドローバー味”の正体についてつくづく考えさせられたんだ。一定以上の速度になると現れる操作系の微妙なズレやロールが、不必要な速度を出させない走行ペースを生み出すのは間違いなくて、逆にそのペースをつかめば少ない燃料で、他メーカーのクルマとは一線を画す愉楽のドライブを体験させてくれる。

    これは英国に馴染み深い旅の文化である、オーバーランディングのためのクルマという認識があるからかもしれない。オーバーランディングとは野山を越え、川を越え、時には国境さえ越えて、野営をしながら長期間にわたって行われるクルマ旅のスタイルなんだけど、ランドローバーというネーミングもこの遠征旅行にインスパイアされているのね。「そんな旅をするなら時間はいっそ忘れたほうがいい」って感覚が、このクルマにも脈々と受け継がれている気がしたんだ。

    さて新型ディフェンダーはどこに行っても注目を浴びるし、仕事仲間にもそのスタイリングを絶賛されていた。間違いなくクロスカントリービークルのゲームチェンジャーになるし、ランドローバーやレンジローバーの中においても既存車種の強力なライバルになるだろう。既にオーダーは1年待ちとも聞くし、都内を走るディフェンダーに早くお目にかかりたいもの。

    そうそう。見たいといえば、英国には先代ディフェンダーのフレームからつくり直して完全な競技車両を製造しているボウラーのブルドック V8だったり、6.2リットルのV8エンジンを載せたツイステッド・オートモーティブのツイステッド ディフェンダーなんかが存在する。どうしても先代の姿かたちと魂を現代にアップデートしたいなら、「まだ手はある」と付記しておきたい(笑)。新型ディフェンダーの5倍以上の値段がするけど、新型の販売を機会に、ディフェンダーそれ自体のアフターマーケットの進化も大いに期待したいところだね。

    • 特徴的なフロントグリルとアンダーシールド。

    • 最大渡河水深は90cmと最高峰の性能を実現。

    • むき出しのデザインをコンセプトにした内装。

    • エクスプローラーパックにはルーフキャリアとサイドボックスが含まれる。

    • 横開きテールゲートとスペアタイヤを装備したフラットなリアビュー。

    • スペイシーなリアコンビランプがSUVのデザインを進化させる。

    ランドローバー ディフェンダー 110
    ●サイズ(全長×全幅×全高):4945×1995×1970mm
    ●エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
    ●排気量:1995cc
    ●最高出力:300PS/5500rpm
    ●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
    ●車両価格:¥5,890,000(税込)

    ●問い合わせ先/ランドローバーコール
    TEL:0120-18-5568
    www.landrover.co.jp

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