軽量でコンパクトな、日常道具としての椅子。

  • 文:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨
Share:
Vol.66
軽量でコンパクトな、日常道具としての椅子。
フォールディングチェア

モーエンス・コッホ

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

数ある名作椅子のなかで、木製の折り畳み式を代表するのが、モーエンス・コッホが1932年に発表した「MK99200 フォールディングチェア」です。普遍的な構造の椅子でありながら、随所にこだわりが光る一脚です。

教会で使用する椅子のコンペに出展すべく、伝統的な椅子であったディレクターズチェアを讃えてリ・デザインされました。サイズは W500×D500×H870×SH450mm。

デンマーク近代家具デザインの父として知られるコーア・クリントから大きな影響を受けたモーエンス・コッホは、機能性とシンプルさを重視した家具を多く手がけています。また自身のライフスタイルやニーズを反映した家具デザインを得意とし、コペンハーゲンのような都市の狭い住空間において、空間の制約と優れた機能性とのバランスを両立させました。

師であるクリントのリ・デザインの手法を用い、古くから存在する、左右のフレームの伸縮によってキャンバスを座や背とする折りたたみ椅子の形式を洗練させたのが「フォールディングチェア」です。削ぎ落としたモダンなフォルムと細部のディテールに美しさを宿しています。たとえば座面と脚をつなぐ真鍮のリングは、接合部の美しさだけでなく脚に通されたリングが上下に動くことで折りたたみの機能をシンプルに実現させています。

軽量でコンパクトなサイズは日常の道具として最適です。無垢のビーチ材やキャンバス、レザー、真鍮といった素材は使い込むほどに、唯一無二の経年変化を楽しめるのも魅力。シンプルながら、心憎いディテールのつくり込みとアノニマスな美しさが長年にわたって愛されている理由です。

師のコーア・クリントの代表作であるサファリチェアと共通する素材使いは、経年による味わいの変化も楽しめます。

折りたたんでも自立するほどバランスも優れている。6脚用のラックもあり、来客時の補助的なダイニングチェアとしても。