和紙を糸にしたシャリ感のある服や小物で、新しいニッポンの暮らしがはじまる。

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    vol.92

    和紙を糸にしたシャリ感のある服や小物で、新しいニッポンの暮らしがはじまる。

    構成、文:高橋一史 写真:青木和也 | 

    和紙をテーマにする「KAMITO」のトートとキャップ。左上から時計回りに、キャップ ¥9,900(税込)、トート(L) ¥15,400(税込)、キャップ ¥9,900(税込)、トート(L)¥15,400(税込)/KAMITO(TFC TEL:03-5770-4511)

    上写真のトートやキャップを見て、和紙を主原料につくられた製品だと気づく人はおそらく、このブランド「KAMITO(カミト)」をご存知か、紙素材の専門家だろう。伝統工芸の素朴なイメージとは縁遠い都会的なデザインだ。シンプルだがその佇まいと風合いは、決して “普通” ではない。とくにトートは触れば実感するハリとコシがあり、ふわりと空気のように軽くバネのように柔軟だ。厚みが薄く繊細な生地の印象とのギャップに驚かされる。あたかもシルクシフォンと麻を掛け合わせたような不思議さだ。

    深い奥行きのある色も見逃せない。トートは生成りも黒も穏やかな光沢があり、高級感を漂わせる。炭を削り出したかのごとき黒は、さらに個性が際立つ。キャップは2点とも植物染めで、右下は矢車附子という樹木、左上はチェスナット(栗)。天然のニュアンスが強調された仕上がりだ。スポーツウエアに温もりを添えるアクセサリーとして被りたい。

    織り糸はムラがなくとても細く、生地は密度が濃い。最新技術により和紙の可能性が引き出されている。

    細くテープ状にカットした和紙を撚り合わせ強い糸にして織る、ITOI 生活文化研究所の特許製法が用いられている。KAMITOは適材適所でアイテムにより生地を変え、綿やポリエステルを混ぜたものも使う。原料植物は、バナナの葉に似たアバカ(マニラ麻)、間伐材の針葉樹、マニラ麻など。そのどれからも丈夫な繊維を採取できる。マニラ麻は日本の紙幣(和紙)にも使われることからも、耐久性の高さをおわかりいただけると思う。

    サステイナブルな素材としても。

    奄美大島の「金井工芸」とコラボして泥染めした工芸的なTシャツ。共に¥18,700(税込)/KAMITO(TFC TEL:03-5770-4511)




    アップで見ても和紙とは気づけないほどの緻密な生地。

    Tシャツにも新しい和紙の実力が発揮されている。シワになりにくくシャリッとした質感は、ほかにない独特なものだ。その理由はハリのあるポリエステル糸を芯に、周囲に和紙の糸を巻いて編んだ特殊な生地だから。肌に触れる表面は吸水性のいい和紙なため汗でベタつかず、天然の作用もあり臭いを防ぎ快適に過ごせる。洗濯もでき、年間通して愛用する日常着に最適だ。

    紙を素材に用いたアイテムは近年増えてきている。しかしKAMITOほど肌触りのよさに配慮したものは少ない。大人のモダンライフに合う高品位なファッション性も一歩秀でている。わずかな質感の違いにも敏感な人の琴線に触れる注目ブランドだ。

    機械による和紙の製造風景。photo © KAMITO

    一般の洋紙の原料は主に木材である。チップ状に細かくした木材パルプを薬品などで溶かし、繊維を抽出して平らに伸ばしたものが製品になる。組織構造が均質で印刷に向くが、繊維長も短く耐久性は低い。

    一方で和紙のつくり方は異なる。手仕事の場合は、まず木の皮を剥ぎ、黒い表皮を取り除いた内側の白い部分のみを叩いて細かく砕く。その素材と、植物から採取した粘液の “ねり” を水に入れ、 “すだれ” ですくい取るように薄く伸ばし(漉き)乾燥させて完成だ。KAMITOの和紙は機械式なので、木や植物から繊維を取り出し、釜で分解させてパルプにして紙にするプロセスとなる。

    ねりは洋紙にない特徴で、和紙に固有の粘り気を与える。 漉きの工程ですだれを揺り動かし繊維を絡ませることで、構造が複雑になり耐久性が増す。さらに植物材料だけを使うため劣化が少ないメリットもある。

    適切な原料を使えばサステイナブルなのもこの素材のよさ。いま求められる新時代のスタンダードを生む高いポテンシャルを秘めている。

    和紙を糸にしたシャリ感のある服や小物で、新しいニッポンの暮らしがはじまる。

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