ヒルクライムの“トニートニー・チョッパー”現る!? メルセデスAMGのA 45 S、そのモンスター級の実力とは。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第117回 MERCEDES-AMG A 45 S 4MATIC+ EDITION 1 / メルセデスAMG A 45 S 4マティック+ エディション1

    ヒルクライムの“トニートニー・チョッパー”現る!? メルセデスAMGのA 45 S、そのモンスター級の実力とは。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    400台限定の「A 45 S 4マティック+」のエディション1仕様。

    世界最強の2リットルエンジンを搭載し、ライバルの追随をまったく許さない孤高の存在、メルセデスAMGのA 45シリーズ。新型の馬力は大台を超えて421馬力となり、トルクは500ニュートンメートル。1気筒当たりの馬力は100馬力超えと、完全に常軌を逸している(笑)。本来なら3リットルの6気筒エンジンがお誂え向きなスペックを、2リットル直列4気筒ターボに封じ込めているわけ。

    そもそもAクラスってAMGの設定はなかったし、20年前は世田谷通りを行き交うおにぎり型がかわいい、ヤングマダムのセカンドカーだったのね。ファニーでかわいいのに、正面にスリーポインテッド・スターのバッジが入っていて、「あら、これベンツなのね。素敵!」とオチがつくモデルだった。

    様子がおかしくなり始めたのが(笑)、3代目のW176型から。全長が400mm伸ばされて、全高を160mm低くし、いわゆるBセグメントからCセグメントカーへ。このセグメントの世界標準と言われるフォルクスワーゲンのゴルフ、BMWの1シリーズ、アウディのA3といった新たなライバルたちへの対抗心を、むき出しにしてきたんだ。そのスタイルは同じFFレイアウトながら、大人のファニーカーからホットハッチへ“キャラ変”してきたって感じ。

    そして「ライバルはゴルフ」と聞いて黙っていられなかったのか(笑)、AMGは4輪駆動化し、奇跡の2リットルツインスクロールターボエンジンを投入してきた。それが先代の133型エンジンなのね。このエンジンならラリーの世界を席巻しそうなものだけど、Cセグメントならではのラリーには大きすぎるサイズ感からか、競技人口の増加にはつながらなかった。このモデルの末期には500万円台でレーシングエディションも出ていて、ターマック(舗装路)を主戦場にするプライベーターにとっては、この上ないベース車両だったんだけどね……。

    この新型は、従来のコンセプトをそのままにフルモデルチェンジ。もともとサーキット寄りだったものを、よりいっそうサーキット仕様にした。エンジン出力はグンと上がり、トレッド幅を広げ、ホイールベースを延長。そんな新型A 45 Sを、峠を中心に600kmぐらい乗ったけど、つくづくド級のモンスターだね。一見かわいく見せておいて、規格外のパワーを秘めているあり得なさは、人気コミック『ワンピース』の小さなトナカイ、トニートニー・チョッパーみたいですよ(笑)。「そんな変身、アリなのか?」みたいなね(笑)。

    とりわけ度肝を抜かれたのがヒルクライム。FFベースの取り回しのよさにとてつもないパワーがあるから、神奈川・箱根の七曲がりみたいな急坂でも鬼神のように上っていく。「一気呵成」と、毛筆で書き添えたいぐらい(笑)。特にクローズドコースでの使用が推奨されている、レースモードの覚醒しきった走りはヤバい。DSC(横滑り防止装置)を切らなくても、スポーツプラスからの挙動のキレやサウンドも1.5倍増しぐらいになって、新型の進化をよりリアルに感じられるんだ。実際にクローズドコースにもち込んで使用してみたんだけど、「こんなのラリーに出るしかないじゃん」という気持ちを新たにさせられたのね(笑)。

    規格外のパワーを秘めた、ホットハッチの究極モデル

    ステアリングは接地感をキープしながらも、ややオーバーステアリングな味つけ。これは4輪駆動のトルクベクタリングがアンダーを出さないように調整されているからなんだけど、カーブでもアクセルを積極的に入れていくほうが安定してグングン曲がる。先代もこの傾向はあったけど、新型できっちりと方向付けられた印象がある。

    峠の上りは当然としても、ワインディングや下り坂でも図太いパワーでコーナーを抜け、アクセルをググッと踏み込んでいける快感がたまらないんだな。狙う走行ラインにも曖昧さがなくて、「ここしかない」というラインを、光跡を残して飛んでいくレーザービームのように駆け抜ける(笑)。

    サイズや価格もホットハッチとは言いがたいけど間違いなくホットだし(笑)、特にスバルのインプレッサや三菱のランサーエボリューションなど、4駆の国産ツインスクロールターボを愛した諸兄なら絶対試してほしいんだ。「あの時求めていたのはこの進化だった」って間違いなく納得できるから。

    ターボのタービン音こそしないけど、アフターファイヤー音が拍手喝采のように鳴り響くしね(笑)。あのスパルタンな世界観ではなくて、「道を究めよう」とするスポーツカーに纏わるストイックさが国籍を越え、見果てぬ夢のようにつながっていることに気づくはず。

    たとえば搭載されたAMGライドコントロールサスペンションは、電子制御で走りに応じて足まわりの感触を変えるんだけど、特に目新しい機能ではないにしろ街乗りでも非常に快適。乗ってすぐに、その質感の高さに気づかされるはず。「あぁ、高そうなアシ」ってね(笑)。もちろん新型は完全にサーキット向けなので、超高速域に到達するまでの安定感もスーパースポーツ並みにすごい。新型の進化を実感できるポイントはここにもあって、7000回転まで気持ちよく回りきるエンジン、ショートシフトでトルクバンドを上手に使いながら爆発的なエンジンサウンドを響かせ、スピードメーターをぐんぐんと跳ね上げていく。

    走行モードの使い方としては、街中や高速のクルーズではスポーツ、首都高や峠ではスポーツプラス、サーキットではレースモードという使い分けになると思う。421馬力と豊富なトルクを走行モードとシフトで上手に使い分け、プレミアムカーに求められる快適性もクリアする。抑制的でストイックなAMGらしさも既に官能の域だし、パワーを解放させたい気持ちを焦らして迂闊に限界を見せない、底の知れなさもクールだね。

    この新型は「ヒルクライム・モンスター」にして「ターマック・キング」を地で行っていると思うので、延期された来年のラリージャパンで「スポット参戦したりしないかなぁ」と夢見ちゃったな。実現したら、AMGがラリーに参戦するのは20年ぶり。このクルマはラリーのアウトプットがあると、絶対いいね。世の中の見る目が変わるし、変えてほしいモンスター。まぁ、トニートニー・チョッパーは、モンスターとは呼ばれたくないだろうけど(笑)。

    • フロントスプリッターが付いたレーシーなバンパー。

    • ステアリンググリップにはイエローステッチとエディション1の刻印が配された。

    • 専用のインテリアトリムが描かれたダッシュボード。

    • エンジンと組み合わせた、AMGライドコントロールサスペンションも秀逸。

    • ほどよいホールド感の革製バケットシート。

    • ウィングが象徴的なリアビュー。エアロパーツはパッケージされている。

    メルセデスAMG A 45 S 4マティック+ エディション1
    ●サイズ(全長×全幅×全高):4445×1850×1410mm
    ●エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
    ●排気量:1991cc
    ●最高出力:421PS/6725rpm
    ●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
    ●車両価格:¥9,280,000(税込)

    ●問い合わせ先/メルセデスコール
    TEL:0120-190-610
    www.mercedes-benz.co.jp