「プティ・マンサン」でつくる、山形発オレンジワインを知っていますか?

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    鹿取みゆき・選&文  尾鷲陽介・写真

    「プティ・マンサン」でつくる、山形発オレンジワインを知っていますか?

    原口畑 プティ・マンサン オレンジウッディファーム&ワイナリー

    ワインに使用されるブドウ品種で、みなさんが真っ先に思い浮かべるのはなんだろうか。シャルドネ、メルロ、それともピノ・ノワール? こうした主流とされる品種は国際品種と呼ばれ、これらを使ったワインが王道と見なされてきた。しかしここ数年、流れが大きく変わろうとしている。品種が急速に多様化しているのだ。このムーブメントは少しずつ日本にも伝わってきており、いままで知られなかった品種でワインづくりに取り組むつくり手が登場してきている。

    この「原口畑 プティ・マンサン オレンジ 」を手がけた山形県上山市のウッディファーム&ワイナリーの金原勇人さんもそのひとり。金原さんが初めてプティ・マンサンというブドウでワインをつくったのは2017年。そして19年、3回目の仕込みをした。日本中を見渡しても、現状、この品種のみでワインをつくっているワイナリーは他に2軒しか知らない。しかし金原さんは、このプティ・マンサンというブドウに大きな可能性を感じているという。

    「ほかの品種に比べて粒が小さくバラ房で、皮が厚く、粒に対して種の比率が高い。加えて糖度も高く、酸を保てるという特徴があります。とても栽培がしやすいブドウです」

    こうした特徴ゆえ、ヨーロッパ系品種の中でも耐病性があり、使用する農薬を減らすことができた。「2017年に収穫したプティ・マンサンの果汁は、濃い黄色の色合いで、糖度が23度まで達しました。それにもかかわらず、酸は1ℓあたり10g。本州で栽培されているシャルドネのブドウの酸は通常1ℓあたり13g前後なのに、です。この条件ならば、亜硫酸を使わずに野生酵母で長期熟成するオレンジワインがつくれるのではないかと思いました。それに、厚い果皮からは多くの香りの成分が抽出できそうだったのです」

    こうして誕生したのが、原口畑 プティ・マンサン オレンジだ。この春には、18年ものがリリースされた。色合いは少し薄めの透明感のある茜色。ひと口飲んで、その香りと味わいに魅了される。香りの第一印象はまさに桃。さらに、オレンジピールの香りと味わいが広がってくる。奥行きがあり、僅かな渋みやほろ苦さも心地よい。なんといっても果実のパワーが伝わってくる。そろそろ出回るカツオのたたきなんかにも合いそうだ。金原さんは、上山市といえばプティ・マンサン、というようなアイコン的ワインになると期待している。


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    現在、プティ・マンサンのブドウ畑の栽培面積は0.7ヘクタール。収穫量は年々増えており、2019年は約3.8トン。19年の収穫分のブドウを使って、約2800本のワインが生産できそうだという。

    ウッディファーム&ワイナリーの醸造所。2019年、世界的に有名なワインジャーナリストのジャンシス・ロビンソンは、プティ・マンサンを「今後期待する品種」に選んでいる。

    自社畑面積/約7.3ヘクタール(小数点第一位まで) プティマンサンは0.7ヘクタール
    栽培醸造家名/金原勇人
    品種と産地/プティ・マンサン 山形県上山市
    ワインの容量/750ml
    価格/¥3,850(税込)
    造り/2018年11月にコンテナを分けて収穫。病果のまったくない、きれいな房のみをスキンコンタクトに使用。除梗破砕中に30ppm相当の亜硫酸を添加、ドライアイスを加えながら開放タンクへ投入。8℃設定の冷蔵庫へ移動し、その後は日に2回のペースで櫂入れを実施。7日目にプレス。プレス果汁まで使用し、ステンレスタンク、古樽のふたつの容器で発酵を開始。この時点で発酵は顕著に進んだ。発酵終了後はステンレスタンクのワインも古樽が空きしだい、移動して貯蔵した。その際の亜硫酸添加はなし。19年5月にマロラクティック発酵開始。1回、澱引きを行い、亜硫酸を測定。この時点で遊離亜硫酸はゼロ、結合亜硫酸は19.5ppm、ブレンドした後、瓶詰前に15ppmの亜硫酸を使用。19年11月14日に瓶詰め。無補糖、無補酸、酵素剤無し、清澄剤無し、培養酵母添加無し、無濾過。
    栽培/樹齢4~5年。仕立てはすべて一文字短梢仕立て。除草剤、化学肥料の散布はなし。樹勢の弱った箇所に有機質由来の肥料を根元に散布、または貝化石を散布するのみ。化学合成農薬の使用量は、県が定める慣行レベルの5割以上、削減を行い、山形県特別栽培農作物の認定を受けた畑のみを使用。

    問い合わせ先/ウッディファーム&ワイナリー TEL:023-674-2343     www.woodyfarm.com 

    ※この連載における自然派ワインの定義については、初回の最下段の「ワインは、自然派。について」に記載しています。また極力、栽培・醸造についての情報を開示していきます。