奥行きのある「布」を武器に、パリコレへ挑む。

  • 文:高橋一史

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奥行きのある「布」を武器に、パリコレへ挑む。

文:高橋一史
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森川拓野

ファッション・デザイナー

●1982年、秋田県生まれ。イッセイミヤケ勤務を経て2013年に自身のブランド「ターク(TAAKK)」をスタート。過去に「マメ クロゴウチ」「オーラリー」が受賞した「ファッションプライズ オブ トウキョウ」を19年に受賞し、今年パリコレに初参加した。

東京の若手デザイナーによるメンズブランドの中でも、ファッション通に評価が高い「ターク(TAAKK)」。2020年1月、デザイナーの森川拓野(もりかわ・たくや)は、パリファッションウィーク中のランウェイショー、いわゆるパリコレに初参加した。2013年にブランドを立ち上げ、8年目での挑戦だ。

多くのファッション・デザイナーがパリコレを目指す最大の理由は、世界中のモード関係者やバイヤーなどの目が集中するこの場で、ビジネスが飛躍的に伸びる可能性があるからだ。買付数が増えれば、資金を得てよりよいモノづくりができ、ブランドも世界に発信されていく。ただし、ショーの開催は大掛かりな事業だ。森川はそのために東京都が支援する第3回「ファッション プライズ オブ トウキョウ」に応募し、見事受賞。都の援助を受け、パリの舞台に立つに至ったのだ。

今回発表した20-21年秋冬コレクションは、ストリート的なスタイルから、世界基準のシックなラインアップへと作風を変化させたようだ。

「これまでは“東京のカジュアル”でした。ニッチな層を狙い、クセのある服づくりを意識して。それが賞を受けて活動資金も得られたことで、肩の力が抜け、以前からやりたかったグローバルな方向性に進むことができました。考え方が変わりましたね」

タークの武器は?という問いに、森川はオリジナルの布づくりだと答えた。織りで複雑な模様を描き出し、糸の交差で立体的な布を仕立てる。タークの服を実際に手に取ると、染めや加工のテクニックを駆使した奥行きのある布に驚く。実は森川のルーツは、企画デザイナーとして7年間勤めたイッセイミヤケでの経験にある。プリーツをはじめブランド独自の考え方に衝撃を受けて入社したという彼が、布にこだわるのも当然かもしれない。

「布づくりはイッセイミヤケで学んだこと。機屋さんや工場さんと良好な関係を築き、現場に自ら足を運ぶといった人との付き合い方も知ることができました。彼らに制作をお願いする手紙を書いたり、そういうことが服づくりには欠かせないプロセスなんです。パリコレ参加を経て、素材への思い入れがより深まりました」

この気付きは、パリコレ発表後に深刻化した新型コロナウイルスの影響下で状況が変化する中、自身の強みを改めて考えて得たものだ。こうしたスタイルの再発見の他にも、森川はパリコレで得たものがあるという。

「正直言って、すぐに大きくセールスが伸びたとは言えません。よい収穫だと感じているのは、世界で認知される道筋ができたこと。インターナショナルな人たちと知り合えてビジネスパートナーにもなり、パリにはブランドを発展させるチャンスがあると知りました。日本でも服づくりのチームをはじめ、周囲のサポートがますます大きくなったことも重要です。人の集合体でブランドが成り立っていることに、改めて気付きました」

ニットを編む母、エンジニアの父というモノづくりが自然にある家庭環境に育ち、高校生の時から服を独学で仕立て、友人に贈っていた。なによりも「つくる」ことが喜びで、その思いは現在も変わっていない。彼はいま、2回目のパリコレ参加となる今秋発表予定の21年春夏コレクションの準備を進めている。次こそが、前哨戦を終えた後の真の評価を決める本戦。新コレクションはよりエレガントな方向性に舵が切られるようだ。タークという名前、モード好きならずとも、覚えておいて損はない。


Pen 2020年8月1日号 No.500(7月15日発売)より転載


TAAKK 2020-21年秋冬 メンズ・コレクション

今年1月にパリで発表したコレクションのルック。得意とする独特の色彩の柄物ファブリックに、ネクタイシャツに見られるエレガントな表現も加わり、新しい作風を示した。

奥行きのある「布」を武器に、パリコレへ挑む。

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